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東洋学者アントワーヌ・ガランの知的形成と『ガラン版千一夜物語』の創作過程の解明

研究課題

研究課題/領域番号 22K00500
研究種目

基盤研究(C)

配分区分基金
応募区分一般
審査区分 小区分02050:文学一般関連
研究機関国立民族学博物館

研究代表者

西尾 哲夫  国立民族学博物館, その他部局等, 名誉教授 (90221473)

研究期間 (年度) 2022-04-01 – 2026-03-31
研究課題ステータス 交付 (2023年度)
配分額 *注記
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2025年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2024年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2023年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2022年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
キーワードアラビアンナイト / アラブ文学 / 中東地域研究
研究開始時の研究の概要

世界文学アラビアンナイトの原点である『ガラン版千一夜物語』の成立において、翻訳者としてしかみなされてこなかったアントワーヌ・ガランが、どのような素材をどのように加工してテクストを作者として創作していったのかを分析し、さらにその創作過程の背景にあるガランの知的環境が創作意図やテーマ設定にどのように作用したかを分析することで、なぜアラビアンナイトが世界文学となったかという謎を明らかにするとともに、その知見をもとに人間にとって物語とは何かを考えるための新たな理論的視座を提示する。

研究実績の概要

本研究では、世界文学アラビアンナイトの原点である『ガラン版千一夜物語』の成立において、翻訳者としてしかみなされてこなかったアントワーヌ・ガランが、どのような素材をどのように加工してテクストを作者として創作していったのかを分析し、さらにその創作過程の背景にあるガランの知的環境が創作意図やテーマ設定にどのように作用したかを分析するために、以下の研究項目を実施した。
昨年度に引き続き世界文学として影響の大きいシンドバード航海記を、上記の研究分析の具体的な対象として取り上げて分析をおこなった。これまでの研究で新たに発見したシンドバード航海記の写本による校訂本(すでに成果として刊行済み)をもとに、日本語訳と注釈による分析作業をおこなうことで(「ペティス・ド・ラ・クロワ版『シンドバード航海記』より第二航海の翻訳と注解」『国立民族学博物館研究報告』に掲載予定)、ガランが利用した底本の確定作業の比較資料となるだけでなく、インド洋海域世界におけるアラブ世界との関係に関する資料を提供することができた。
また研究の第二段階にあたる作業に着手し、個人的価値観が明示的に表れている日記や旅行記等の分析によって、物語の根源的テーマ変容に作用したガランの価値観を明らかにし、物語拡張への影響を分析する作業をおこなった。具体的には、近年になってガランが遺した日記や手紙、旅行記、報告書、さらには未刊行の著作が次々と発見されており、それらの資料を読み解くことで、当時の知的環境、社会状況、国際関係のなかで、ガランがいかに自分の世界観や価値観を織り交ぜながら、訳者というよりはむしろ作者として、『千一夜物語』という作品を創りあげていったかを明らかにする作業をおこなった。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

具体的な研究成果として、「ペティス・ド・ラ・クロワ版『シンドバード航海記』より第二航海の翻訳と注解」を『国立民族学博物館研究報告』に投稿した。本研究成果は、ガラン版シンドバードとはまったく異なる系統に属する物語として新たに発見したシンドバード航海記の写本による校訂本の日本語訳と注釈をすることで、インド洋海域世界におけるアラブ世界との関係に関する貴重な資料を提供することができる。
またガランの生涯に関する研究を『図書』に連載した。その中で、ガランの活動が、広域的な学術潮流の中にあったことを示した。当時、地中海を挟んで対岸にある中東地域、特にトルコではオスマン帝国の支配下に入ったアラブ世界で継承されてきた、アラブ・イスラームの古典の学問伝統を総合化していく知的作業が活発におこなわれていた。ハーッジ・ハリーファの事典はその精髄だった。逆に地中海を挟んでヨーロッパ側、特にフランスでは中東の地政学的情報の収集に熱心で、当該地域に係る知の伝統を総合化する知的作業が活発になっていた。さらにヨーロッパ全体では《文芸共和国》とよばれるほどに学者間の交流の場が活況を呈していた。ガランは、トルコ、フランス、そしてヨーロッパ全体で創り出されていた三つの超域的な知的ネットワークの結節点にいて、その知的環境が彼の知性を育んだことが明らかになった。

