研究課題/領域番号 |
22K00559
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分02060:言語学関連
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研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
川原 繁人 慶應義塾大学, 言語文化研究所(三田), 教授 (80718792)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2027-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,290千円 (直接経費: 3,300千円、間接経費: 990千円)
2026年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2025年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2024年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2023年度: 520千円 (直接経費: 400千円、間接経費: 120千円)
2022年度: 520千円 (直接経費: 400千円、間接経費: 120千円)
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キーワード | 音象徴 / 音韻変化 / 社会貢献 / 最大エントロピー法 / 実験言語学 / 学術雑誌論文出版 / 解説論文出版 / 一般向けの著作出版 / 学会発表 / メディア出演 / 音声学 / 音韻論 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究では、以下の4つの活動を有機的に遂行する:(1)日本語の音韻現象を題材としたMaxEntの検証(2)音と意味の体系的つながりである音象徴の MaxEnt分析(3)MaxEntの数学的予測の実験的吟味(4)解説論文の執筆および解説動画の作成。これら4つの活動を通して、日本語の観点から理論言語学の発展に貢献し、興味をもつ研究者なら誰でもMaxEnt分析を簡単に行える下地を整備する。
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研究実績の概要 |
大きな成果としては、一般向けの書籍『なぜ、お菓子の名前はパピプペポが多いのか』(ディスカヴァー21)、『言語学的ラップの世界』(東京書籍)、『日本語の秘密』(講談社現代新書)を出版し、これらの書籍の中で、研究成果の一部を報告した。特に、本課題の研究テーマのひとつである音象徴に関して、『日本語の秘密』の中で歌人の俵万智氏やラッパーのMummy-D氏と対談をおこなった。これらの対談から、音象徴研究の学術的な意義だけでなく、短歌や音楽などの創作という文脈での有用性が示された。また、これらの書籍に関連する取材も多く受け、これらの現象をより多くの人々に知ってもらう機会となった。 2024年3月には、俵氏・Mummy-D氏との鼎談イベント「ことばを楽しむ ことばで楽しむ 言語芸術の地平」を慶應義塾大学にて開催し、一般の人々に研究成果や研究成果の社会的意義を直接的に伝える機会を設けた。 また新たな実験も実施し、[r](歯茎ふるえ音)が「ざらざらしたイメージ」を喚起するという仮説に関する20以上の言語を対象とした通言語学的な実験に参加し、その結果を学術雑誌に論文を投稿した。さらに、音韻変化に関しても、日本語の東北方言における鼻濁音化がどれだけ使用頻度に影響を受けるかに関する実験をおこない、その結果を最大エントロピー法を用いてモデル化した。実験部分に関しては、学術雑誌に再投稿済みである。モデリングの結果は、草稿を執筆し、次年度以降に学術雑誌に投稿予定である。 2023年10月には、Theoretical Linguistics at Keio (TaLK)を開催し、本研究成果を含め、広く理論言語学について議論する機会を設けた。 最後に、YouTubeチャンネル「ゆる言語学ラジオ」において、最適性理論や最大エントロピー法などを解説し、現時点で37万回再生を超える好評を得ている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
上で述べたように、本研究の成果は書籍・学術論文・学会発表などを通して着実に成果となって形となっている。また、本研究の核となる「最大エントロピー法」に関して、上記のゆる言語学ラジオ出演の好評を得て、ある出版社からの書籍化が決定した。書籍の出版にむけて、原稿の執筆も進んでおり、第一草稿は完成している。ただし、最大エントロピー法を一般読者向けに執筆することは容易ではなく、編集者からは書き直しを求められている段階である。よって専門的な書籍をまず別の出版社から出版し、それをかみ砕いた形で、改めて別の書籍を執筆する可能性も考慮に入れている。このような現状であるため、2024年度中に書籍を出版できるかは定かではないが、本研究の最終年度には何かしらの形で書籍化がなされることは十分期待できる。 実験研究に関しては、実験を複数おこない、国際雑誌への投稿も着実に進めており、その意味でも研究は順調に進展していると言える。6月に韓国でおこなわれる国際学会Laboratory Phonologyや6月におこなわれる国内学会(日本音韻論学会)で発表予定である。また、カルチャースクールや全国の高校・大学での講演会も複数予定されている。 2024年6月にはYale大学のJason Shaw氏を日本に迎え、共同研究を進める予定である。Shaw氏とはこれまで多くの共同研究をおこない、多くの成果を残してきた実績があるため、これを機会にまた新たな成果が創出されることが十分に期待できる。彼との共同研究となる実験の計画も順調に進んでいる。
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今後の研究の推進方策 |
研究は順調に進んでいるため、計画通りに研究活動を進める。特に最大エントロピー法を解説した書籍の出版準備をできるだけ進め、最終年度までの出版を目指す。一般向けの書籍の執筆・実験の推敲・学術雑誌用の論文執筆・学会発表・一般向けの講演をバランス良くこなしていくことを意識する。
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