研究課題/領域番号 |
22K00596
|
研究種目 |
基盤研究(C)
|
配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分02070:日本語学関連
|
研究機関 | 京都産業大学 |
研究代表者 |
朴 真完 京都産業大学, 外国語学部, 教授 (90441203)
|
研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
|
研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
|
配分額 *注記 |
3,250千円 (直接経費: 2,500千円、間接経費: 750千円)
2024年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2023年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2022年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
|
キーワード | 朝鮮資料 / 明治期朝鮮資料 / 仮名表記 / 話し言葉 / 対照研究 / 日本語史 / 『新撰日韓会話』 / 『交隣須知』 / 外国資料 / 口語 / 近代日本語 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究では、19世紀末から20世紀初期に刊行された「明治期朝鮮資料」を用いて、近代日本語の様々な言語的特徴(表記・音韻・文法・語彙・方言)と、黎明期であるがゆえに短期間で生じた言語変化の諸相を実証的に示す。 「明治期朝鮮資料」はとくに口頭語本来の対面的な場面での会話を重点的に収録しているため、近代日本語における口語体の特徴やその成立過程を、国内資料の研究にはない新たな視点から明らかにすることができる。
|
研究実績の概要 |
本年度は、まず新しい資料の発掘に努め、ハーバード・イェンチン(Harvard-Yenching)図書館所蔵本『新撰日韓會話』に関する考察を行った。『新撰日韓会話』(1904)の朝鮮語会話文は『新撰朝鮮会話』(1894)の仮名表記をハングルで復元したものである。 陸軍通訳の小泉貞造は『朝鮮語』(1894)に示された諺文表(仮名・ハングル対応表)に従って仮名をハングルに変換した。ハングルの復元文は、当時の実際の発音の現実をよく反映しており、本書の朝鮮語には口蓋音化と鼻音化を経た語形が多数収録されている。また、李範益による校正内容と原文とを比較・分析することによって、19世紀末から20世紀初にかけての日本語と朝鮮語の変遷を窺うことができる。 一方、明治期朝鮮資料の話し言葉における表記と、実際の発音との関係を調べるために、『交隣須知』の‘h@-’(注1)に関する仮名表記の変化を分析した。 2回にわたった改訂の末、‘h@-’は‘heo-’に替えれる傾向が強かった。その類型を分類すると、①無変化形(‘h@-’), ②交替形(‘h@->heo-’), ③既変化形(‘heo-’)の三つに分けられる。初刊本(1881)の‘h@-’は殆ど‘heo-’に改められたため、再刊本(1883)には全体例の83%が‘heo-’と表記される。この交替率は、19世紀以降に刊行された韓国国内文献での様相をはるかに超える結果となっている。 特に動詞の語幹のような語頭(word-initial, 25%)より、派生接尾辞のような語中(word-medial, 75%)でより頻繁に起きる。その結果、‘h@-’と表記された例は、相対的に語頭に多く残存することになる。このような『交隣須知』の表記変化が、19世紀の京畿方言の実際の発音を反映するなら、‘h@-’ における発音の変化は、最初は語中から始まり、その後に語頭まで拡大したと推定できる。
*(注1):母音部@はハングル文字「・」(アレア)を示し、このローマ字転写は福井玲式による。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
日本国内の主要な文献所蔵先を現地調査して、各資料に対する文献学・書誌学的考察を行った。それによって「朝鮮資料」の横断的なデータベースの作成はおおむね計画どおり進んでいる。
|
今後の研究の推進方策 |
令和5年度の研究成果を踏まえ、既作成のデータベースを基に、朝鮮資料の異本間における比較・対照研究を行う。具体的には文法・語彙・文体など全般的な問題まで進み、日本語史において中・近世と近代の口語に関する記述も試みる。
|