研究課題/領域番号 |
22K00619
|
研究種目 |
基盤研究(C)
|
配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分02080:英語学関連
|
研究機関 | 東京大学 (2023) 大阪大学 (2022) |
研究代表者 |
三浦 あゆみ 東京大学, 大学院総合文化研究科, 准教授 (00706830)
|
研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
|
研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
|
配分額 *注記 |
2,860千円 (直接経費: 2,200千円、間接経費: 660千円)
2024年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2023年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2022年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
|
キーワード | 中英語 / ラテン語 / 翻訳 / 言語接触 / ウィクリフ訳聖書 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究では、14世紀末にラテン語から英訳されたウィクリフ訳聖書における語彙や文法が原典での語彙や文法からどのような影響を受けているのか、当時および後世の英語の語彙・文法体系にどの程度影響を与えたのかを、原典との詳細な比較・分析を通して実証的に調査する。本研究を通して、翻訳による英語・ラテン語間の言語接触の長期的な結果について新たな知見をもたらしつつ、最近の英語史研究でのラテン語語法受容に関する議論についても再考する。
|
研究実績の概要 |
本研究は、14世紀末にラテン語のウルガタ聖書から英訳されたウィクリフ訳聖書(Wycliffite Bible; WB)における語彙・文法が原典での語彙・文法から具体的にどのような影響を受けているのか、また、当時および後世の英語の語彙・文法体系にどの程度影響を与えたのかという共時的・通時的課題に着手するものである。 当該年度は、昨年度に続いてWBの言語研究として重要な先行文献を収集・読み進め、WBの言語に関する基本的な理解を深めつつ、WBで初出あるいは特徴的とされる語彙・文法項目の抽出・分析を行った。オンラインのOED(Oxford English Dictionary)を検索し、項目をリストアップした結果、さらなる調査対象のトピックが以下のとおり特定された:(1) abridgeとabbreviateの違い(前者はWBが初出、後者はラテン語原典で使用、15世紀初頭に初出)、(2) accuserとchallengerの違い(両者ともWBが初出)、(3) believableとcredibleの違い(前者はWBが初出、後者はラテン語原典で使用、WBと同時代のGowerで初出)、(4) farとlongの捉え方の違い(afarはWBで初出、ラテン語原典ではlongにあたる語が使用)、(5) -in-lawの誕生と普及、(6) 接尾辞-mealの拡散・消失の歴史(WBで新しい派生語が複数見られる)、(7) 学びと教えに関する語彙、(8) 単数のthey(特にeachとの照応)。 以上のうち(1)~(3)についてケーススタディとして年度末までにワーキングペーパーを書き上げ、(5)については国際学会での口頭発表のための要旨を提出した。その他のトピックも、中英語期におけるラテン語語彙・文法の受容という、本研究課題のより大きな枠組みにおいて新たな知見と実証的な裏付けが期待される。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当該年度は、実施期間を3年とする本研究の2年目にあたり、開始前の計画では、(1) 初年度で作成し終えたデータベースの分析・修正・拡張、(2) 関連する書籍や文献の追加入手、(3) 国内外の学会で途中成果の発表を予定していた。所属機関の変更に伴う研究環境の大きな変化、突然のシンポジウム招待発表に伴う準備・論文執筆に膨大な時間を費やしたことなどにより、(3) の実現に至らなかったことが悔やまれる。一方で、(1)と(2)については概ね完了し、今後の当面の作業に必要なデータ抽出と分析を進めることができたため、初年度での大きな遅れをある程度は取り戻せたと考えている。また、年度末には上記のケーススタディの成果をしたためたワーキングペーパーの草稿を脱稿し、国際学会での口頭発表の要旨も提出した。
|
今後の研究の推進方策 |
研究期間を1年間延長することを前提としつつ、口頭発表および論文執筆によって成果を段階的に公開する。具体的には、まず昨年度末に脱稿したワーキングペーパーを前所属機関の共同研究プロジェクト成果報告書に投稿する。本報告書はオープン・アクセスで、今年度の前半には公開される予定となっている。また、9月の国際学会での発表の準備を進める。過年度に口頭発表を行った「必要」を表す動詞群の競合関係とラテン語の影響に関する論文を年度末までに書き上げ、中世英語英文学関係の国際誌に投稿することも目指したい。これらの発表・論文執筆と並行して、昨年度である程度完了したデータ分析も継続・拡張し、次年度以降の新たな発表の準備にも着手したい。
|