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ナショナル・アイデンティティの創造と変容――「新世界の無用者」の表象

研究課題

研究課題/領域番号 22K00491
研究種目

基盤研究(C)

配分区分基金
応募区分一般
審査区分 小区分02050:文学一般関連
研究機関専修大学

研究代表者

中垣 恒太郎  専修大学, 文学部, 教授 (80350396)

研究期間 (年度) 2022-04-01 – 2025-03-31
研究課題ステータス 交付 (2023年度)
配分額 *注記
3,120千円 (直接経費: 2,400千円、間接経費: 720千円)
2024年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2023年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2022年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
キーワードナショナル・アイデンティティ / プア・ホワイト / 放浪者 / 対抗文化 / 民衆 / 大衆文化 / 比較文化 / フーテン / 流れ者
研究開始時の研究の概要

アメリカの分断によって顕在化した取り残された層としてのプア・ホワイトの表象史に注目し、アメリカのナショナル・アイデンティティの創造と変容を「アメリカ的」物語の系譜から探る。「新世界の無用者」として疎外されてきた層は、アメリカの物語においてどのように扱われてきたのか。19世紀中庸に現れる「浮浪者」との連関、文学や映画、音楽、マンガをめぐるメディア横断的視座、さらに、歴史社会学や人類学、政治学などを参照し、アメリカ大衆文化における「疎外されてきた層」の表象を比較文学の見地から展望し、ナショナルな文学史のあり方をも問い直す。不法移民や階級の問題などにも目を向け、分断が進むアメリカの現況と課題をも探る。

研究実績の概要

21世紀以降、急速に研究が進展している領域の一つにホワイトネス・スタディーズ研究があり、歴史学、社会学、民俗学、文化研究を横断する学際性にその特徴がある。こうした動向を参照しながら、「アメリカ人」をめぐる概念が生成されていく中で、「新世界の無用者」として排除された層の存在がどのように描かれていたのか、たとえば、シャーウッド・アンダーソン、アースキン・コールドウェル、ジャック・ロンドンら20世紀前半のアメリカ文学を題材に検討を試みる。「新世界の無用者」(Waste people in the new world)は、『ホワイト・トラッシュ アメリカ低層白人の400年史』のある章題からの引用であるが、「たとえ不穏であれ、アメリカ全国民の説話をつなぐ核心」としてプア・ホワイト層を捉え、その表象を歴史的に展望する意義について言及がなされている。「アメリカ人」概念から長い歳月にわたって疎外されてきた層であり、人種の多様性の観点からも掬い取られにくい層であるが、この層に注目することによって、アメリカの光と影をまた別の角度から捉えることができる。「人種のるつぼ」と呼ばれる文化多元主義を表す概念の原型となった戯曲が発表されたのが1908年であり、「新移民」と呼ばれる新たな人口流入の変容期と前後して、プア・ホワイト層に焦点を当てた文学作品がこの時代に多く現われていることに注目する。21世紀現在のホワイトネス・スタディーズの研究動向、およびドナルド・トランプを大統領に押し上げたアメリカ社会の「分断」の時代を経てあらためて注目がなされている領域であり、現在の社会構造上の問題と通底していることを確認することができる。さらに、産業労働構造の変容がもたらした移動労働者(ホーボー)の現象をも参照するならば、「新世界の無用者」として排除されてきた層こそがアメリカの精神文化を下支えしてきた背景が見えてくる。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

3: やや遅れている

理由

コロナ禍を経て海外研究調査や国際学会への参加・発表は少しずつ実施できるようになってきたが、コロナ禍以前と比して以前の水準のように戻っているわけではないのが現状である。国際学会での研究発表について学会自体がキャンセルされることもあり、成果報告に関して当初の見込みよりも遅れ気味となっている。

今後の研究の推進方策

これまで取り組んできた「アメリカの放浪者」研究を継承・発展させながら、本研究課題を主題に据えた単著での成果刊行を目指す。「放浪者」研究においては、いわゆる「高等遊民」として放浪を選び取った者たちや、美化された物語上の表象に注目してきたが、本研究課題では、ジェイムズ・エイジーなどを含むノンフィクション文学にも注目し、疎外されてきた層を「アメリカ的」物語がどのように扱ってきたのか(「漂白」してきたのか)を探る。民主主義を標榜して成立したアメリカは、それぞれの時代で「庶民」「民衆(folks)」をどのように捉えてきたのか。文学のみならず、映画、コミックス、音楽などの大衆メディアの表象文化をも交えて概観することで、「表象される」文化のみならず、大衆娯楽の受容層の側にも目を向ける。主としてプア・ホワイト層を対象とするが、さまざまな形で疎外されている他の層がどのように重なるのか(あるいは重ならないのか)も主要な観点となる。

