研究課題/領域番号 |
22K00678
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分02090:日本語教育関連
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研究機関 | 立命館大学 |
研究代表者 |
平田 裕 立命館大学, 言語教育情報研究科, 教授 (00340753)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2024年度: 260千円 (直接経費: 200千円、間接経費: 60千円)
2023年度: 520千円 (直接経費: 400千円、間接経費: 120千円)
2022年度: 260千円 (直接経費: 200千円、間接経費: 60千円)
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キーワード | 日本語学習者の脳活動 / 筆記テストと会話 / 近似性と相違性 / fNIRS / 筆記テスト / 日本語会話 |
研究開始時の研究の概要 |
日本語教育では、教育成果を検証する方法として筆記テストに頼っている部分が大きい。筆記テストを会話力向上やその評価に有効に使うことができれば、教育現場でのメリットは大きいと言える。 本研究では、日本語学習者に数種類の筆記テストと日本語会話のタスクをやってもらい、それぞれのタスクに対して脳波測定と脳イメージングの2種類の脳実験を行う。脳活動の質的・量的な近似性・相違性という新しい視点から、会話力の推定(評価)につながる筆記テストの形式について研究する。特に、同一人物に対して複数回の実験を行うことにより、問題の難易度の影響や個人内差についての知見を深めることを目的とする。
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研究実績の概要 |
本研究は、2022年度から2024年度までの予定で科研費の補助を得て継続しているものである。2022年度までの実績としては、(1)中級後半の2名に関しては、トレンドグラフの分析の結果からも、相関分析の結果からも、実験協力者の間で脳の働きに一貫した傾向は見られず、個人差が大きいことが確認された(2)fNIRSの酸素化ヘモグロビンデータと脱酸素化ヘモグロビンデータのどちらを指標にすべきかという点では、引き続き脱酸素化ヘモグロビンデータに注目する意義が確認できた。(3)弱い左利きと判断される学習者の脳活動を検証した結果、この実験協力者はどのタスクでも左脳・右脳のどちらかが明確に優位ではない(4)全体的に日本語会話時の方が母語会話時よりも脳の活性化度が低く、左脳・右脳の差も顕著ではない(5)脳の活性化度だけで判断すると、筆記タスクの中では並べ替えタスクが脳を一番活性化し、会話時の脳の活性化度に近いと考えられる、等の知見が得られた。 2023年度は、弱い左利きの学習者に関する研究結果を論文として発表した。また、本研究で得られたこれまでの知見は、各実験協力者に対して1回ずつ行った実験結果によるものであるが、2023年度は、約1か月の期間に渡って各実験協力者に対して4回の実験を行ったデータから、実験協力者の個人内比較に着目した分析を行った。その結果、(1)どの回においても会話タスクの方が筆記タスクより脳の活性化度が高いという傾向を示す。(2)同一形式のタスクでも脳の活性化パターンは個人内でバラツキがある。(3)やはり脱酸素化ヘモグロビンデータに注目した方がよいと考えられる場合がある、等の知見が得られた。これらの研究結果を国際学会での発表に応募して採択され、2024年8月の学会で発表する予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
研究全体としては、新型コロナ感染症の影響を2020年度と2021年度に大きく受けた。2020年度と2021年度の2年間は、①海外から渡日する留学生(研究対象とする日本語学習者)が激減し、②安易に脳実験参加の募集をできないという状況であった。2022年度は新型コロナ感染症の状況が改善し、これまで以上の実験数を消化できた。 脳実験データの分析は全体の工程数が多く、膨大な時間がかかる。例えば、fNIRS機からExcelで扱えるデータに分割して落とすにしても、fNIRS機の利用可能時間や諸条件によって時間がかかることになっている。そのため、全体の進捗として「やや遅れている」とする。研究を進める上での大きな障害がある訳ではないので、個人内での差に注目した実験データの分析作業を進めているところである。
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今後の研究の推進方策 |
今回のプロジェクトは、被験者の個人差(母語、日本語力など)、筆記テスト形式、テストの内容と難易度、会話のトピック、脳実験の測定部位などの変数の違いによって脳活動の近似性・相違性がどのように違ってくるのかというところまで、より詳細に把握することを目的としている。分析作業が「やや遅れている」という状況ではあるが、研究を進める上での大きな障害がある訳ではないので、引き続き個人内での差に注目した実験データの分析作業を進める。2024年8月の国際学会で分析結果を発表するが、その内容も含め、研究結果を論文としてまとめて発表する。
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