研究課題/領域番号 |
22K00696
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分02100:外国語教育関連
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研究機関 | 近畿大学 |
研究代表者 |
濱本 秀樹 近畿大学, その他部局等, 名誉教授 (70258127)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
2024年度: 520千円 (直接経費: 400千円、間接経費: 120千円)
2023年度: 520千円 (直接経費: 400千円、間接経費: 120千円)
2022年度: 520千円 (直接経費: 400千円、間接経費: 120千円)
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キーワード | 認知意味論 / 英語結果構文 / 因果関係理論 / 身体化認知 / 英語仮定法 / 結果構文 / 英文法 / 文法のイメージスキーマ化 / イメージスキーマ / 英語教授法 |
研究開始時の研究の概要 |
L2の学習に関しての既存の研究結果として、L2習得には「心の理論」が必要であり、仮設形成的な推論も関与することが分かっている。またL2の文法学習には身体化認知経験が必要であることもほぼ研究者間で共通理解になっている。さらに身体化認知には意味の中核をイメージスキーマ化したものの提示と自己の運動経験が有効であるとの見解もかなりの支持を得ている。この研究ではこれらの基盤の上に、英語の語彙や構文などの意味をイメージスキーマ化して抽出し、視覚化する。そしてそれを学習者の身体化認知経験により学習し、英語の諸項目の理解、記憶、再生に対するこの方法、つまりイメージスキーマ⇒身体化経験効果を統計的に検証する。
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研究実績の概要 |
本研究は英文法を明確化するためにイメージスキーマとして記述することを第一の段階とし、そのイメージスキーマを使って英語の文法教育を改善することを第二の段階とする。第一段階のイメージスキーマ化とは文法項目(例えば仮定法、現在完了)の基盤にある概念の根本的意味の構造を抽出し視覚化することである。 22年度は「仮定法」について考察し、取り出したイメージスキーマを文法教育につかえるように工夫した。23年度は「英語の結果構文」に特に注目した。S+V+O+Rs (Rsは結果状態)という基本構造こそ共通するものの、英語では動詞のV位置には他動詞だけでなく自動詞と考えられものも使われる。これは英語特有のものである。日本語にも結果構文はあるもののもっと限定的な範囲でしか使えない。このため日本語話者にって英語の結果構文は時には意味が理解できないこともある。John drank the pub dryやJohn drank Tom under the tableなどという表現ではどのような状況を描写しているのかは語句の意味を合成的に組み上げてもたどり着けない。また日本語話者が英語の結果構文を使って場面を描写する際にも困難が生じる。例えば「そのジョギング走者達は舗道が薄くなるほど走った」という「ほど」を使う程度表現が、英語では 結果表現The joggers ran the pavement thinと表現可能である。これなどは日英語で因果関係の把握が異なることを学習者に認識させて初めてこの構文についての日英語の橋渡しができるのである。未だ極めて初歩的な段階ではあるが、実際に学習者に結果構文の認知図式を示したうえで英語の結果構文の解釈を判断させたところ理解が幾分進むことが確認できた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
「英文法のイメージスキーマ化と身体化認知に基づく英語教授法の提案」というテーマのもとで幾つかの文法項目をとりあげ、意味論的に分析しイメージスキーマとして意味の核心部分を抽出し、さらに教授法としてまとめその有効性をみるというプロセスで研究を続けてきた。仮定法については概ね計画通りに進むことができた。イメージスキーマ化とは母語話者が持っていると推定される文法項目の認知処理プロセスを視覚化することであるが、これにはかなりの技術的な困難を伴う。まず文法項目の精密なカテゴリー化が必要である。それからそのカテゴリーを総括できる認知構造を発見しなければならない。しかし英語の結果構文はその背後にある因果関係の捉え方が複雑であり、カテゴリー化には最新の因果関係理論を理解する必要があった。これに多大な時間がかかったことでイメージスキーマ化が遅れているのが現状である。結果構文のカテゴリー化と因果関係理論との対応関係は23年度の研究でようやく明確化してきたので今後はこの得られた知見に基づき、第二の段階、つまりイメージスキーマの教授法への適用に取り組むつもりである。
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今後の研究の推進方策 |
この研究を続けていく過程である新しい考え方が生まれてきた。身体化を通して第二外国語を理解することは、学習者の認知機能を刺激し、いわゆる認知予備能(cognitive reserve) を強化することにほかならないのではないか、という見方である。学習者が身体化経験を通してイメージスキーマを構築することは明らかに認知能力を刺激し、これはまだ仮説の段階ではあるが、認知症(dementia)などの認知機能低下に関係する症状の防止や発現の遅延を期待できるのではないかと考えられる。24年度は教授法の構築に一層取り組むが、それと並行して、学習者がイメージスキーマを学ぶことによる認知予備能強化の効果についても研究を広げていきたいと考えている。
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