研究課題/領域番号 |
22K00587
|
研究種目 |
基盤研究(C)
|
配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分02070:日本語学関連
|
研究機関 | 愛知教育大学 |
研究代表者 |
矢島 正浩 愛知教育大学, 教育学部, 教授 (00230201)
|
研究分担者 |
揚妻 祐樹 藤女子大学, 文学部, 教授 (40231857)
|
研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2026-03-31
|
研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
|
配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2025年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2024年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2023年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2022年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
|
キーワード | 日本語史 / 条件表現史 / 順接条件 / 逆接条件 / 恒常条件 / 音読/黙読 / 言文一致 / 順接/逆接 / 仮定/確定 / 近代文体史 |
研究開始時の研究の概要 |
日本語の条件表現は、日本語文法史の大きなうねりの中で、時制史・モダリティ史・構文史など様々な要素と連動性をもって推移している。その理解の下、条件表現史がどのように、またなぜ起こるのかということを、日本語の文法史の全体像を究明するという方向性から記述する。 また条件表現は、日本語の運用上の位置([話し言葉~書き言葉]等の文体特性・[談話標識~命題構成要素]等の構文特性)に応じて、その本質的な推移の顕現の仕方も異なる。最終的には、その視点を含めた、総合的な条件表現史を編むことを目指す。
|
研究実績の概要 |
本研究は、「日本語史体系内における条件表現史」はどのように実現し、なぜそのように変化をするのかを検討するものである。今期の具体的な取り組みは以下のとおりである。 (1)古代~近世日本語資料において、条件表現に関与する形式がどのように用いられているのか、コーパスを用いて調査を行った。その際、特に注目したのはバやドモ・トモといった条件表示を専らとする形式によるもの以外の表現である。現代語話者の発想から、条件表現の読み込みが可能な表現、中でも準体句が助詞を受ける[連体形+助詞]節を中心に、データを収集した。 (2)(1)に基づき、古代語が、事態や認識を特定の因果関係を接続助詞による条件形で明示する範囲が限定的であること、中世期以降の日本語が、事態や認識相互の因果関係を、それと示す接続助詞で結ぶ方法を顕在化させることを観察した。それを通じて、「文法変化モデル」の核になる発想法の変化に関わって「事態描写優位から表現者把握優位へ」という素案を得た。 (3)(2)の把握に基づき、確定条件史のうちでも特に原因理由史の捉え直しを試みた。表現者の捉え方が前景化する中で、原因理由と認識する範囲も拡張し、中世期には現代と同様の領域をカバーし得る表現形式が生まれたことなどから、条件表現の根源的な変化が起きていることについて考察した。 (4)明治中期以降の小説の文体(言文一致体や雅俗折衷体)に見られる言語的諸相(偶然確定条件・話法・ノダ類・語彙など)を<語り>と関連付けて観察し、音読から黙読へと読書習慣が変化する中、それぞれの書き手の表現意図と文体とのかかわりを論じた。また、現代日本語における表現法の揺らぎ(応答表現・格助詞ガ・オノマトペ)に着目し、表現意識と表現とのかかわりを検討した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
本研究課題のうち、今期に関しては、特に古代語の条件表現の実態を改めて捉え直すことが優先課題であった。この点については、国立国語研究所のコーパスを利用することにより、順調に進めることができている。 本研究課題は、特に条件表現史が、日本語史全体の推移の中で実現していることに注目することに特徴があるものである。必ずしも条件表現を担うことが第一義ではない表現を広く検討対象とすることによって、日本語の本質的な特徴に観察が及び、かねて抱いていた仮説を証明することが実現しつつあり、その点では想定以上の進捗状況にあるといえる。 その一方で、文法史の特定の事象と直接的に関連付けた歴史把握については、一定程度の調査は行えているものの、考察にはまだ及んでいない。ただし、見通しは得られているので、次年度には取りまとめに至ることが十分に見込まれる。 以上のことから、全体としてはおおむね順調に進展している状況にあるとみている。
|
今後の研究の推進方策 |
次年度は、ここまでの成果全体を合わせて総合的な把握を行ってみることによって、十分な調査・分析が行き届いていない項目について、特に集中的に検討を行う予定である。研究代表者はすでに入手済みのデータに基づいた分析が中心となる。研究分担者は、引き続き近代文体史の解明を行う。具体的な内容については以下の(1)~(4)に記すとおりである。(1)~(3)は研究代表者がとりまとめ、著書として公にすることを目指す。(4)は研究分担者が論文の形で取りまとめる予定である。 (1)本年度までに着想を得た「事態描写優位から表現者把握優位へ」という発想法の変化について精密化をはかり、「文法変化モデル」の検討を深化させる。特に時制史との関係からの検討を進める。 (2)(1)に基づいて条件表現史の捉え直しを図る。確定条件、恒常条件に関わる変化を、特に順接と逆接の同調性と非対称性に注目しながら記述を進める。その際、特に日本語史と連動する側面に注目する。 (3)言語位相(談話様式・性差・地域差…に基づく言語層の弁別)に留意した条件表現史の側面については、これまでの成果が、必ずしも一体的な関連付けに向かっていない。総合的把握に向かうよう、不足する検討箇所を明らかにし、闕を埋める。 (4)近代文体史については、個々の作家の活動について観察を継続し、これまで明らかにしてきた知見と合わせて総合的把握をはかる。また、引き続き文体が乱立する「複層性」の中で書き手たちがどのような文体選択をしたのか、それがどう整理されて行くのかを考察する。それと並行して現代日本語の規範からの逸脱する諸現象について観察し、その社会的、心理的背景を分析する。
|