今後の研究の推進方策

引き続き、研究の第一段階にあたる作業として、物語を翻訳の底本や素材がどの程度確定しているかによって三グループに分け、確定済みの第1グループに対しては物語加工のタイプを整理する。未確定の第2グループに対しては準備研究で選定した写本の文献言語学的分析で素材テクストを確定させ、整理済み物語加工タイプと比較してタイプを修正する作業を継続するとともに、第3グループのアリババのようにガランの日記に素材民話の梗概のみが残されている物語に対しては、物語加工タイプの修正に加え、ガラン版に不採択だった素材民話との比較を通して、ガランがアラビアンナイトにどのような物語がふさわしいと考えていたかを分析する。
これらの研究段階を終えたあとは、次の第二段階の研究として、個人的価値観が明示的に表れている日記や旅行記等の分析によって、物語の根源的テーマ変容に作用したガランの価値観を明らかにし、物語拡張への影響を分析する作業をおこなう。具体的には、近年になってガランが遺した日記や手紙、旅行記、報告書、さらには未刊行の著作が次々と発見されており、それらの資料を読み解くことで、当時の知的環境、社会状況、国際関係のなかで、ガランがいかに自分の世界観や価値観を織り交ぜながら、訳者というよりはむしろ作者として、『千一夜物語』という作品を創りあげていったかを明らかにする作業第一段階で得られた外形的物語加工タイプを、物語情報学的研究で得られた物語拡張の三層構造に係る理論的作業仮設に従って、物語の根源的テーマ変容に作用したガランの価値観を明らかにしていく。

報告書

(2件)
  • 2023 実施状況報告書
  • 2022 実施状況報告書
  • 研究成果

    (22件)

すべて 2024 2023 2022 その他

すべて 雑誌論文 (11件) (うち査読あり 4件、 オープンアクセス 7件) 学会発表 (9件) (うち国際学会 3件、 招待講演 1件) 備考 (2件)

  • [雑誌論文] 「意味の深み」には何があるのか?―地球社会を共創する哲学としての井筒俊彦の可能性2024

    • 著者名/発表者名
      西尾哲夫
    • 雑誌名

      澤井真編『井筒俊彦の思想形成期における東洋思想とその学問的視座』

      巻: - ページ: 43-53

    • 関連する報告書
      2023 実施状況報告書
  • [雑誌論文] 〈『千一夜物語』の父〉ガランの謎1―コルベール卿のスパイ?2024

    • 著者名/発表者名
      西尾哲夫
    • 雑誌名

      図書

      巻: 902 ページ: 40-45

    • 関連する報告書
      2023 実施状況報告書
  • [雑誌論文] 〈『千一夜物語』の父〉ガランの謎2―ルーヴル殺人事件2024

    • 著者名/発表者名
      西尾哲夫
    • 雑誌名

      図書

      巻: 903 ページ: 46-51

    • 関連する報告書
      2023 実施状況報告書
  • [雑誌論文] ペティス・ド・ラ・クロワ版『シンドバード航海記』より―第一航海の翻訳と注解2023

    • 著者名/発表者名
      西尾哲夫・岡本尚子
    • 雑誌名

      国立民族学博物館研究報告

      巻: 48(1) ページ: 45-83

    • 関連する報告書
      2023 実施状況報告書
    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] 肌感覚としての地球社会を認識するために2023

    • 著者名/発表者名
      西尾哲夫・黒田賢治
    • 雑誌名

      民博通信

      巻: Online 8 ページ: 4-5

    • 関連する報告書
      2023 実施状況報告書
    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] 酒に酔うよりコーヒーの香りならばよし2023

    • 著者名/発表者名
      西尾哲夫
    • 雑誌名

      月刊みんぱく

      巻: 47(4) ページ: 9-9

    • 関連する報告書
      2023 実施状況報告書
    • オープンアクセス
  • [雑誌論文] 神秘と科学の間で揺らぐ、魔人(ジン)の存在意義の考察2023

    • 著者名/発表者名
      西尾哲夫
    • 雑誌名

      映画『アラビアンナイト 三千年の願い』公演パンフレット

      巻: - ページ: 11-12

    • 関連する報告書
      2022 実施状況報告書
  • [雑誌論文] コレクションあれこれ 一杯のコーヒーに込めた思いをつないで2023

    • 著者名/発表者名
      西尾哲夫
    • 雑誌名

      月刊みんぱく

      巻: 47(1) ページ: 16-17

    • 関連する報告書
      2022 実施状況報告書
    • オープンアクセス
  • [雑誌論文] 共感共創学としての風土学の再構築 ―環境と心性を架橋する人と自然の科学知に向けたグローバル人文学の創成へ2022

