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現代ドイツにおける「ナチ語彙」の変容と使用動機―言語学と政治学の協働による研究

研究課題

研究課題/領域番号 22K00514
研究種目

基盤研究(C)

配分区分基金
応募区分一般
審査区分 小区分02060:言語学関連
研究機関学習院大学

研究代表者

高田 博行  学習院大学, 文学部, 教授 (80127331)

研究分担者 板橋 拓己  東京大学, 大学院法学政治学研究科(法学部), 教授 (80507153)
研究期間 (年度) 2022-04-01 – 2025-03-31
研究課題ステータス 交付 (2023年度)
配分額 *注記
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2024年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2023年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2022年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
キーワードナチズム / 語彙分析 / 政治的言説 / 右翼ポピュリズム
研究開始時の研究の概要

本研究は、言語学と政治学との協働により《政治における言語の役割》という普遍的問題に取り組むものである。その際切り口とするのは、現代ドイツにおける「ナチ語彙」の使用である。ドイツでは 2014年頃から、右翼ポピュリスト政治家らが公的場面でナチ語彙を使用している。しかし、語は同じでも意味に変容が生じている可能性がある。本研究はこの意味の変容にこそナチ語彙が今日使用される動機の本質があると考え、自前の言語コーパスに基づきナチ時代と現代との意味的相違をあぶり出し、この変容を解析して現代ドイツの政治的言説におけるナチ語彙の存在理由に迫る。

研究実績の概要

2023年度は、「ふつうの人々」における言語使用という観点を切り口にして、いくつかのナチ語彙の意味について考察をさらに進めた。以下、Volksgemeinschaft「民族共同体」というナチ語彙を例にして研究成果の一部を解説する。ナチ体制下の「ふつうの人々」の言語使用を知る目的で、亡命社会民主党が1934年4月~1940年4月にドイツ国内の情報提供者による世情分析を国際的に発信した『ドイツ通信』(Deutschland-Berichte)における報告文を分析した。すると、ナチ指導部がこのVolksgemeinschaft「民族共同体」という語を使用したときには「新しい」「築く」など未来志向の語が特徴的であるのに対して、工場労働者などの「ふつうの人々」が同じ語を口にしたときには「義務」「強制」「締め出す」「敵」というネガティブな語が特徴的であった。これは、「ふつうの人々」が「民族共同体」の一員として認知されないと大きな不利益を被ってしまうことを常に気にかけていた証と解釈できる。現在のドイツに目を向けると、エリートではない「ふつうの人々」の代弁者を自認するAfD(ドイツのための選択肢)の政治家たちがナチ語彙を再使用し、言語面からナチズムを想起させる。AfDの政治家のひとりであるAndre Poggenburg (1975-)が2015年にFacebookでVolksgemeinschaft「民族共同体」という語を使用したとき、Poggenburgは「この語はナチ体制以前から存在するのでナチ語彙ではなく、また頻出したという点ではVolkswagen「国民車」と変わりはしない」と弁明した。AfDの政治家がナチ語彙を口にするとき、告発を避けるべく語の意味はナチズムにおける本来の意味から巧妙に変更されていることがわかった。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

2: おおむね順調に進展している

理由

今回新たに「ふつうの人々」における言語使用という観点を導入したことによって、前年度と比べてナチ語彙の変遷を追いやすくなった。

今後の研究の推進方策

2024年には、AfD幹部であるBjoern Hoeckeの演説文を100点から200点ほど収集して、現在ドイツの政治家におけるナチ語彙使用の実態についてさらに詳細に検討する。

報告書

(2件)
  • 2023 実施状況報告書
  • 2022 実施状況報告書
  • 研究成果

    (20件)

すべて 2024 2023 2022

すべて 雑誌論文 (6件) (うち査読あり 1件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (8件) (うち招待講演 2件) 図書 (6件)

  • [雑誌論文] ドイツ語の語彙拡充の歴史ー造語言語としてのアイデンティティ2023

    • 著者名/発表者名
      高田博行
    • 雑誌名

      歴史言語学(日本歴史言語学会)

      巻: 12 ページ: 143-160

    • 関連する報告書
      2023 実施状況報告書
    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] 「ヨーロッパにおける冷戦終結を問い直す―ドイツ統一とNATO拡大問題を中心に2023

    • 著者名/発表者名
      板橋拓己
    • 雑誌名

      學士會会報

      巻: 961 ページ: 14-19

    • 関連する報告書
      2023 実施状況報告書
  • [雑誌論文] 学界展望〈国際政治〉Alexandra Sakaki, Hanns W. Maull, Kerstin Lukner, Ellis S. Krauss, Thomas U. Berger, Reluctant Warriors: Germany, Japan, and Their U.S. Alliance Dilemma (Washington, D.C.: Brookings Institution Press, 2020, xi + 278 pp.)2023

