研究課題/領域番号 |
22K00543
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分02060:言語学関連
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研究機関 | 龍谷大学 |
研究代表者 |
許 秀美 龍谷大学, 心理学部, 准教授 (50612826)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
1,690千円 (直接経費: 1,300千円、間接経費: 390千円)
2024年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2023年度: 520千円 (直接経費: 400千円、間接経費: 120千円)
2022年度: 260千円 (直接経費: 200千円、間接経費: 60千円)
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キーワード | 小田幾五郎 / 苗代川 / 通詞 / 講話 / 東醫寶鑑 / 朴方貫 / 聞書 / 朝鮮語学書 / 漂民対話 |
研究開始時の研究の概要 |
「講話」は、江戸・明治期に対馬や薩摩で編纂され、朝鮮語通詞たちの語学教科書として長くもちいられた朝鮮語学書の一つである。現在所在が確認できる「講話」は4冊であるが、採択者は、はやくから「講話」の語学資料としての重要性に着目し「講話」の写本のうち3冊を入手し、文献学的・言語学的検討をおこなってきた。さらに、2017年末、成立年度の最も古い最後の1冊、小田幾五郎が天明4年(1784)に編集した写本を入手した。この写本は、長年未公開であったため入手がかなわずにいたものである。天明4年本を入手したことにより、現在所在が確認できた写本がすべてそろい、「講話」の写本間における対照研究が可能になった。
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研究実績の概要 |
本研究の代表者は、「講話」の底本に最も近いと思われる小田幾五郎編、鍵屋歴史館が所蔵本を入手してから、現存する他の写本、京都大学所蔵本、沈寿官家所蔵本、東洋学研究所所蔵本の対照研究を進めてきた。その課程で京都大学所蔵本「講話」を筆写した朴伊圓の家系の4代目にあたる朴方貫が著した「朝鮮薬名解」を入手した。朴方貫の家系は、薩摩の通詞家系であり、江戸期から明治期にかけて広く使われた朝鮮語学書の写本を多く伝える。5代目朴平覺は、「隣語大方」を、6代目朴平格は、「交隣須知」を、7代目朴伊圓は、「講話」、「倭語類解」、「類語」を書写した。 さて、この度入手した「朝鮮薬名解」は、4代目朴方貫の手によって作成されたものであるが、その序文によれば、朴方貫も家業の通詞を職としていたが、訳あって、家業を弟に譲り、医の道を究めることにしたとある。朴方貫は、同藩の本草学者曽槃に本草を学び、曽槃の依頼で「朝鮮薬名解」を撰述した。「朝鮮薬名解」は、端的にいえば、朴方貫が、曽槃の依頼で許浚撰「東医宝鑑」の湯液篇の諺文部分を書写し、日本語訳をつけ、諺文部分には、朝鮮語の発音をカナで付したものである。 朝鮮語記述に着目してみれば、判読不可能な文字で書かれている部分や、判読不明な朝鮮語に「未詳」、「諺文誤」の記述が見られるが、カナで付した朝鮮語発音には、中期朝鮮語の「S」終声の音価を維持したままの表記が見られるなど、当時の通詞家系の朝鮮語知識や朝鮮語学習の伝承、そして朝鮮語音価の様相を知る貴重な資料といえる。 「朝鮮薬名解」の成立過程については、初歩的な考証をおこない学界に紹介した。今後も「講話」の対照研究と共に「朝鮮薬名解」の研究も並行しておこなう予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
現存する「講話」(鍵屋歴史館が所蔵本(小田幾五郎編)、京都大学所蔵本(朴伊圓写)、沈寿官家所蔵本(筆写者不明)、東洋学研究所所蔵本(アストン写))4本の第1次データベース入力作業は終わっている。現在は、4本対照のためのデータベースの再構築とともに、それぞれの写本について、相異点・類似点を検討しながら写本の系統についての検討もおこなっている。 さらに、京都大学所蔵本の筆写者である朴伊圓の家系で作成された朝鮮語かな書き資料の一つ「朝鮮薬名解」を入手し、初歩的な考証を実施し、学界に紹介した。 江戸期における薩摩苗代川通詞家系に伝わる朝鮮語の資料を入手することは、当時の通詞たちの朝鮮語知識や朝鮮語学習の伝承、そして朝鮮語の音価について知る上で貴重な手掛かりになる。 今後も引き続き資料分析と資料収集をおこなっていく。
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今後の研究の推進方策 |
本年度も継続して、4本対照のデータベース構築をおこなう。 4本の写本のうち沈寿官家所蔵本は、虫損甚だしく、今まで一般公開がされたことがない。しかし、複写本では不鮮明なところが多く判読が難しい箇所が多くあるため、可能であれば原本閲覧をしておく必要がある。今年度が最終年度であるため、所蔵者に閲覧許可申請をしてみる予定である。 また、朴方貫が作成した「朝鮮薬名解」について、引き続き文献学的・言語学的検討をおこなう。
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