    • 著者名/発表者名
      西尾哲夫
    • 雑誌名

      民博通信

      巻: Online 7 ページ: 6-7

    • 関連する報告書
      2022 実施状況報告書
    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] Searching for a new bridge between environment and the human mind2022

    • 著者名/発表者名
      西尾哲夫
    • 雑誌名

      Minpaku Anthropology Newsletter

      巻: 55 ページ: 10-13

    • 関連する報告書
      2022 実施状況報告書
    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] みんぱく回遊 シンドバッドが日本にやって来た?2022

    • 著者名/発表者名
      西尾哲夫・岡本尚子
    • 雑誌名

      月刊みんぱく

      巻: 46(12) ページ: 10-11

    • 関連する報告書
      2022 実施状況報告書
    • オープンアクセス
  • [学会発表] 趣旨説明2023

    • 著者名/発表者名
      西尾哲夫
    • 学会等名
      シンポジウム『地中海古代語への幻想―移動する人、移動する言葉』
    • 関連する報告書
      2023 実施状況報告書
  • [学会発表] アラブ世界のコーヒーの起源~アルジャズィーリー(16世紀)による世界最初のコーヒーの書をめぐって2023

    • 著者名/発表者名
      西尾哲夫
    • 学会等名
      UCCコーヒーアカデミー 藝術サロン2023 「アカデミー藝術サロン:カフェ・アラビア」
    • 関連する報告書
      2023 実施状況報告書
  • [学会発表] 『シンドバード航海記』と海域世界2023

    • 著者名/発表者名
      西尾哲夫
    • 学会等名
      2023年度芦屋川カレッジ
    • 関連する報告書
      2023 実施状況報告書
  • [学会発表] 文学と地域研究―環境と心性を架橋する人と自然の新たな風土学を求めて2023

    • 著者名/発表者名
      西尾哲夫
    • 学会等名
      第40回人文機構シンポジウム『人類妄想進化論―文学はいかに地球社会を共創するのか?』
    • 関連する報告書
      2022 実施状況報告書
  • [学会発表] From Global Area Studies to Global Humanities for Co-creating Global Societies2023

    • 著者名/発表者名
      西尾哲夫
    • 学会等名
      特別研究・国際シンポジウムThe International Conference of Minpaku Special Project “Global Area Studies: Towards a New Epistemology for Mapping the Globalizing World”
    • 関連する報告書
      2022 実施状況報告書
    • 国際学会
  • [学会発表] アラビアンナイトとヨーロッパの音楽風景2023

    • 著者名/発表者名
      西尾哲夫・岡本尚子・岡本祥子
    • 学会等名
      第529回みんぱくゼミナール
    • 関連する報告書
      2022 実施状況報告書
  • [学会発表] 『意味の深み』には何があるのか?―地球社会を共創する哲学としての井筒俊彦の可能性2022

    • 著者名/発表者名
      西尾哲夫
    • 学会等名
      国際シンポジウム「井筒俊彦の東洋哲学を再定置する」
    • 関連する報告書
      2022 実施状況報告書
    • 国際学会
  • [学会発表] 自然環境と言語認識の世界類型2022

    • 著者名/発表者名
      西尾哲夫
    • 学会等名
      国際ワークショップ「「文明の生態史観」と地球社会」
    • 関連する報告書
      2022 実施状況報告書
    • 国際学会
  • [学会発表] 人間にとって物語とは何か?―人類史的試論2022

    • 著者名/発表者名
      西尾哲夫
    • 学会等名
      説話・伝承学会2022年度春季大会基調講演
    • 関連する報告書
      2022 実施状況報告書
    • 招待講演
  • [備考]

    • URL

      https://www.minpaku.ac.jp/post-project/33789

    • 関連する報告書
      2023 実施状況報告書
  • [備考] 東洋学者アントワーヌ・ガランの知的形成と『ガラン版千一夜物語』の創作過程の解明(2022-2025)

    • URL

      https://www.minpaku.ac.jp/post-project/33789

    • 関連する報告書
      2022 実施状況報告書

URL: 

公開日: 2022-04-19   更新日: 2024-12-25  

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