研究課題/領域番号 |
22K00614
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分02080:英語学関連
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研究機関 | 旭川工業高等専門学校 |
研究代表者 |
水野 優子 旭川工業高等専門学校, 人文理数総合科, 准教授 (90435397)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
3,640千円 (直接経費: 2,800千円、間接経費: 840千円)
2024年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2023年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2022年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
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キーワード | 接続詞 / 談話標識 / 複文 / 譲歩 / コーパス / 文法化 / 周辺部 / 従属接続詞 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究は、althoughの意味機能の変遷を記述し、その動機づけを説明することにより、周辺部研究と談話標識の歴史的発達研究に貢献することを目指す。特に以下の4点を目的とする。 1. 現代アメリカ英語を対象とし、発話頭に現れるalthoughの会話における相互作用的機能を明らかにする。 2. 会話で用いられるalthoughを通時的に観察し、その意味機能がどのように変化したかを記述する。 3. althoughの意味機能の歴史的発達について、語用論的・認知的動機づけを考察する。 4. 左の周辺部(発話頭)と右の周辺部(発話末)に現れる言語形式の機能についての仮説をalthoughの事例において検証する。
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研究実績の概要 |
本研究の目的は、(1)現代アメリカ英語を対象とし、発話頭に表れるalthoughの会話における相互作用的機能を明らかにすること、(2)会話で用いられるalthoughを通時的に観察し、その意味・機能がどのように変化したかを記述すること、(3)(2)で明らかにされたalthoughの意味・機能の歴史的発達について、その語用論的・認知的動機づけを考察すること、(4)左の周辺部(発話頭)と右の周辺部(発話末)に表れる言語形式の機能についての仮説を、althoughの事例において検証することである。 2022年度には、研究実施計画に基づき、上記の(1)に取り組んだ。具体的には、電子コーパスThe Corpus of Contemporary American English(COCA)の話し言葉セクションから収集したalthoughの用例を分析した。研究成果は以下の3点にまとめられる。(1)英語の話し言葉において、独立節を導くalthoughの用法にトピックシフト(話題転換)を合図する談話標識的機能があることを示した。(2)althoughの話題転換の用法とその他の用法、すなわち標準譲歩、訂正譲歩、不賛成との関連性を、情報構造とやりとり構造における特徴に注目して分析を行った。その結果、標準譲歩を表す従属接続詞としてのalthoughから、話題転換を表す談話標識としてのalthoughに至るまで連続体を成していことを示した。(3)althoughの用法の変化は、「言語知識は言語の使用の中で揺らぎ定着する動的なものである」(大谷・中山 2020)という使用基盤モデルの考えを支持する例であると考えられることを主張した。 以上の研究成果について、2022年10月30日に北海道大学で開催された日本英文学会北海道支部第67回大会シンポジアム(語学部門)「使用基盤モデルの展開」において発表した。また2023年1月に、北海道支部第67回大会(2022年度)Proceedingsに論文を発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究初年度は、研究計画に従い、本研究の4つの目的のうち、1つめの目的である「現代アメリカ英語を対象とした、発話頭に現れるalthoughの会話における相互作用的機能の解明」に取り組んだ。成果として、英語の話し言葉において、独立節を導くalthoughの用法にトピックシフト(話題転換)を合図する談話標識的機能があることを実証的に示した。また、althoughのそれ以外の用法である標準譲歩、訂正譲歩、不賛成についても調査を行った。その結果、訂正譲歩と不賛成、および不賛成と話題転換の間に中間的な用例が観察され、標準譲歩を表す従属接続詞としてのalthoughから話題転換を表す談話標識としてのalthoughに至るまで、連続体を成していることを示した。さらに、この研究成果により、次年度に計画している「会話で用いられるalthoughの通時的観察と、その意味・機能がどのように変化したかの記述」に取り組む準備を整えることができた。以上の理由から、「おおむね順調に進展している」と判断した。
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今後の研究の推進方策 |
2023年度には、まず本研究の2つ目の目的である「会話で用いられるalthoughの通時的観察と、その意味・機能がどのように変化したかの記述」に取り組む。データソースとして、The Corpus of Historical American English (COHA)を用い、小説の会話部分からalthoughの用例を収集する。そして年代ごとに、従属接続詞としてのalthoughを含めた総数と、発話頭に現れるalthoughの用例数をカウントし、談話標識的機能を持つalthoughが歴史的にどのように発達したかを明らかにする。 次に、3つ目の目的である「althoughの意味・機能の歴史的発達に関する、語用論的・認知的動機づけの考察」に取り組む。発話頭や発話末は、文法化、主観化、間主観化と呼ばれる言語変化がよく起きる場所であると言われている(小野寺 2017)。本研究では、発話頭のalthoughの談話標識的機能の発達が、文法化、主観化、間主観化のプロセスに当たるかどうかを、コーパスから収集した実例の分析に基づいて考察する。 2024年度には、4つ目の目的である「左の周辺部(発話頭)と右の周辺部(発話末)に現れる言語形式の機能についての仮説の検証」に取り組む。発話頭に現れるalthoughの談話標識的な意味や用法を、左の周辺部に現れる要素が持つとされる機能の観点から考察を行う予定である。
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