研究課題/領域番号 |
22K00516
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分02060:言語学関連
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研究機関 | 上智大学 |
研究代表者 |
北原 真冬 上智大学, 外国語学部, 教授 (00343301)
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研究分担者 |
野口 大斗 東京医科歯科大学, 教養部, 非常勤講師 (00938649)
溝口 愛 前橋工科大学, 工学部, 准教授 (10824823)
橋本 文子 東京家政学院大学, 人間栄養学部, 准教授 (20237928)
渡部 直也 東京大学, 大学院総合文化研究科, 学術研究員 (30846671)
黄 竹佑 名古屋学院大学, 外国語学部, 講師 (70908665)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,290千円 (直接経費: 3,300千円、間接経費: 990千円)
2024年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2023年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2022年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
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キーワード | 東北方言 / 有声性の不完全中和 / 知覚実験 / 口蓋化 / VOT / F0 / 中和 / 音響分析 / フィールドワーク |
研究開始時の研究の概要 |
本研究は,東北方言の歯茎・軟口蓋破裂音(カ行タ行の子音)における有声・無声に関わる音声特徴をフィールドワークと音響分析によって明らかにする。特に,破裂音の有声・無声の弁別に関わる音声特徴が,地域と年齢層によって徐々に変化しているという研究報告を受け,東北6県の小学生から80代までを含む年齢層の調査データに基づき,実証的な検討を行う。また,破裂音周辺の母音の無声化と破裂音の有声化という拮抗するプロセスの実態を解明し,地域と年齢層による分布を調べる。さらに,東北以外の地域の音声データとの比較や,音響分析によって取り出した特性の働きを知覚実験によって確かめることで,日本語音声の変化を多面的に捉える。
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研究実績の概要 |
東北方言における破裂音の有声・無声の実現について,研究分担者が過去に収集したフィールドワークのデータ,およびオンライン実験による産出データを分析したことに加え,オンライン実験による知覚データ,青森県,福島県,および青森県つがる市の東京出張所に出向いてインタビュー録音を行い,それらの結果を統合して以下の成果を得た.まず,当該方言において語中の有声・無声の対立が音韻的に中和することは定性的には広く知られているが,実際の録音においては中和は不完全であり,VOT(voice onset time),後の母音のF0,および前の母音の時間長といった音響的特性において有声・無声の対立が完全に失われているとは到底言い難い.一方,音声スプライシングと音声再合成という2種類の素材を用いた知覚実験の結果からは,確かに音響的特性の変化に伴って有声・無声の判断は変化するものの,その判断は不確実で,有声性について音響的特性は十分な手がかりを与えていないことがわかった.さらに,東京方言話者に対する同様の知覚実験データでは有声性についての判断はより正確であり,東北方言話者は「不完全中和」というプロセスを内在化させていることが示唆された.これらの成果を,当該分野における主要な国際学会であるICPhS2023およびInterspeech2023において発表した.それぞれの学会において有効なフィードバックを得ると同時に活発な議論を行うことができた.また,今後の研究の発展のため,東北方言の別な特徴である破裂音の口蓋化についても産出データの取得・分析を開始した.これを2024年度における国内外の学会での発表につなげる予定である.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
国際学会における対面での発表を二つ行うことができたものの,ポスターセッションという密な環境の影響からか,研究組織の多くのメンバーがCOVID-19に罹患するという犠牲を払うこととなった.またフィールドワークにおいては高齢の方々に参加していただいて至近距離でインタビューを行うことも多く,感染症の影響にはまだまだ気を遣う必要がある.そのため,いわゆるコロナ以前のようなペースで研究を行うことにはいささか困難がある.今後もオンライン実験を積極的に活用してデータを得る計画である.
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今後の研究の推進方策 |
研究開始当初は子音の有声性についての計測が主であったが,音声研究においてよくあるように,それは周辺の母音との相互作用が産出・知覚の両面において働いている可能性がある.また子音の口蓋化という別の現象も東北方言の特徴をより広く捉えるだけでなく,年代別の方言の特徴の保持を検討する上でも重要な指標となる.さらに,集中的に分析する地域をこれまでの青森・山形・福島からさらに秋田に広げることを計画している.
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