研究課題/領域番号 |
22K00451
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分02040:ヨーロッパ文学関連
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研究機関 | 東京都立大学 |
研究代表者 |
小池 登 東京都立大学, 人文科学研究科, 教授 (10507809)
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研究分担者 |
大芝 芳弘 東京都立大学, 人文科学研究科, 客員教授 (70185247)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2025年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
2024年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2023年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2022年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
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キーワード | カッリマコス / ホラーティウス / 詩論 / 詩論詩 / 西洋古典学 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究は、西洋古典文学における韻文作品の創作手法の一端を明らかにするため、詩人が自らの詩作行為について言及するような詩、すなわち「詩論詩」に焦点を当てる。その系譜の中でも特に注目すべき二人の詩人カッリマコスとホラーティウスを対象に、具体的な詩作品における「詩論」の内実を歴史的に検証するとともに、その詩論を含む当の作品自体の詩としての特質を実証的に分析・検討することで、その詩論的主張と作品自体の内的関連と整合性を見極める。そして「詩論」という観点からその作品が属するジャンルの伝統と革新の様相や詩作の理論と実践の関係を、具体的な作品に即して解明することを目指す。
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研究実績の概要 |
詩人が自らの詩作行為について言及するような詩を、広い意味で「詩を論じる詩」として、「詩論詩」と呼ぶならば、西洋古典文学の韻文作品の多くがその要素を含んでいる。本研究はそうした「詩論詩」の系譜の中から、特に注目すべき二人の詩人カッリマコスとホラーティウスを対象として、具体的な詩作品における「詩論」の内実を歴史的に検証するとともに、その詩論を含む当の作品自体の詩としての特質を実証的に分析・検討することで、その詩論的主張と作品自体の内的関連と整合性を見極めることを目標とする。そして「詩論」という観点から当該作品が属するジャンルの伝統と革新の様相や詩作の理論と実践の関係を、具体的な作品に即して解明することを目指す。それにより、「詩論詩」の系譜の重要性に改めて光をあてるとともに、西洋古典文学における韻文作品の創作手法の一端を明らかにすることを期するものである。 研究の第二年度にあたる本年度は、初年度から引き続いて研究対象に関する先行研究の調査、当該作品に関するテクスト校訂の検討、および注釈書や研究書・研究論文を参照した精密な読解を進めるとともに、第三年度以降に向けてさらなる問題点の掘り起こし作業を進めた。具体的な過程としては小池はアイスキュロス『ヒケティデス』を対象に主に文献学的観点から研究を進め、大芝はオウィディウス『変身物語』を対象に主に文学史的な観点から調査・検討を行うなどした。加えて本年度は研究全体の整合性に配慮しながらギリシア・ラテンに通底する詩論の系譜を検討する一環として、小池・大芝両名の参加する共同演習の場でエウリーピデース『メーデイア』における詩神ムーサへの言及について検討を行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
「研究実績の概要」で述べたように、第二年度に予定していた研究対象に関する先行研究の調査、当該作品に関するテクスト校訂の検討、および注釈書や研究書・研究論文を参照した精密な読解を進め、またギリシア・ラテンに通底する観点の検討にも着手した。これらの過程を通じて本研究の主たる検討課題、すなわち具体的には(1)カッリマコスの詩学と先行する詩作品および哲学的詩学との関連、またカッリマコス作品におけるその詩論と詩作実践の関連や統合の問題、(2)ホラーティウスに関しては、その「詩論詩」と先行作品やカッリマコス詩学との関係に加えて、特に『詩論』とアリストテレス『詩学』『弁論術』『詩人について』との関連、またホラーティウスの詩論の当該作品中での機能や、理論と実践の整合性の問題、といった検討課題に対して一定の進捗を得ることができた。以上のことから研究目的に向かう過程として概ね順調と言える進展を見たと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
本研究課題が開始当初から特に着目するのは、(a)詩人の詩論自体のいわば学説史的な影響関係(当該作品の属するジャンルの伝統だけでなく、哲学的詩論等の影響も重視する)、(b)詩人自身が詩論を語るその作品内で、当の詩論的言及をいかに生かして作品としての統一性や整合性を作り上げているか、その創作上の工夫や配慮を具体的に観察して作品としての特質を明らかにすること、である。次年度からは研究期間の後半期に入ることを考慮して基礎研究から個別成果の総合・総括へと段階的に移行を開始し、各自の研究を具体的な作品論研究の論考にまとめ上げる準備を進めていく。そのうえで最終年度までにそれぞれの検討考察をいくつかの論文にまとめて公刊することを目指す。役割分担としては引き続き小池がギリシア前古典期・古典期からヘレニズム期に至る諸相を、大芝がヘレニズム期からラテン文学に至る諸相を担当するが、進捗状況の連絡や相互の批判的検討を通じて研究全体の整合性に配慮する。
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