研究課題/領域番号 |
22K00551
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分02060:言語学関連
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研究機関 | 福井大学 |
研究代表者 |
永井 崇弘 福井大学, 学術研究院教育・人文社会系部門(総合グローバル), 教授 (80313724)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
2,210千円 (直接経費: 1,700千円、間接経費: 510千円)
2025年度: 260千円 (直接経費: 200千円、間接経費: 60千円)
2024年度: 520千円 (直接経費: 400千円、間接経費: 120千円)
2023年度: 260千円 (直接経費: 200千円、間接経費: 60千円)
2022年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
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キーワード | 漢訳新約聖書 / メドハースト / 南京官話訳 / 「把」の用法 / 漢訳聖書 / グリフィス訳 / 南方官話訳 / 版本比較 / 訳文比較 / 南京官話 / 南京官話訳新約聖書 / 語彙と文法の特徴 / メドハースト訳 |
研究開始時の研究の概要 |
この研究は、近世中国語研究の主要対象となっている官話と称される言語の語彙と文法に関するものです。19世紀後半から中国では、それまで主に流通していた南京官話から北京官話への転換が行われます。その実態やメカニズムを解明するために、北京官話に比べて研究が進んでいなかった南京官話について、これまでの中国資料に加え、漢訳聖書という西洋資料を用いて、その語彙と文法の特徴を明らかにします。この研究では、南京官話の言語的特徴の解明に加え、翻訳者や底本などの漢訳聖書の翻訳背景も明らかにします。
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研究実績の概要 |
今年度では、前年度までの研究成果および電子テキスト化した南京官話訳新約聖書のデータを用いて計量的観点から研究を行った。これまで語彙および文法から中国語の文体を特定する場合、多くは特定の語句の有無という定性的な観点から研究・考察が行われてきた。この従来からの観点に加え、研究代表者はもう一つの新たな指標である定量的観点からの考察を行った。論文『メドハースト・ストロナックによる南京官話新約聖書における「把」字の用法について』(永井崇弘、単著、2024年3月、愛知大学国際コミュニケーション学会『文明21』第52号15-27頁)では、メドハースト・ストロナックによる南京官話新約聖書における「把」字の多用に注目し、1872年の北京委員会北京官話訳およびグリフィスの官話訳のデータとも比較しながら、メドハースト・ストロナックによる南京官話訳における「把」字の用法の実態と特徴を分析した。その結果、「把」の使用頻度が南北の官話の言語体の形成と関係していることを指摘するとともに、その比率が北京官話訳を1とするとおおよそ「1:2:10」となり、北京官話訳と南京官話訳では、おおよそ「1:10」と10倍となっていることが明らかとなった。これは官話として共通で使用される「把」が南京官話や北京官話、南北折衷官話の言語体を特定する指標として利用可能であることを示すものである。 また本研究課題に間接的に関連する国際シンポジウムにおける口頭発表として、「日本漢譯聖經流傳之情況(永井崇弘、単独、2023年9月、イタリア・ローマ・ラ・サピエンツァ大学)がある。ここでは日本国内の漢訳聖書の所蔵状況と所蔵傾向を考察したものである。この国際シンポジウムにおける口頭発表により、メドハースト・ストロナックによる南京官話訳の日本国内の所蔵(流布)がないことを確認した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2023年度は2022年度に行ったグリフィスの官話訳聖書にかかる研究成果と特に電子化を行ったメドハースト・ストロナックによる南京官話訳新約聖書のデータを利用することにより、計量的観点から「把」の用法の特徴という語彙・文法領域の研究を行うことを可能とした。このように、前年度の研究成果およびテキストの電子化作業を基礎に積み上がる形で語彙・文法領域の計量的研究を行い、論文としてその成果を公表できたことは、本研究課題にかかる研究がおおむね順調に進展していることを示している。 なお、2023年度に実施を予定していたオーストラリアの図書館における文献調査については、円安および海外物価の状況等からその実施を見送ったが、この調査は版本にかかるもので、研究実施項目の順序を入れ替えることにより対応し、2024年度に行っても本研究課題の遂行に支障はない。
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今後の研究の推進方策 |
2024年度では2023年度に引き続きメドハースト・ストロナックによる南京官話訳新約聖書における語彙・文法を中心とする言語的特徴の解明を行いつつ、各版本の比較研究も行う。 語彙・文法における研究では、1856年版と1857年版を比較し、その異同箇所の特定する。その異同箇所からメドハースト・ストロナックによる南京官話の特徴を明らかにする。この研究成果については、2024年度中に学会における口頭発表や論文としてまとめて社会に広く公表する。 メドハースト・ストロナック訳の版本については、2024年度にオーストラリアの図書館等において文献調査を行い、より多くの版本の閲覧および収集(写真撮影)を行うことにより、メドハースト・ストロナックの南京官話訳本の流布状況や版本間の異同、版本の系譜の精確な解明につなげたい。
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