研究課題/領域番号 |
22K00435
|
研究種目 |
基盤研究(C)
|
配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分02030:英文学および英語圏文学関連
|
研究機関 | 立教大学 |
研究代表者 |
新田 啓子 立教大学, 文学部, 教授 (40323737)
|
研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2026-03-31
|
研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
|
配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2025年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2024年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2023年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2022年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
|
キーワード | James Baldwin / black feminism / slavery / racial capitalism / intersectionality / アメリカ文学 / 黒人文学 / abolition democracy / 生態学的アプローチ / 人種主義 / 黒人 / 奴隷制 / 合衆国 |
研究開始時の研究の概要 |
アメリカ文学・文化領域に蓄積された人種問題を生態学的アプローチにより解明するのが、本研究の目的である。手順としては、160年にわたる合衆国の文学作品で問題化され続ける「人種」とはなにかをテクスト研究で詳らかにし、平等化政策や司法措置を経て、なおアメリカ社会に人種主義が跋扈する理由と論理を考証する。両者の検証に際しては、「エコロジーとしての人種」なる作業仮説/分析概念を適用しつつ、究極的には、それを同国文化の一般的な考究に資する強固な理論に鍛え上げることを目指す。
|
研究実績の概要 |
本研究は、①160年にわたる合衆国の文学作品で問題化され続ける「人種」とはなにかをテクスト研究で詳らかにし、②一定の平等化政策や司法措置を経てなおアメリカ社会に人種主義が跋扈する理由を考証することを目的としている。またそれを行うに際しては、「エコロジーとしての人種」なる作業仮説/分析概念を用いること、さらにその適用過程で、この概念を理論として練り上げる可能性を探ることを企図している。 研究初年度となる令和4年度には、本課題が問題化する政治的政策や法整備で人種問題が片付かない現象の理由を探究すべく、概念整理の作業に着手した。この現象がなぜ起きるのか、それは、人種差別や不当行為が起きる都度に立ち上げられる対処法が、特定者の利害に即した「問題解決型」争点に終始して、理念面での思索が深まらないためである。それを乗り越える道筋を、4カ年の期間で示すために、今年度はまず「潜勢力 dynamism」「アボリション・デモクラシー abolition democracy」「解放への長い道程 long emancipation」という概念の重要性をまとめながら、そうしたものの意義を伝える文学作品、理論についての執筆と口頭発表を行った。 まず日本英文学会第94回大会で、「文学の潜勢力――分節を問う、生成を辿る」と題したシンポジウムを企画して、奴隷制廃止後も、ながらく解放されていないとの認識がされている黒人の生の持続の意味をJames Baldwinの著作を介して考察した。潜勢力の出来は、政治運動や実力行使の形態を取るばかりではない人間の抵抗の深遠性と多義性の証左である。この作用を描いた南部女性作家Carson McCullersの作品論と、当該の力をより理論的に解題し、人間個体に現れるジェンダーや人種の問題を考察したJudith Butlerの著作をテーマとした書評論文をあわせて発表した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本来この研究では、毎年米国に資料調査に赴くことを予定していたが、Covid-19の影響が続いていたため、今年度においては、当初予定していたUniversity of MassachusettsのW.E.B. DuBoisアーカイヴへの出張は取りやめた。だが、その代わり研究初年度にふさわしい概念整理ができたことから、研究は順調に進んでいると自己評価する。年度前半には、その初動の成果を公開することができた反面、後半には、ここ2年間続けている書き下ろしの単著に取り組んだ。
|
今後の研究の推進方策 |
当初立てていた資料調査計画には変更があったが、それ以外には、研究作業上のフローに問題がなかったことが、1年間の取り組みで明らかとなった。次年度以降、今年度先送りした文献調査のスケジュールを再編成し、日本からアクセスできる資料については、可能な手段で取得して、円滑な研究の遂行に留意したい。 また、同じパンデミックが理由となって、この課題の前に進行していた私の別の基盤研究(c)の延長が続いている。同研究「第三の人種――近現代アメリカ文学における黒人エリート表象の意味とその歴史的背景」には、本課題の射程や目的と連動している点も多い。よって、研究費を適切に切り分けながら、令和5年度では、システマティックに二つの研究を進めていきたい。
|