研究課題/領域番号 |
22K00552
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分02060:言語学関連
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
藤田 耕司 京都大学, 人間・環境学研究科, 名誉教授 (00173427)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2024年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
2023年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2022年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
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キーワード | 言語進化 / 運動制御起源仮説 / 統語と語彙の平行進化 / 反語彙主義 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究は人間言語の中核的下位機能である統語と語彙の双方がどのように進化したのかを解明しようとするものである.従来の見方とは異なり,本研究では統語と語彙は同一の組み合わせ能力(併合)を共通基盤として持ち,平行的に進化したという仮説を展開して,他種の持つ認知機能との進化的連続性を重視した,より自然な言語進化観の構築を目指す.特に,(A)人間言語の語彙と他種の語彙的信号との相違,(B)語彙の原子単位となる「素性」の進化的ルーツ,(C)素性に作用して語彙を形成する併合,の3つの問題に集中的に取り組む.
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研究実績の概要 |
理論基盤を生成文法(ミニマリスト・プログラム)に置く言語進化研究では,これまで基本統語演算操作「併合 Merge」を巡る考察に議論が限定され,しかも,その漸進進化の可能性については考慮されることなく,ただ突然変異によりホモ・サピエンスにおいてのみ突発的に出現したとされることが多かった.これに対し,本研究は,(1) 併合には他種にも見られる前言語的な進化的前駆体があること,(2) 統語演算のみならずその入力を供給する語彙も等しく進化的説明を必要とするものであること,という独自の視点から,特に統語と語彙の平行進化を主張する統合的な進化シナリオを提示するものである. 今年度は他種の行動に観察される「原型語彙」(人間言語の語彙の前駆体となり得る能力)および「原型概念」(人間の語彙が表す概念の前駆体)の存在を中心に考察を行った.従来,言語を持たない他種では概念の形成も行えず,語彙概念は人間独自のものであるとされがちであったが,近年の知見はそうではなく,他種も概念の形成を行っており,ただ,それを信号として表すことがないだけであるということを示している.他種の信号,たとえば捕食者に対する警戒コールは,接近する捕食者の概念を喚起するだけではなく,それに対する退避行動等の反応を同時に要請するものである点,純粋に概念だけを表すことができる人間語彙と大きく異なるとされる.このギャップを埋めるものとして,J. Bronowski (1977) が指摘した「情動の分離 separation of affect」に再度注目し,これが人間において可能になった生物学的原因を考察した.また,この情動の分離が現在の人間における語彙範疇と機能範疇の分化に繋がったと考え,もともと他種においてこれらは渾然一体となっていたとする仮説を検討した.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
深刻な健康上の問題が同時に複数生じたため,今年度後半における研究活動を一時的に中断せざるを得なかった.それらの問題は解決済みまたは現在快方に向かっており,次年度の活動には支障ない.
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今後の研究の推進方策 |
これまで未着手であった,(1) 語彙の原子単位とされる素性 (feature) の進化的ルーツ,(2) その素性の結合に始まる言語併合と結果として生じる領域固有性,の2つの問題に取り組み,語彙進化の包括的なシナリオを構築する.(1)については,素性の中には他種においても認識され得る情報を担うものもあるが,これだれではまだ人間言語の素性に至るわけではなく,さらに何が必要かという観点から考察を進める.他種の素性的認知がさらに分化すると純粋な素性になるとの見通しを立ててこの問題に取り組むが,これは先述の語彙範疇・機能範疇の分離的成立を明らかにすることに繋がる.関する「分離仮説」を拡張するものである.また(2)については,領域一般的な「汎用併合」が言語内外において様々なドメインで作用しており,素性に対して働いた結果として語彙の形成を可能にするという観点から研究を進める.なお次年度において,すでに講演依頼が数件入っており,これらの成果はそこで公開予定である.
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