研究課題/領域番号 |
22K00443
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分02040:ヨーロッパ文学関連
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研究機関 | 宇都宮大学 |
研究代表者 |
大野 斉子 宇都宮大学, 国際学部, 准教授 (00611956)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,030千円 (直接経費: 3,100千円、間接経費: 930千円)
2025年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2024年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2023年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2022年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
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キーワード | ウクライナ / 表象 / 肖像画 / ポーランド / 民族起源論 / オーストリア / 19世紀 / アイデンティティ / ロシア / メディア |
研究開始時の研究の概要 |
本研究は、19世紀に作られたウクライナを主題とする表象(文学、芸術、学術)が宗主国にまたがって広範囲に存在することに着目し、表象を介した新たなウクライナ像の構築、およびメディアによる普及という分析視角から、表象とメディアがアイデンティティ構築のプロセスに果たした役割を解明・再評価することを目的とするものである。これによって、現在に至るウクライナの複層的な意識構造を歴史的系譜から解き明かすとともに、ロシアなどの周辺国を含めた当該地域の文化史についての総合的な理解に資することを目指す。
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研究実績の概要 |
本年度は美術領域からの調査・研究を通じてウクライナにおける複層的なアイデンティティの形成の問題を、ウクライナにおける支配階層の身体の表象という側面から進展させた。特に17世紀後半から18世紀にかけてウクライナで急速に発展した肖像画に着目し、ポーランド美術との影響関係、肖像画の枠組みとしての民族起源論、またウクライナの民族的自立に伴う独自の民族起源論としてのハザール神話、ウクライナのロシアへの同化に伴う貴族階層の形成等の論点が肖像画の分析を通じて可能であることを確認した。本テーマの研究成果は2023年9月に開催された日本18世紀ロシア研究会 2023年度研究発表会において研究報告にまとめた。この報告の内容は、論文として2024年度の同研究会の紀要に掲載される見込みである。
[研究報告]大野斉子「18世紀におけるウクライナの共同体意識」日本18世紀ロシア研究会 2023年度研究発表会(明治大学、2023年)
また、本年度はロシアにおいてウクライナおよび関連の深いポーランドの美術史関連資料や、近世の歴史観である民族起源論に関する資料を収集したほか、19世紀のウクライナにおける文化的な民族運動において重要な位置を占める画家・詩人のシェフチェンコの活動について、一次資料の調査・収集に従事した。また、来年度以降の研究につながるアプローチとして、上記の研究成果で用いた身体論が、ウクライナにおける複層的アイデンティティを比較検討する際の共通の指標として設定可能であることについて検討を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ロシアで資料調査を行い、本課題において必要なウクライナと周辺国であるポーランド、ロシアの美術史、史学史に関する資料調査のほか、帝政時代におけるロシア帝国統治下の小ロシアにおける社会史関連資料や統計資料の収集・整理を進めることができた。ウクライナにおける文献資料へのアクセスは依然として困難な状況にあるが、当初予定していた、ロシアで調査可能なロシア語資料のデータ整理を進められたことから、本年度については進捗状況を概ね順調と判断した。
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今後の研究の推進方策 |
18世紀から19世紀におけるウクライナの共同体の地域的・民族的多様性について研究の精度を高めるため、歴史・社会史的な角度からの分析を進める。また、地域的・民族的多様性を横断的に把握する方法として、本年度に検討した身体論を表象分析における指標の一つとして設定し、各地域の表象の分析を進める予定である。
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