研究課題/領域番号 |
22K00600
|
研究種目 |
基盤研究(C)
|
配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分02080:英語学関連
|
研究機関 | 金沢大学 |
研究代表者 |
渋谷 良方 金沢大学, 人文学系, 准教授 (70450690)
|
研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
|
研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
|
配分額 *注記 |
2,210千円 (直接経費: 1,700千円、間接経費: 510千円)
2024年度: 520千円 (直接経費: 400千円、間接経費: 120千円)
2023年度: 520千円 (直接経費: 400千円、間接経費: 120千円)
2022年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
|
キーワード | 分析性 / 総合性 / 世界諸英語研究 / レジスター / 等複雑性の公理 / 認知社会言語学 / コーパス / 話者間変異性 / 世界諸英語 |
研究開始時の研究の概要 |
20世紀の言語学 (特に構造言語学) では、全ての言語が等しく複雑だと考えられた (e.g. Sapir 1921) 。この主張は等複雑性の公理と呼ばれている。この公理の妥当性は、20世紀の間は厳密に検証されることはなかったが、21世紀に入り、様々なコーパスの普及や、洗練された統計的分析手法の開発が進んだことにより、多くの研究者がこの公理の妥当性を検証するようになった。本研究では、世界諸英語 (World Englishes) の観点から、第一言語 (L1) と第二言語 (L2) の英語を含む数多くの英語変種群を対象として、レジスター変異性の観点から、等複雑性の公理の妥当性の実証的検証を行う。
|
研究実績の概要 |
20世紀の言語学 (特に構造言語学) では、全ての言語が等しく複雑であるという主張がなされた。これが等複雑性の公理 (equi-complexity axiom) である。等複雑性の公理では、各言語の文法 (形態素や構文構造など) は、単純なサブシステムと複雑なサブシステムから構成されるが、全体としての複雑さは、全ての言語において同じだと考えられている。21世紀に入り、この公理の妥当性が実証的に検証されるようになった。本研究課題の核心をなす学術的問いは、「等複雑性の公理は、世界諸英語 (World Englishes) においてどの程度当てはまるのか」である。この問いに答えるために、第一言語 (L1) と第二言語 (L2) を含む数々の英語変種群における等複雑性の公理の妥当性を明らかにすることを研究目的としている。 2023年度は、International Corpus of English (ICE) から抽出したデータ分析を行った。5つのL1英語変種と5つのL2英語変種を研究対象とし、各変種における形態統語的特徴の分布を比較した。2022年度に実施したGloWbEデータに対する研究と同様、2023年度に解析したICEデータについても、分析性 (analyticity) と総合性 (syntheticity) には正の相関があることが分かった。これは等複雑性の公理が支持できないものであることを示唆している。なお、ICEは話し言葉と書き言葉の両方をカバーする32個のレジスターの分類がなされている。2023年度に進めた研究では、10の英語変種がレジスター変異性において互いに豊かに異なりうることを、主成分分析や因子分析を用いて確認した。そこでの発見は、各英語変種は、分析性と総合性のコード化を、異なる変数 (要因) による影響を受けて行っているということであった。なお、当該年度では、文法性 (分析性と総合性の統合的概念) についても調べ、L1英語変種とL2英語変種間の相対的距離を捉えた。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2023年度に実施した研究では、International Corpus of English (ICE) から取得したデータの解析とその解釈に取り組んだ。ICEでは32個の細かいレジスター分類がなされており、本研究が目指す分析性と総合性のコード化における変種間のレジスター変異性の研究に最適である。データ収集とその整理に予想以上の時間を要したが、データセットの完成後は解析が順調に進み、重要な知見が次々と得られている。
|
今後の研究の推進方策 |
今後は、2022年度に実施したCorpus of Global Web-Based English (GloWbE) のデータ解析による結果と、2023年度に実施したInternational Corpus of English (ICE) のデータ解析による結果に基づき、等複雑性の公理の妥当性の実証的検証をさらに深めていきたい。なお、余裕があれば、通時的観点を研究に取り入れるために、1150万語の話し言葉コンポーネントを持つ British National Corpus (BNC) 2014を使用することも検討中である。BNCはイギリス英語のデータであり、世界諸英語研究の観点からは問題がないわけではない。しかし、英語の一変種の話し言葉を、文法の複雑性の観点から詳細に論じることは、世界諸英語の話し言葉を収集した大規模コーパスが整備されていない現在においては、 言語の複雑性研究の今後の発展のためには必要な最初のステップだと考えられる。
|