研究課題/領域番号 |
22K00495
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分02050:文学一般関連
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研究機関 | 日本女子大学 |
研究代表者 |
田中 有美 日本女子大学, 人間社会学部, 准教授 (90599763)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
2,730千円 (直接経費: 2,100千円、間接経費: 630千円)
2025年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
2024年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
2023年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2022年度: 390千円 (直接経費: 300千円、間接経費: 90千円)
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キーワード | 南部文学 / Edna Lewis / Richard Wright / Carson McCullers / William Faulkner / Food writing / America Eats / 食 / アメリカ文学 / エドナ・ルイス / フード・スタディ |
研究開始時の研究の概要 |
本研究は、アメリカの南部文学史を「食」という観点から見直す試みである。その具体的な方法として、南部の食文化が再評価されるきっかけをつくったエドナ・ルイス(1916-2006)の自伝的料理本『田舎料理の味』(1976)を中心とする彼女の著作や活動を考察対象の中心に据え、以下の2点を明らかにしていくことを目指す。 (1) 南部文学に散見される「食」に関わる記述が、ジェンダーや人種の問題、個人の内面の葛藤、社会や共同体の構造的な問題を極めて効果的に表現できる言語表現として機能していること。 (2) 南部における料理本の伝統を文学研究のなかに配置する必要性。
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研究実績の概要 |
2022年度は、本研究の中心的な研究対象であるEdna Lewisが執筆したエッセイ”What is Southern?”と、その中で言及されている文学作品の考察し、その考察結果の公表に従事した。その成果は、「『食』から読み直すアメリカ南部文学:エドナ・ルイスの『南部的とは何か?』とライト,マッカラーズ,フォークナーの食表象」という論文として、『日本女子大学大学院人間社会研究科紀要 第29号』(2023年3月発行、15~28頁、査読あり)として発表した。 ルイスのエッセイで「南部的な」文学作品として具体的に言及されているものの中から、Richard Wrightの短編"Bright and Morning Star" (1938) 、 Carson McCullersのThe Member of the Wedding (1946)、William FaulknerのIntruder in the Dust (1948)に注目した。この三作品が執筆された1930、40 年代は,連邦作家プロジェクトのひとつで、未完に終わったAmerica Eatsプロジェクトが進行していた。それは、作家たちがアメリカの各地域に根ざす食文化についての記事を蓄積したものであったが、そこでは、食文化の人種横断的な側面には触れず,あくまでも「地域」という枠組を強調した食の記述スタイルが構築されつつあった。それとは対照的に、Lewisが「南部的」と呼んだ上記3作品には、黒人女性がつくった料理が肌の色の違いを越えて共有される場面を含んでいるという共通点があることを示しつつ、Lewisが「南部的」と呼んだのは、人種の違いを越えて共有される食のあり方であった可能性を指摘した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2022年度は、Edna Lewisの"What is Southern?"というエッセイが示唆する南部文学と食の密接な関係を具体的に考察するというプロジェクトに取り組む計画を立てており、それを予定通りに遂行し、一本の論文にして世に問うことができた。具体的には、Lewisにとって、文学における「南部性」を意味するものを特定し、ひとつの解釈を示すことができた。さらに南部文学と食の緊密な関係を、社会的文脈と具体的な作品の記述から考察することで、南部文学における食の表象の重要性を明示することができた。食という切り口から南部文学史を再構築するという試みのよいスタートとなった。
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今後の研究の推進方策 |
9月からサバティカルに入るため、予定通り、南部の食文化を考える上で重要な幾つかのプランテーションの現地調査を実施する予定である。その前に、2022年度の取り組みでは扱わなかったもののLewisが南部的として挙げている文学作品で、食という切り口から理解を深められそうな作品があったので、その作品についての考察を形にすることを検討している。その後、秋からプランテーションの現地調査に着手できると、より精緻な研究になるのではないかと考えている。
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