研究課題/領域番号 |
22K00666
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分02090:日本語教育関連
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
中井 好男 大阪大学, 大学院人間科学研究科, 准教授 (60709559)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
3,770千円 (直接経費: 2,900千円、間接経費: 870千円)
2024年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2023年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2022年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
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キーワード | マイノリティ / ディスアビリティ インクルージョン / インターセクショナリティ / 共生社会 / オートエスノグラフィー / ディスアビリティ / インクルージョン / 共生 / ビジュアル・オートエスノグラフィー / コーダ / ナラティブ・アプローチ |
研究開始時の研究の概要 |
本研究は「集団社会モデル(田門, 2012)」としての日本語教育を実現するための基礎的研究である。コーダ(Children of Deaf Adults)という見えないマイノリティとしての視点を持つ研究代表者が、様々な言語的文化的マイノリティとの対話をもとに協働的エスノグラフィを行い、マイノリティの社会参加を集団社会モデルで捉え直すことを目指す。そして、その結果をもとに、日本語教育の実践者とトーキングショップを実施することで、日本社会を生きるマイノリティの対等な社会的包摂を可能にするインクルーシブな日本語教育の方法を探求する。
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研究実績の概要 |
本研究は、コーダ(Children of Deaf Adults)としての研究代表者の経験と視点をもとに、日本社会における言語的文化的マイノリティの課題を洗い出すとともに、公正な社会的包摂を実現するための日本語教育のあり方を模索するものである。 令和5年度は、令和4年度に引き続き、次の3点を予定していた。①マイノリティと協働的オートエスノグラフィーを行うとともに、研究代表者自身のオートエスノグラフィを更新する。②作成されたオートエスノグラフィーを比較、検討することで、言語的文化的マイノリティの社会参加に潜む課題について考察する。③上記のオートエスノグラフィーを題材に日本語教育実践者と対話を行い、日本語教育の課題を検討する。 令和5年度に得られた成果は次のとおりである。まず、外国人研究者や台湾華僑3世、国際児を持つ親、SODA(Siblings of Deaf Adults)との対話を通して、「障害」と「非障害」の境界を生きる障害者家族として生きる研究代表者が持つマイノリティへの視点や障害観の記述を試みることができた。また、マジョリティとマイノリティの区別を問わず、人々がともに経験を共有し、社会的課題を外在化する活動を行うことによって、より公正な社会参加を実現するために必要な人的交流や施策など、多様なレベルでの議論を行うこともできた。さらに、日本語教育実践に関連する問題としては、自己表現活動としての自己紹介活動が持つ暴力性について指摘し、議論することができた。令和5年度は研究者や実践家を交えたシンポジウム、オートエスノグラフィーの記述を目指したワークショップ、手話カフェや障害者との俳句会といったマイノリティとの接触の機会を設けたが、これらの活動は参加者に対して自身の文脈依存的なマジョリティ性やマイノリティ性への気づきと自己変容をもたらすきっかけになることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
前年度はマイノリティと対話を通してオートエスノグラフィーを作成するための研究倫理審査が受けられなかったことや心身の不調から研究が進展しなかった。さらに、今年度は所属が変わり、新しい環境に順応することを優先したため、研究活動の時間の確保に多少の労力を要することになった。しかし、多くの研究者との連携やご協力を得ることができたおかげで、前年度に目標としていたことを今年度に実施することができた。シンポジウムをはじめ、多くのワークショップを通した対話の機会を設けたが、これは前年度に予定していたことに加えて、新たに開始し現在も継続している研究活動も含んでおり、今年度はペースを取り戻し、概ね順調に進めることができたと考えている。
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今後の研究の推進方策 |
令和6年度は、令和5年度に引き続き、オートエスノグラフィーの記述とマイノリティとの対話を進める予定である。①多様な人々との対話を通した協働的オートエスノグラフィーを行うとともに、研究代表者自身のオートエスノグラフィを更新する。②作成されたオートエスノグラフィーの比較検討を通して、あるいは、オートエスノグラフィーや経験を日本語教育の研究者や実践家と共有する機会を設けることで、言語的文化的マイノリティの社会参加に潜む課題について考察するとともにその解決に向けた示唆を導き出す。特に、今年度課題として浮き彫りになった自己紹介を中心とする自己表現活動が孕む危険性についてさらなる分析を進め、日本語教育が持つ暴力性について検討していく。さらに、③自身のオートエスノグラフィーの作成や②の対話活動において、多様な表現形式を採用することで、前年度からの検討事項であるオートエスノグラフィーの表現のあり方について探っていく。そして、その中で、オートエスノグラフィーが持つマイノリティ教育の可能性と教師教育の可能性についても分析し、教育方法としてのオートエスノグラフィーの可能性について考察する予定である。
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