研究課題/領域番号 |
22K00497
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分02050:文学一般関連
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研究機関 | 佛教大学 |
研究代表者 |
清川 祥恵 佛教大学, 文学部, 講師 (50709871)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2024年度: 390千円 (直接経費: 300千円、間接経費: 90千円)
2023年度: 390千円 (直接経費: 300千円、間接経費: 90千円)
2022年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
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キーワード | 原民喜 / ユートピア / 英文学 / モダニズム / 神話 / 人間性 / モダニティ / 近代化 / ユートピアニズム / 反近代 / 人文主義 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究は、近代以降の日本文学における西欧ユートピア思想の受容および展開について、おもに英文学との関わりから詳らかにするものである。日本は「近代化」の過程で、英米によってそれまで蓄積されてきた人間性の理想を受容したが、この伝統のなかには近代における「反近代」思想が内包されており、日本近代文学は、成立と同時に「反近代」としての同時代ユートピア思想を吸収したことになる。単純な英語圏文学・日本文学の分類の枠を越え、西欧ユートピア思想が日本文学においてどのような意義を持ったのか、またそれが20 世紀以降、どのように西欧の思想と(再)共鳴するのかを検証する。
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研究実績の概要 |
原民喜の「新しい人間」観を中心に、近代以降の総力戦による文明の破局にともなう「人間性」への絶望と、そこから再度立ち現れる希望の「神話」について、 ①西洋思想の影響 ②民喜の個人的関心との接続(夢と幻というロマン主義的モティーフ、死について=ある種の伝統的「魔術」的関心) ③社会情勢の反映による科学の魔術化 の3つの視角から再考した。 成果としては、2023年8月にラスクロガンビジターセンター(アイルランド)で開催された国際学会・International Association for Comparative Mythology 第16回年次大会にて、 The Sky Has Fallen: Tamiki Hara's View of Mythological Human History として口頭発表を行なった。また、その内容を発展させた論考「崩れ堕つ天地のまなか--原民喜の幻視における魔術的現実」を2023年中に寄稿した論集『(仮)文学と魔術の饗宴』(斎藤英喜編、小鳥遊書房)は、諸事情により年度をまたいで編集作業がつづいており、2024年度の刊行が予定されている。 11月には日本T. S. エリオット協会主催・第35回大会 シンポジウム「エリオットについて、知れば知るほどいいことだ」に登壇し、パネル発表「『荒地』を眺める--T. S. Eliot が描く神話世界」を行い、19世紀から20世紀への転換期におけるユートピア英文学の系譜について検討した。これは、のちの民喜への影響の解明にも資するものとなった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
学会発表の都合上、当初計画からは一部順序を入れ替えて進めた部分があるが、全体としては順調に進展している。
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今後の研究の推進方策 |
ひきつづき、日本文学における西欧近代文学の受容を、近代において喫緊のものとなった「人間性とは何か」という問いの輸入として把握し、特定の社会思想への限定的な影響ではなく、文学全体への影響の実相を明らかにしていく。西欧ユートピア思想の日本での展開例を検討し、その独自性を解明することで、文化論のみならず比較文学の観点にも資することができる。
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