研究課題/領域番号 |
22K00643
|
研究種目 |
基盤研究(C)
|
配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分02090:日本語教育関連
|
研究機関 | 国際医療福祉大学 |
研究代表者 |
永射 紀子 国際医療福祉大学, 総合教育センター, 講師 (70786467)
|
研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
|
研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
|
配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2024年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2023年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2022年度: 1,950千円 (直接経費: 1,500千円、間接経費: 450千円)
|
キーワード | 医学部留学生 / 聞き手意識 / 情報伝達力 / 振返り / わかりやすさ / メタ言語意識 / 医療コミュニケーション / 他者視点 / 文脈理解 / 留学生 / 日本語教育 |
研究開始時の研究の概要 |
医療者として求められるコミュニケーション力を考えるときに重要なのは、医療場面という限定的な場面で使われる語の理解、運用スキルではなく、その文脈に合った適切な表現の選択力、求められている情報を察知する注意力である。そのためには、コミュニケーションが行われる場の文脈理解が第一に求められるが、留学生にはその文脈理解が難しいと言われている。そこで本研究では、文脈を理解するための「他者視点」に注目し、コミュニケーション場面における課題を抽出する。本研究の成果は、医学部留学生の専門学習を支える基礎日本語力の育成に役立つのみならず、医療者を目指す留学生全般のコミュニケーション教育にも適用できるものである。
|
研究実績の概要 |
本研究の目的は、医学部留学生が、コミュニケーションにおいて他者視点を獲得するために必要な要素が何かを、医療、日本語コミュニケーション研究に照らし、明らかにしたのち、それらを項目(can-do)化すること、そして項目化した内容を、授業実践を通して検証することである。 研究実施計画では、文献レビューおよび獲得すべき日本語力を項目化することであったが、本研究が対象とする中級レベルの日本語学習者が獲得すべき他者視点を絞り込むためには、1.本研究におけるコミュニケーションの定義、2.「他者視点」が具体的に何を表すかを明確にする必要があった。そのため、本年度は、本研究で述べるコミュニケーションの定義を第一に行った。次に、「他者視点」を能力として測定するため、それを説明する具体的内容を整理した。 コミュニケーションの定義では、先行研究のほか、他者によるコミュニケーション評価の観点を探るため、勤務校にて実際の医療面接試験の場に、2名の研究協力者とともにオブザーバーとして参加した。ここでの観察記録および先行研究レビューの結果を踏まえ、本研究におけるコミュニケーションが何であるかを具体化できた。また、「他者視点」を説明する用語の整理では、文献レビューの結果を研究協力者と共有し、内容を精査した。これにより、本研究におけるコミュニケーションの枠組み、さらに、何を「他者視点」として観察対象とするかが明確になった。これらをもとに、研究の実施計画を再構成し、同時に授業実践も計画立案した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
項目化にあたり、当初予定していなかった用語の定義、項目の具体化が発生し、これらを明確にするための調査、分析を行うことになった。研究協力者への研究計画の説明で合計4回の事前打ち合わせ、その後の授業観察レポートの分析、研究計画の再構成などを経て、現在、大枠としての項目は抽出できたものの、それを授業実践で用いるための具体的記述には至っていない状況である。しかし、項目化のためのパイロットデータ収集はできている。これは、それぞれ同じ手順を用い、同じチェックリストで評価した中級レベル留学生の作文データ2回分である。本年度8月から12月までの授業期間の最初と最後の授業で課したタスクで収集した。評価の際に使用したチェックリストには、他者配慮の文作成にかかわるチェック項目が4つ設けられており、明示的な指導ではないものの、他者視点の意識化を図った点で、通時的変化を観察可能である。現在、このデータを研究協力者とともに分析し、項目の抽出を行っている。 以上により、当初の計画通りに進んでいない点、研究成果の公開ができていない点などから達成度を判断した。しかし、用語の定義、項目の具体化により、研究計画が当初作成したものよりも具体的かつ実行可能なものへ再構成できた。さらに、授業観察で協力いただいた宮崎大学南部准教授にも研究分担者として本研究に加わってもらうことになり、授業実践におけるパートナーの獲得ができたことで、今後の研究が滞りなく進められる環境を整えられた。
|
今後の研究の推進方策 |
今後は、分担者、協力者と連携して、パイロットデータを用いた他者にわかりやすい情報伝達のための項目(can-do)化をし、授業実践前に指導方法、データ収集のためのタスクの設計、内容の分析および、質問票の内容設定を行い、得られた結果の公開を行う予定である。 【本年度からの検討課題】本研究におけるコミュニケーションの定義に基づいて、引き続き、達成目標の項目化に取り組み、項目が適切であるかの検証を進めていく予定である。 【来年度に取り組む課題】来年度は、項目を用いたタスクの設計に着手し、達成度評価の基準、それをもとにした指導内容を決定する。授業実践は2回を予定しており、初回実践の振り返り、フィードバックを経て2回目に臨み、対象者とパートナーのコミュニケーションが、項目の提示によって2回目のアウトプットで変化するかを観察し、指導の効果を検証する予定である。 効果の検証に関しては、達成度評価及び言語データのほか、対象者の意識調査も実施し、対象者自身による認識の変化も分析対象とする。指導、あるいは項目提示による効果を明らかにするためには、対象者の意識的な活動、例えばストラテジーの意識的な使用も分析の対象とする必要がある。そのため、意識調査およびストラテジー使用調査の質問票を作成する。現在、本研究がかかわる分野として、コミュニケーション研究、教育工学研究、言語習得研究が挙げられる。そのため関係学会等へ参加し、情報収集しながら、本研究のデータ分析の妥当性・信頼性を検討する。分析結果がまとまった段階で、関係学会(日本語教育学会、日本教育工学会など)での発表、論文投稿による研究結果の公表をし、専門家によるフィードバックを得てさらに研究をブラッシュアップしていく。
|