研究課題/領域番号 |
22K00526
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分02060:言語学関連
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
遠藤 智子 東京大学, 大学院総合文化研究科, 准教授 (40724422)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,290千円 (直接経費: 3,300千円、間接経費: 990千円)
2024年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2023年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2022年度: 1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
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キーワード | 会話分析 / 認識性 / 日中対照 / 質問連鎖 / 標識の義務性 / 日本語 / 中国語 / 対照研究 |
研究開始時の研究の概要 |
会話の参加者間で誰がより知識を持ち、語る権利があるのかという問題は認識性と呼ばれ、言語によりその標識のされ方が異なる。本研究は、会話分析の手法を用いて日本語と中国語の会話における認識性への配慮の現れ方を対照する。ターン開始部では間投詞や談話標識、ターン終了部では文末詞や質問形式等の文法的要素の使用と、目線や表情等の身体行動を詳細に分析することにより、同様の状況において日本語と中国語では認識性への配慮の仕方がどう異なり、相互行為の展開とどう関わるのかを明らかにする。分析に際しては、会話データの量的分析により支配的なパターンを明らかにしたうえで、質的分析により社会的行為の達成のされ方を記述する。
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研究実績の概要 |
他のプロジェクトと協働して、初対面の二者会話の新規データを日本語と中国語それぞれ30組(1組20分、合計600分)収録し、書き起こしおよび質問応答連鎖のコレクション作成を行った。連鎖の整理は30組中10組まで完了し、中国語会話では170例、日本語会話では196例の質問発話が抽出された。これらの例を質問の形式(Yes-No疑問文、疑問詞疑問文、選択疑問文)によって整理したのち、さらにYes-No疑問文に関してはその具体的な形式によって分類した。 整理することによって得られた結果に基づき、二つの現象に着目して分析を行った。ひとつはdeclarative question、もう一つは認識変化詞である。Declarative question、すなわち、疑問文の形式を取らないが答え(確認)を要求するものとして働く発話は、中国語会話では7例見つかったのに対し、日本語会話では1例しか見つからなかった。しかもこの1例は、よく観察すると、基本的に敬体で進行している会話の中で敬体表現が用いられておらず、不完全な印象を与える発話であった。また、疑問詞を用いた質問連鎖の第3の位置の形式を観察したところ、日本語会話では大半が「あ」「ああ」という認識変化詞で始まっていたのに対し、中国語会話では用いられる認識変化詞が多様で、何か一つの形式が特に高頻度で用いられるということがなく、認識変化詞のない発話も多く見られた。これらの観察より、日本語会話では認識的スタンス標識の利用において義務性が高い(なんらかの標識が用いられることが普通)が、中国語会話においては認識的スタンス標識が使用可能であっても実際に用いないことも珍しくない、という違いがある可能性が示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
データの収録と整理が順調に進み、コレクション作成もできている。成果の一部は年度末の国内シンポジウムにて発表したほか、2023年度初頭に国際学会の招待講演でもトピックとし、高い関心を集めた。
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今後の研究の推進方策 |
引き続き同内容でのコレクション作成を続けて量的な分析を可能にするほか、直接引用や思考の引用等の現象についてもシステマティックに整理し、会話分析の手法で研究するだけでなく、認知言語学的アプローチでも議論することで、より広い研究関心に訴える。
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