研究課題/領域番号 |
22K00538
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分02060:言語学関連
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研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
北原 久嗣 慶應義塾大学, 言語文化研究所(三田), 教授 (50301495)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,290千円 (直接経費: 3,300千円、間接経費: 990千円)
2024年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2023年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2022年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
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キーワード | 生成文法 / 極小モデル / 併合操作 / 作業空間 / 構造依存性 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究では,Chomsky (1995) においてその輪郭が示され,その後の研究で洗練されてきた極小モデルを採択し,普遍文法の中心に据えられた併合操作 Merge(X, Y)={X, Y} を見直し,併合の作業空間と生成手続きを制限する一般法則の関係を明らかにするなか,パラメータ化の対象を語彙項目の特性から現れる外在化の問題に限定することを提案する。この提案のもと,日英語に観察される統辞構造の普遍性と多様性の問題が,併合の対象である語彙項目の特性, 併合の適用手続き,その手続きを厳しく制限する一般法則,という三つの要因とその相互作用に起因する可能性を追求する。
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研究実績の概要 |
本研究は,構造依存性が言語の普遍的特性として現れる理由を再考するなか,類型論的に異なる日本語と英語(以下,日英語)の統辞構造の比較研究を推進する。具体的には,生成文法理論の枠組みのもと、日英語の統辞構造の背後に仮定されてきた併合 (Merge (X, Y) = {X, Y}) の手続きを見直し,併合が生成する統辞構造の普遍的特性と外在化 (externalization) が誘因する多様性について,(i) 語彙項目の特性,(ii) 併合の適用手続き,(iii) その手続きを厳しく制限する一般法則,という三つの要因とその相互作用から統一的な説明を試みる。
本研究初年度である2022年度は、移動と呼ばれてきた内的併合 (Internal Merge) と併合と呼ばれてきた外的併合 (External Merge) の両者の違いは併合 (Merge (X, Y) = {X, Y}) の適用手順の違いに過ぎないという研究成果を踏まえ,この併合の極めて単純な定式化に検討を加えることから始めた。具体的には,併合の適用前と適用後の作業空間の状態を明らかにし,併合 Merge (X, Y) = {X, Y} の適用前はXとYが作業空間に存在するが,適用後はX, Y, {X, Y} の三要素ではなく,{X, Y} のみが存在するという仮説をとりあげ,要素Xと要素Yはどのようにして作業空間から消失したのかという問題について,併合の適用と作業空間の写像の関係を厳しく制限する一般法則に言及する分析を提出した。さらに,この分析に検討を加えるなか、併合によって生成される統辞構造の文法関係として,構造依存性が言語の普遍的特性として繰り返し現れることを考察した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2022年度も,Covid-19の世界的流行という厳しい状況下で研究を推進することとなったが,インターネットによるネットワーク化を進めるなか,オンライン上で専門知識・意見の交換を行い,予定していた研究課題には十分取り組むことができたと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
本研究2年目となる2023年度は,統辞構造の外在化に現れる多様性の問題をとりあげる。1980年代に導入されたパラメータという概念は,言語の多様性を記述的に特徴づける道具に過ぎず、例えば,動詞句内の他動詞と目的語の階層関係が普遍的特性を示すのはなぜか,動詞句内の他動詞と目的語の線的順序(語順)において変容が許されるのはなぜか,そしてそもそもなぜ普遍文法にパラメータ化が生じるのかを問うことはできなかった。本研究では,この種の「なぜ」という一連の問いをとりあげ,言語の普遍性と多様性の問題に取り組む。具体的には、語彙項目の素性間の差異に起因する併合手続きに注目し,その手続きによって生成された統辞構造の相違、またその外在化 (externalization) が誘因する多様性について,統一的な説明の可能性を探る。
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