研究課題/領域番号 |
22K00456
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分02040:ヨーロッパ文学関連
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研究機関 | 立教大学 |
研究代表者 |
澤田 直之 (澤田直) 立教大学, 文学部, 教授 (90275660)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
2,860千円 (直接経費: 2,200千円、間接経費: 660千円)
2025年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2024年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
2023年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
2022年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
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キーワード | ジャン=ポール・サルトル / ユダヤ / アンドレ・ゴルツ / クロード・ランズマン / レ・タン・モデルヌ / エコロジー / サルトル / アラブ / 実存主義 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究は、サルトルのユダヤ体験がフランス実存思想の脱領域的形成と発展にどのように関与したのかを探るために、実証研究とテキスト研究の方法を複合的に用いた形で行う。対象とする文献は、サルトル自身のコーパス、サルトルと対峙したユダヤ思想家のコーパス、サルトルの影響を受けたユダヤ系知識人の作品、イスラエル=アラブ問題関連の史料など多岐にわたる。実証研究としては、現地調査や関係者へのヒアリングなどを行う。
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研究実績の概要 |
本研究は、20世紀フランスを代表する作家・思想家サルトルによるユダヤ人問題に関する著作やユダヤ人思想家との直接的な交流が、フランス実存思想がその現象学的土壌から離陸し、脱領域的な形で発展することに寄与した経緯を解明することを目的とする。 初年度である2022年度は、本研究に必要な膨大な資料を丹念に読み込む作業を中心に行った。『ユダヤ人問題に関する考察』執筆の背景の調査、小説『自由への道』ほか文学作品におけるユダヤ人の表象の解析を行った。また、ユダヤ人知識人との交流によってサルトルが得た知見を評論やエッセイなどから拾い上げて検討するために、アンドレ・ゴルツ、クロード・ランズマンという、サルトルが主宰した雑誌『現代』にも参加したユダヤ人作家との関係を調査した。ランズマンに関しては、本人の回想録『パタゴニアの野兎』、ボーヴォワールの自伝での言及を追い、サルトルとの交流を概観した。ゴルツに関しては、『裏切り者』とサルトルの序文「ねずみと人間」の比較分析を行い、サルトルがゴルツの伝記を評しながら、そこに自分の伝記素も流し込んでいく手法を分析した。その結果、これがいわば二重の伝記であることが明らかになった。また、ゴルツのその後のエコロジーに関する文献についても読み解き、現象学と実存主義がゴルツの独自な人間主義的エコロジーに大きな影響を与えたことについても確認した。 以上の成果の一部は、フランスのスリジー・ラ・サルでの国際シンポジウムにおいて発表するとともに、大学の紀要『立教大学 フランス文学」に「サルトルとユダヤ的なもの(1)アンドレ・ゴルツ」として発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究には、数多くの資料を読み解く作業が必要となるが、サルトルはもとより、シモーヌ・ド・ボーヴォワール、クロード・ランズマン、アンドレ・ゴルツの著作に関しては予定していた文献の調査・読解が滞りなく実行できた。 国際シンポジウムにも参加し、外国の研究者たちと有益な意見交換ができたが、そのなかには、これまで著作でしか知らなかった人々もおり、新たなネットワークを構築することができた。とりわけ、次年度の研究の中心となるベニー・レヴィとレヴィナスの研究者であるジル・アニュス氏の知己を得ることができたのは収穫であった。そのお陰で、貴重な資料の所在などについても情報を得ることができたからである。 20世紀におけるユダヤ人問題とユダヤ思想に関してはこれまでにも膨大な蓄積があるが、それらについての調査も順調に進んでいる。この点に関しては、これまで培ってきた国内外のサルトル研究者のネットワークはもとより、より広く哲学・思想を領域とする研究者とも意見交換を行うことができた。とりわけ、レヴィナス、デリダの専門家たちと意見交換を密に行うことができたことは収穫であった。 その一方で、本格的な現地調査に関しては、新型コロナウィルスの感染状況が完全に収束していなかったこともあり、次年度以降に見送ることにしたため、手つかずになっている。ただし、これもとりわけ海外では規制がほとんどなくなっている状態なので、今後はスムーズに行うことができると考えている。
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今後の研究の推進方策 |
2023年度は、晩年のサルトルが親しく交際した毛沢東派の運動家であり、ユダヤ系でエジプト出身のベニー・レヴィ(ピエール・ヴィクトール)との関係を起点に、晩年のサルトルのユダヤ思想への接近について考察する。二人が行った対話は長時間にわたるが、発表されたのはそのごく一部でしかない。サルトルの死の直前に発表された『いまこそ、希望を』がその一つだが、それ以外にベニー・レヴィが残した著作などを通して、これまで研究者たちからは否定されることも多かったサルトルのユダヤ思想への関心について詳しく分析する予定である。 それに際して、同時代のユダヤ思想家であり、サルトルと同様に現象学を出発点とするエマニュエル・レヴィナスとの関係についても併せて考察する必要がある。というのも、ベニー・レヴィはその後、レヴィナス研究に転ずるからである。したがって、サルトル、レヴィ、レヴィナス、さらにはユダヤ思想を中心に、今年度も引き続き文献の読解に多くの時間を割くことになる。 現地調査と海外研究者との意見交換に関しては、状況が許す範囲内で行いたいと考えているが、世界情勢を含め、不確定要素が少なくないので、これに関しては状況を注意深く見ながら判断することにしたい。意見交換に関しては、場合によってオンラインなども積極的に活用して行うことも考えているが、もちろん直接の対面によるものが望ましい。 以上、全体の方針としては、当初の計画から大きな変化は生じない。
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