研究課題/領域番号 |
22K00650
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分02090:日本語教育関連
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研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
太田 裕子 早稲田大学, グローバルエデュケーションセンター, 准教授 (50434353)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
2,730千円 (直接経費: 2,100千円、間接経費: 630千円)
2024年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2023年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2022年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
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キーワード | 「移動する子ども」 / シュタイナー学校 / 言語教育 / 多様な個性を尊重する教育環境 / 教師の意識と実践 / 卒業生の語り / 親の語り / 複言語 / シュタイナー教育 / ホリスティックな言語教育 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究の目的は、言語を習得途上にある「移動する子ども」の全人的成長にとっての、ホリスティックな言語教育の意義と課題を探求することである。ホリスティックな言語教育とは、すべての教科、学校生活全体をことばの教育の実践と捉える立場を指す。その実践事例として、本研究ではシュタイナー教育に注目する。シュタイナー教育は、すべての教育において言語を非常に重視しているためである。文献および教師へのインタビューから、シュタイナー教育のカリキュラムと授業実践を言語教育の視点から分析する。また、卒業生と親へのインタビューから、「移動する子ども」にとってのホリスティックな言語教育の意義と課題を考察する。
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研究実績の概要 |
2022年度は、過去に収集したデータの分析・発表と、新たなデータ収集、シュタイナー学校における言語教育に関連する文献・情報収集を行った。 まず、2021年度までに行った教師へのインタビューに基づく研究成果を公表した。2021年度に、日本国内のシュタイナー学校7校中5校の教師に対して、インタビューを行った。インタビュー・データに基づく研究成果を、口頭発表した。太田裕子(2022年8月24日)「『移動する子ども』の多様な個性が尊重される教育環境づくり―日本のシュタイナー学校教師の意識と実践からの示唆―」日本教育学会第81回大会自由研究発表(オンライン) 次に、親へのインタビューに基づく研究成果を論文の形で公表した。太田裕子(2022)「複言語で育ち、複言語で子育てする「移動する子ども」の「ことばの実践」と意味―世代を超えて継承したもの、変化したもの―」『ジャーナル「移動する子どもたち」―ことばの教育を創発する―』13号、4 - 37 新たなデータ収集は、日本国内のシュタイナー学校7校中の2校の教師に対するインタビューと、「移動する子ども」の親に対するインタビュー調査を行った。 文献・情報収集は、シュタイナー教育、複言語・複言語主義、Translanguaging、リテラシー教育、Family Language Policy等に関連する文献を収集した。また、2023年3月には次の二つのセミナーに参加し、貴重な情報を得た。1)2023年3月13日、第10回JaF-DaFフォーラム基調講演・ワークショップ「人間教育としての外国語の授業―シュタイナー教育の現場からー」講師:楠部知佐子(ハノーファー大学)、ハンブルグ大学にて、2)2023年3月25~26日、国際研究集会2023「複言語主義の多元性をめぐって」京都大学にて。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
データ収集と並行して、データ分析・公表を行うことができた。新たに収集したデータの数は、予定よりも少ないが、一つ一つのデータの個別性を重視し、質的に分析を進めているため、既に収集したデータの分析・公表を丁寧に進めることを優先した。また、文献、フォーラム、研究集会への参加を通して、シュタイナー学校における言語教育、教育理念と実践を説明する上で有益な理論に関する知見を得られた。 一方、シュタイナー教育のカリキュラムや理念全般に関する文献の整理・分析は当初の予定に比べると遅れている。今後は、収集したデータを、シュタイナー教育に関する先行研究や理念、カリキュラムとの関係から分析することが課題である。
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今後の研究の推進方策 |
第一に、シュタイナー教育の理論と実践に関する先行研究、カリキュラムに関する文献の収集と整理を進め、その特徴と概要をまとめる。そのうえで、カリキュラムにおいて、複数言語間を日常的に「移動する子ども」の、複数言語・文化、アイデンティティの成長を支える要素、阻害する要素を探る。 第二に、日本国内のシュタイナー学校を卒業した「移動する子ども」本人、在校生・卒業生の親へのインタビュー調査を進める。より多様な事例を集めることを目指す。 第三に、海外のシュタイナー学校を訪問し、教師、親へのインタビュー調査を行う。2023年度には、シドニーのシュタイナー学校を訪問する計画である。2024年には、アメリカにあるシュタイナー学校を訪問する予定である。多様な言語・文化背景を持つ生徒が集まるシュタイナー学校において、どのような教育環境が作られ、どのような教育実践が行われているのか、また複数言語間を「移動する子ども」たちはどのような経験をしているのかを、探求する。 第四に、上記の研究結果を総合的に分析し、関連づけ、「移動する子ども」の多様な個性を尊重する教育環境づくりに有益な要素を見出したい。
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