研究課題/領域番号 |
22K00501
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分02060:言語学関連
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
佐藤 知己 北海道大学, 文学研究院, 教授 (40231344)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2027-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2026年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
2025年度: 520千円 (直接経費: 400千円、間接経費: 120千円)
2024年度: 520千円 (直接経費: 400千円、間接経費: 120千円)
2023年度: 520千円 (直接経費: 400千円、間接経費: 120千円)
2022年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
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キーワード | アイヌ語 / 所属形 / 母音脱落 / 欠損 / 古文書 / 分裂自動詞性 / 結合価 / 言語復興 / 歴史言語学 / 言語史 / 方言 |
研究開始時の研究の概要 |
アイヌ語の歴史研究はアイヌ語諸方言の比較研究によるしかないが、この方法だと、アイヌ語の調査が行われる前に失われた多くの地方のアイヌ語方言は考慮されない結果となり、不備がある。本研究は旅行者や探検家によって記録された古文書を調査して、近現代の記録がほとんどない地方のアイヌ語や、時代をできるだけ遡った古い時代のアイヌ語の姿を明らかにし、アイヌ語の歴史を実証的に解明するものである。
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研究実績の概要 |
今年度は、アイヌ語の重要な文法的特徴の1つである所属形の歴史的な発達について、古文書資料と現代の資料とを併用しながら、従来の説を検討し、それらの利点や欠点を明らかにした上で、従来の説のほとんどが、母音調和や大規模な母音脱落を前提としていながら、実際には所属形や動詞の派生のような、極めて限られた領域にしか問題の現象が現れない点を批判して、あらたな仮説として、subtraction(欠損)という形態論的なプロセスが古くは生産的な手法として、アイヌ語にあったのではないか、という仮説を述べた。また、アイヌ語の歴史的な変遷を探る上でも重要な手がかりとなる、アイヌ語文法の基本概念について考察し、論理構造に基づく結合価が、まず最も抽象的な特徴として存在し、さらに、他言語ではおもに統語的な手段のみで充足されるのに対し、アイヌ語においてはそれらの項が派生、合成、屈折、統語のような多様な手段で実現可能なところに、アイヌ語の文の構造的な特徴があることを明らかにした。また、結合価には、論理構造に基づくものと密接な関わりはあるものの、それとは別の「人称表示」に関わる別の結合価が存在し、少なくとも性質の異なる2種類の結合価が別々に作用してアイヌ語の文が形成されることを明らかにした。また、アイヌ語の古い歴史を知る上で、今後、古文書資料の分析において留意が必要となる可能性が高い現象として、これまでほとんど注目されていなかったものとして、「分裂自動詞性 split intransitivity」の問題があることを研究し、学会(国際歴史言語学会[ICHL、ハイデルベルク大学]で発表した。 この研究によれば、アイヌ語の動詞の人称変化は、現在知られているよりももっと複雑で、自動詞の論理構造によって2種類の区別があった可能性があることを明らかにしており、今後のアイヌ語古文献の調査研究において注視しなければならない言語的特徴を提示した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
古文書資料を用いることにより、アイヌ語の歴史的変遷を考察する上で重要な手かがりが得られることを、結合価、所属形、形態論的プロセスなどの文法特徴を元に明らかにし、今後のさらなる研究の糸口をつかむことができていること、また、分裂自動詞性のような、従来、アイヌ語にはみられない、と考えられていた文法的現象についても、古文書資料の検討によってその存在が明らかにできる可能性を示したこと、さらに、これらの研究をすすめる上で、アイヌ語の古文書資料を分析する技術的ノウハウ(実証的な研究に欠かせない、資料の統計処理プログラム)の試験運用作業を進めることができていることから、おおむね順調に進展していると判断する。
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今後の研究の推進方策 |
これまでの研究で明らかにしたアイヌ語の文法特徴を、古文書資料を用いて研究することにより、歴史的な観点から発達を跡づける作業を行う。さらに、これまで気付かれていないアイヌ語の歴史的事実の発見に努める。また、並行して、未分析のアイヌ語古文書資料を分析し、仮説の検証に役立つデータを蓄積する努力を継続して行う。なお、その作業を通じて、資料の統計的処理方法の運用と改善に努め、分析の精度を高める努力を継続する。
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