    • 著者名/発表者名
      板橋拓己
    • 雑誌名

      国家学会雑誌

      巻: 136 ページ: 1100-1103

    • 関連する報告書
      2023 実施状況報告書
  • [雑誌論文] ドイツ外交「ポスト冷戦」時代の終焉か2023

    • 著者名/発表者名
      板橋拓己
    • 雑誌名

      外交

      巻: 78 ページ: 118-126

    • 関連する報告書
      2022 実施状況報告書
  • [雑誌論文] 冷戦後の欧州国際秩序の成り立ちを問い直す2022

    • 著者名/発表者名
      板橋拓己
    • 雑誌名

      歴史学研究

      巻: 1029号 ページ: 71-72

    • 関連する報告書
      2022 実施状況報告書
    • オープンアクセス
  • [雑誌論文] German Unification and the Issue of Poland’s Western Border2022

    • 著者名/発表者名
      板橋拓己
    • 雑誌名

      成蹊法学

      巻: 96 ページ: 135-162

    • 関連する報告書
      2022 実施状況報告書
  • [学会発表] ドイツ語圏における歴史社会言語学・歴史語用論の動向2024

    • 著者名/発表者名
      高田博行
    • 学会等名
      HiSoPra*(歴史社会言語学・歴史語用論) 第7回研究会
    • 関連する報告書
      2023 実施状況報告書
    • 招待講演
  • [学会発表] 東西ドイツ統一をめぐる国際政治の再検討2023

    • 著者名/発表者名
      板橋拓己
    • 学会等名
      ドイツ現代史研究会
    • 関連する報告書
      2023 実施状況報告書
  • [学会発表] 西ドイツにおける戦略的思考の誕生2023

    • 著者名/発表者名
      板橋拓己
    • 学会等名
      日本国際政治学会2023年度研究大会 欧州国際政治史・欧州研究分科会
    • 関連する報告書
      2023 実施状況報告書
  • [学会発表] 歴史社会言語学・歴史語用論研究の現状と今後の展開――資料と方法を中心に(指定討論者)2023

    • 著者名/発表者名
      高田博行
    • 学会等名
      HiSoPra*(歴史社会言語学・歴史語用論)研究会
    • 関連する報告書
      2022 実施状況報告書
  • [学会発表] ドイツ語の語彙拡充の歴史―造語言語としてのアイデンティティ2022

    • 著者名/発表者名
      高田博行
    • 学会等名
      日本歴史言語学会
    • 関連する報告書
      2022 実施状況報告書
    • 招待講演
  • [学会発表] 1970年代の西ドイツにおける保守主義の変容2022

    • 著者名/発表者名
      板橋拓己
    • 学会等名
      日本比較政治学会
    • 関連する報告書
      2022 実施状況報告書
  • [学会発表] 東西ドイツ統一をめぐる国際政治の再検討2022

    • 著者名/発表者名
      板橋拓己
    • 学会等名
      比較現代政治・政治史研究会
    • 関連する報告書
      2022 実施状況報告書
  • [学会発表] (討論)欧州研究における歴史的・空間的視座の拡大2022

    • 著者名/発表者名
      板橋拓己
    • 学会等名
      日本国際政治学会
    • 関連する報告書
      2022 実施状況報告書
  • [図書] 民主主義は甦るのか?:歴史から考えるポピュリズム2024

    • 著者名/発表者名
      細谷雄一・板橋拓己(編)
    • 総ページ数
      304
    • 出版者
      慶應義塾大学出版会
    • ISBN
      476642946X
    • 関連する報告書
      2023 実施状況報告書
  • [図書] ウクライナ戦争とヨーロッパ2024

    • 著者名/発表者名
      細谷雄一(編)(板橋拓己他9名共著)
    • 総ページ数
      152
    • 出版者
      東京大学出版会
    • ISBN
      9784130333078
    • 関連する報告書
      2023 実施状況報告書
  • [図書] 現代ドイツ政治外交史―占領期からメルケル政権まで2023

    • 著者名/発表者名
      板橋拓己・妹尾哲志
    • 総ページ数
      394
    • 出版者
      ミネルヴァ書房
    • ISBN
      4623094863
    • 関連する報告書
      2023 実施状況報告書
  • [図書] ノモスとしての言語2022

    • 著者名/発表者名
      大宮勘一郎・田中愼編(高田博行他9名共著)
    • 総ページ数
      344
    • 出版者
      ひつじ書房
    • ISBN
      9784823411069
    • 関連する報告書
      2022 実施状況報告書
  • [図書] 言語の標準化を考えるー日中英独仏「対照言語史」の試み2022

    • 著者名/発表者名
      高田博行・田中牧郎・堀田隆一編
    • 総ページ数
      267
    • 出版者
      大修館書店
    • ISBN
      9784469213911
    • 関連する報告書
      2022 実施状況報告書
  • [図書] 分断の克服1989-1990―統一をめぐる西ドイツ外交の挑戦2022

    • 著者名/発表者名
      板橋拓己
    • 総ページ数
      279
    • 出版者
      中央公論新社
    • ISBN
      9784121101297
    • 関連する報告書
      2022 実施状況報告書

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公開日: 2022-04-19   更新日: 2024-12-25  

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