研究課題/領域番号 |
22K00741
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分02100:外国語教育関連
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研究機関 | 青山学院大学 |
研究代表者 |
アレン・玉井 光江 青山学院大学, 文学部, 教授 (50188413)
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研究分担者 |
本田 勝久 千葉大学, 教育学部, 教授 (60362745)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2024年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2023年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
2022年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
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キーワード | 小学校英語 / 社会的・情動的スキル / 英語のスキル / エンゲージメント / ストーリーテリング / ジョイントストーリーテリング / 学びの力 / 4技能統合 |
研究開始時の研究の概要 |
外国語学習においても意味のある文脈の中で言語に接することが重要であり、学習者は文脈の中で多量の言語に触れ、曖昧性に耐えながら、言語を理解していく力を伸ばしていく。そのような観点からストーリーテリングは大変魅力的な活動である。本研究はストーリーテリングとそれに関連する活動が児童の言語スキルと学習に対する社会的・情意的スキルの発達にどのように影響するのかを検証することを目的としている。3年間実際に公立小学校でストーリーテリングと関連した活動を行い、その間量的、および質的にデータを収集し、その成果を検証する。
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研究実績の概要 |
本研究の目的は公立小学校で実践しているストーリーテリング関連活動が児童の英語のスキルおよび社会的・情意的スキルの発達にどのように影響しているのかを検証することである。今年度、代表者と分担者は主に本テーマに関連する文献研究を行った。ストーリーテリングを通して,学習者は音声言語そして語彙力を伸ばすと言われている (Write, 1995; Cameron, 2001等)。ストーリーテリングと読み聞かせの効果を比較する研究(Isabell et. al., 2004等)では、ストーリーテリングがより優れた成果を出したと報告されている。また言語能力を高めるだけでなく学習者の社会的および情意的なスキルを伸ばすと報告している研究もある(Ellis, 1997; Kim 1999; Collins,1999; Isbellその他, 2015等)。 代表者は外国語教育におけるストーリーテリングの有効性を再認識し、その知見を基に小学生用のストーリーブックを開発した。また児童がストーリーテリング関連活動にどのように関わっているのかを検証するため、研究協力者とともにエンゲージメント理論(Wang et al.,2016)に基づきアンケートを作成し、高学年(5年生87名,6年生82名,合計169名)に実施し、その結果を日本児童英語教育学会の全国大会で共同発表した。またストーリーに関連した活動をどのように公立小学校で展開しているかについてはAsia TEFL国際学会で単独で発表した。一方、研究分担者はストーリーテリングが盛んにおこなわれている台北市の英語教育を視察し、その様子を研究会で報告した。 さらに、研究代表者が開発したストーリーテリングプログラムを実施している小学校の英語の専科教員や学級担任とは定期的に話し合いを持ち、ストーリーテリングの効果について議論した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2022年度は文献研究と高学年児童へのアンケートを実施した。エンゲージメント理論に基づいたアンケートでは、活動に対する児童のエンゲージメントを認知, 行動, 情意, 社会的な4つの側面から測定した。アンケートは両学年とも十分な信頼度係数を示し、それぞれの側面には中位の相関がみられた。また、5年生と6年生の間では、情意的エンゲージメントのみ統計的な差があることがわかった。また、アンケ―トとともにリスニングテストも行い、重回帰分析を行った結果、情意エンゲージメントのみがリスニング能力を説明する要因であることがわかり、情意エンゲージメントの重要性を指摘する結果となった。 また、ストーリーテリングを実施している英語専科教員や学級担任とのミーティングでは、専科教員および学級担任からストーリーテリングやJoint Storytellingが児童の英語のスキルを伸ばすだけではなく彼らの情動を動かしているという意見が多く出された。この3年間、コロナ禍でのマスク着用のため、それ以前と比べると音声が伝わりにくくなっている。つまり、児童は肉声を聞く機会が減り、教師は英語の音声指導を十分にすることができなくなった。そのような状況でも物語を使ったstorytellingおよびjoint storytellingでは、児童は物語の持つ世界観に浸り、そこから想像力また共感する力を育てており、このことを発見した教員が多くいた。特にインタビュー研究に参加いただいた学級担任からは、適応障害のある児童2名がJoint Storytellingを通して成長していった過程を聞くことができた。Joint Storytellingを通して皆で声をそろえて英語を言うことから、これらの児童は馴染めなかったクラスの中で自分を位置づけ、クラスメートおよび教員とともに成長することを経験したと教員は語った。
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今後の研究の推進方策 |
2023度も研究分担者および研究協力者とともにストーリーテリング関連活動を通して育つ児童の「学ぶ力」について研究を続ける。2022年度実施したエンゲージメントを測るアンケートは質問項目が多く、ストーリーテリング関連の活動を聞くだけで15分以上の時間がかかった。実際の授業は,①リタラシー指導,②教科書指導,そして③ストーリーテリング関連活動と、3つの大きな活動を行っている。Lucarevschi(2016)が指摘するように他の授業活動と比べての効果を論じる必要があると考えるため、新しくアンケートを作成し、同じく高学年の児童に実施する予定である。また、2022年度ではリスニング能力だけを測定したが、今年度はできれば他の能力も測定し、ストーリーテリング関連活動との関係を検証していく予定である。 さらに学期末または学年末に行うアンケート以外に物語の世界観を感じることができる指導を意識的に授業に入れた場合を検証したい。そのため毎回の授業で使用するプリント教材の中に1~2問、物語を自分のものとする(personalization)過程を促進する質問を準備し、それに対する児童の反応を記録する予定である。 また、ストーリーテリングを実施している英語専科教員や学級担任との定期的なミーティングは引き続き行い、児童の情動を動かすことができるストーリーテリング関連の活動のありかたについて考えていきたい。
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