報告書

(2件)
  • 2023 実施状況報告書
  • 2022 実施状況報告書
  • 研究成果

    (12件)

すべて 2024 2023 2022

すべて 雑誌論文 (1件) 学会発表 (9件) (うち国際学会 4件) 図書 (2件)

  • [雑誌論文] コミックス文化におけるポー ――大衆文化ジャンルの歴史的変遷と「二次創作的」想像力2024

    • 著者名/発表者名
      中垣 恒太郎
    • 雑誌名

      ポー研究

      巻: 16 ページ: 70-84

    • 関連する報告書
      2023 実施状況報告書
  • [学会発表] How Visual Narratives Depict a World without Sound: Deaf Authors' Graphic Memoirs and Enhancing Social Inclusion2023

    • 著者名/発表者名
      中垣 恒太郎
    • 学会等名
      Graphic Medicine 2023
    • 関連する報告書
      2023 実施状況報告書
    • 国際学会
  • [学会発表] Netflixオリジナルアニメーションから探るアメリカの多様性の現在2023

    • 著者名/発表者名
      中垣 恒太郎
    • 学会等名
      日本アニメーション学会秋の研究集会
    • 関連する報告書
      2023 実施状況報告書
  • [学会発表] コミックス文化におけるポー ――大衆文化ジャンルの歴史的変遷と「二次創作的」想像力2023

    • 著者名/発表者名
      中垣 恒太郎
    • 学会等名
      日本ポー学会
    • 関連する報告書
      2023 実施状況報告書
  • [学会発表] Steinbeck’s Travelogues during the Early Cold War Years: A Look at the Common People in A Russian Journal (1948)2023

    • 著者名/発表者名
      中垣 恒太郎
    • 学会等名
      Steinbeck and the Twenty-First Century: Reading, Teaching, Translating
    • 関連する報告書
      2022 実施状況報告書
    • 国際学会
  • [学会発表] “The Capital of the World”における「小説的?」技巧の探求2022

    • 著者名/発表者名
      中垣 恒太郎
    • 学会等名
      日本ヘミングウェイ協会
    • 関連する報告書
      2022 実施状況報告書
  • [学会発表] 「取り残された者」たちをめぐるアメリカの物語 ――プアホワイトの労働と生活は今どのように表象されているのか?2022

    • 著者名/発表者名
      中垣 恒太郎
    • 学会等名
      日本比較文学会第84回全国大会
    • 関連する報告書
      2022 実施状況報告書
  • [学会発表] Visualizing Mental Health via Medical Essay Manga: Connecting Personal Narratives with Social Inclusion2022

    • 著者名/発表者名
      中垣 恒太郎
    • 学会等名
      Graphic Medicine Annual Conference: (Re) Connecting
    • 関連する報告書
      2022 実施状況報告書
    • 国際学会
  • [学会発表] Mark Twain as a Literary Anthropologist: _Letters from the Earth_ and Cultural Relativism2022

    • 著者名/発表者名
      中垣 恒太郎
    • 学会等名
      Elmira 2022: The 9th International Conference on the State of Mark Twain Studies
    • 関連する報告書
      2022 実施状況報告書
    • 国際学会
  • [学会発表] 「文化」の捉え方 ――Vonnegutにおける人類学と文学的想像力の交点2022

    • 著者名/発表者名
      中垣 恒太郎
    • 学会等名
      日本アメリカ文学会第61回全国大会
    • 関連する報告書
      2022 実施状況報告書
  • [図書] アメリカ映画とエスニシティ2024

    • 著者名/発表者名
      君塚淳一・馬場聡・河内裕二編
    • 総ページ数
      370
    • 出版者
      金星堂
    • ISBN
      9784764712317
    • 関連する報告書
      2023 実施状況報告書
  • [図書] アウリオン叢書『パンデミックの言説』2022

    • 著者名/発表者名
      白百合女子大学言語・文学研究センター
    • 総ページ数
      202
    • 出版者
      弘学社
    • ISBN
      9784866380209
    • 関連する報告書
      2022 実施状況報告書

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公開日: 2022-04-19   更新日: 2024-12-25  

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