研究課題/領域番号 |
22K00462
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分02040:ヨーロッパ文学関連
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
竹峰 義和 東京大学, 大学院総合文化研究科, 教授 (20551609)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,290千円 (直接経費: 3,300千円、間接経費: 990千円)
2024年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2023年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2022年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
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キーワード | フランクフルト学派 / ベンヤミン / 複製技術 / 翻訳 / 媒質 / メディア |
研究開始時の研究の概要 |
①複製技術論文の補遺を、初期の絵画論に由来する思想的モティーフを軸に考察することで、ベンヤミンの初期思想と後期思想との連続性と差異を検証する。 ②補遺に見られるフランス人民戦線の芸術論への批判的言及をもとに、複製技術論文が同時代言説への実践的介入を志向していたという事実を、その政治的背景とともに明らかにする。 ③補遺を含めた後期ベンヤミンの著作を特徴づける〈断章の並置〉という構成手法を、「接木」という概念を補助線として理論的に考察する。
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研究実績の概要 |
2022年度は、ベンヤミンの初期思想と後期の複製技術論文との接点を検証する作業を主に進めた。具体的には、ベンヤミンの「翻訳者の使命」(1921)の隠れたモティーフをなす「想起(Erinnerung)」を、初期思想および後期思想との関連において考察した。まず、「翻訳者の使命」における「言語の補完への大いなる憧憬」という表現と、初期色彩論の鍵語のひとつである「アナムネーシス」との思想的関連を検証することにより、ベンヤミンの翻訳論を新プラトン主義受容という文脈に位置づけた。つづけて、原作・翻訳・純粋言語の関係をめぐるベンヤミンの考察が、初期言語論における事物の言語・人間の言語・神の言語との関係に対応していることを示したうえで、さらに、そこでの翻訳が、過ぎ去ったものを〈いま・ここ〉に召喚することで救済するという、後期ベンヤミンの歴史哲学における「追想(Eingedenken)」のモティーフを密かに予告しているという点を明らかにした。その成果は、学会発表「想起としての翻訳:ヴァルター・ベンヤミン「翻訳者の使命」再考」(表象文化論学会第16回大会)および招待講演「歴史のポストヒューマニティ:ベンヤミンの思想から」(立命館大学国際言語文化研究所連続講座「人間と人間でないものの相互作用」)として発表した。また、関連する成果として、ゴダールの映画作品とベンヤミンの思想との方法論的な類似性について検証した論文「ゴダールにおけるいくつかのベンヤミン的モティーフについて」、およびアドルノの文化産業論をベンヤミンの複製技術論文にたいする批判的応答として読み解いた「文化産業:文化と産業の相剋」を発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
ベンヤミンの初期媒質論と後期の複製技術論との比較検証の作業を計画通り進めることができた。勤務先の業務により、夏に予定していたドイツでの調査は実施できなかったが、その代わりに関連文献を精読した。
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今後の研究の推進方策 |
2023年度は、1917年に成立した「絵画芸術と図画芸術」をはじめとする「マール(染み、瘢痕)」や色彩にまつわる初期テクストを中心に検証することで、初期ベンヤミンの媒質概念の理論的な内実を、思想史的なコンテクストを踏まえて検証する作業を中心に進めることを予定している。それと並行して、ベンヤミンが複製技術論文を発表することを計画していた亡命雑誌『ダス・ヴォルト』について調査を進めることで、複製技術論文の政治的な立ち位置と、同時代の言説にたいする応答という側面を明らかにしたい。
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