研究課題/領域番号 |
22K00455
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分02040:ヨーロッパ文学関連
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研究機関 | 拓殖大学 |
研究代表者 |
田野 武夫 拓殖大学, 政経学部, 教授 (80432897)
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研究分担者 |
クラヴィッター アルネ 早稲田大学, 文学学術院, 教授 (90444778)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,030千円 (直接経費: 3,100千円、間接経費: 930千円)
2024年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2023年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2022年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
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キーワード | ユスティヌス・ケルナー / ロマン主義 / メディア論 / 精神病理学 |
研究開始時の研究の概要 |
ユスティヌス・ケルナー(1786-1862)の小説『影絵芝居師ルクスによって書かれた旅の影』 (1811)等の研究を通して、彼の作品がジャンルやメディアの融合によってロマン派初の総合芸術(Gesamtkunstwerk)として演出されている事実を解明する。ケルナーの作品に見られるロマン主義のメディア技術の諸相について、メディア論、文化・文学研究の観点から論究する。
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研究実績の概要 |
前年度の研究成果を発展させ、ユスティヌス・ケルナー(1786年 - 1862年)の代表作である小説『旅の影』と『二人の夢遊病患者の物語』Die Geschichte zweyer Somnabuelen(1824年)の関係性の考察を行った。『旅の影』における狂気の詩人「ホルダー」と詩人ヘルダーリンとの関連性から、医学生として携わったヘルダーリンの精神疾患の経過にケルナーが深く影響を受けた可能性を指摘した。この影響はケルナーのその後の手紙の中での発言によっても裏付けられており、この狂気の詩人との出会いが永続的な影響を及ぼしていることに言及した。ケルナーは自らが鬱的傾向にあることを自覚しており、ヘルダーリン自身と同じ運命を辿ることを恐れていたと考えられる。『旅の影』では、トラウマによって引き起こされる精神病理学が詳細に描写されている点を指摘しつつ、この関連においてケルナーが医者として観察した2名の夢遊病患者の症例を描いた『二人の夢遊病患者の物語』の分析を行なった。この著は当時のドイツ医学界に波紋を巻き起こし、夢遊病に対する理解を深める上で貴重な貢献をなした。作品の分析を通して、ケルナーが患者との対話通して心理的問題の解決し、夢遊病の治癒へと導くプロセスを追った。またケルナーの執筆行為に焦点を当て、医療現場の描写をそのまま文学作品として提示している意味を論じた。そこから現実世界と非現実世界もしくは医学と文学の融合による自己の救済という要素を導き出した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初計画していた『二人の夢遊病患者の物語』Die Geschichte zweyer Somnabuelen(1824年)を取り上げ、これまで解明されていない小説『旅の影』への言及を明らかにするという課題について、二つの学会で発表した。日本独文学会における発表「ケルナーの作品におけるロマン主義的主観性」Romantische Subjektivitaet im Werk Justinus Kernersでは『旅の影』と『二人の夢遊病患者の物語』の関連性を指摘し、国際シンポジウム(Kuko)での発表「ユスティヌス・ケルナーの書くという行動における医学的現実と文学の融合」Die Verbindung von medizinischer Realitaet und Literatur im Akt des Schreibens bei Justinus Kerner: 'Der Reiseschatten‘ und 'Die Geschichte Zweier Somnambuelen‘では、『二人の夢遊病患者の物語』の作品分析を中心に発表を行った。
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今後の研究の推進方策 |
前年度学会で発表した『二人の夢遊病患者の物語』Die Geschichte zweyer Somnabuelen(1824年)と『旅の影』との関係性について、学会誌に掲載する。2022年度の研究成果を活かし、『旅の影』をKunstpoesie及びNaturpoesieとの関連から分析を進める予定である。またこの他、ケルナーがメディア心理学的理論を展開した医学書『プレヴォールストの女透視者』Die Seherin von Prevorst(1829年)を研究対象として考察を行い、19世紀初頭の視覚的実践の諸相を再構築する。
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