研究課題/領域番号 |
22K00746
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分02100:外国語教育関連
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研究機関 | 松本大学 |
研究代表者 |
藤原 隆史 松本大学, 教育学部, 准教授 (10824097)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
2025年度: 260千円 (直接経費: 200千円、間接経費: 60千円)
2024年度: 260千円 (直接経費: 200千円、間接経費: 60千円)
2023年度: 260千円 (直接経費: 200千円、間接経費: 60千円)
2022年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
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キーワード | 前置詞in / 前置詞at / NPN構文 / 生成AI / サーストン法 / 相対的心理的距離 / イメージスキーマ / 前置詞 / 認知意味論 |
研究開始時の研究の概要 |
これまでの認知意味論研究において、英語の前置詞は主に研究者による直観や内省を基本とした分析が行われてきた。しかし、イメージスキーマの実在性と各意味用法の関係がどのようになっているかを実証的に確かめた研究は多くない。本研究は、英語の前置詞at, on, inについて、それぞれの前置詞のイメージスキーマと中心的意味用法及び周辺的意味用法に着目し、各用法がどの程度イメージスキーマと心理的に一致しているかを検証する。
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研究実績の概要 |
2023年度の研究実績として、英語前置詞in及びatの意味用法に関する認知意味論的研究を行った。前年度の研究で前置詞inを中心として分析し、中心義と周辺義の日英語母語話者による概念化・認識の違いを心理実験で確かめた。2023年度においては、前置詞inの意味論について引き続き分析を行うのと並行して、前置詞atの意味論に関しても分析を行った。前置詞inについては、inを含む構文(NPN構文)や結果状態を表すin句に関するコーパス分析を行った。具体的な成果として、NPN構文においてはarm in armを中心に扱い、それまで辞書の定義でarm in armが物理的近接用法(すなわち、2者が腕を組んで移動する等)のみを持っているとされていたことに加え、比喩的近接用法(すなわち、2者の関係の深さを表す等)としても用いられていることを明らかにした。また、物理的近接用法において共起する動詞の性質等についても知見を得ることができた。さらに、前置詞atについては、先行研究で「点」として捉えられるTRとLMの関係性について新たな考え方を提示した。具体的にはatは「位置」を表示する意味機能のみを持っており、辞書等で記述される多くの意味用法はatそれ自体ではなく、共起する動詞等の構文的・文脈的要素からもたらされていることを示した。上記に加えて、データの統計処理における数学的正しさに関して、数学分野の研究者と予備的研究を行い、2024年度以降に実際の分析を行っていく予定である。また、生成AIであるChatGPTによる英文エッセイにおける前置詞の分析も行った。ChatGPTは特定の前置詞を含むフレーズを多用する傾向があり、前置詞を含む文脈や構文中に共起する他の要素を分析することで前置詞の意味概念が生成AIによってどのように概念化(構築)されているかに関する知見を得ることができたと考えている。以上の研究成果については、学会発表(4件)や論文(6件)としてすでに一部公開されている。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究における当初の目的は、これまでの認知意味論における前置詞の意味研究において行われてきた言語学者の直観と内省に基づく研究だけでなく、それらの知見や理論を何らかの客観的な方法を用いて検証することであった。認知意味論の枠組みにおいては、前置詞の中心義はイメージスキーマと呼ばれる抽象化された概念図によって表現され、その中心義から各意味用法がメタファー的に拡張しているとされている。言語事実の観察から、これらの見方は確からしいと考えられてきたが、実際に実証的に示されている例はそれほど多くないのがこれまでの現状であった。本研究の2023年度の計画としては、先行研究で言われている前置詞atの意味用法が、どの程度言語学者の直観や内省に即して確からしいかを心理実験を用いて確かめることを目標としていた。前置詞atの意味論研究としては一定の成果があったが、心理実験を用いた実際の言語使用者による概念化を確かめる点については実施できていない。その理由としては、2022年度に実施した心理実験の実施状況と2023年度における前置詞atの意味論研究の結果から、前置詞atに関して実験のデザインを若干変更する必要性が生じたことが挙げられる。すなわち、当初の想定として、前置詞atにも前置詞inと同様に中心義があり、各意味用法はその中心義からのメタファー的意味拡張によってもたらされていると考えていたが、atの意味論研究から、atそのものだけでなく、構文を構成する他の要素(動詞など)や文脈情報も意味概念の構築に影響している可能性があることが分かった。そのため、中心義からの意味拡張のみを前提とした心理実験を修正する必要性が生じた。
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今後の研究の推進方策 |
2024年度においては、当初の計画を変更し、前置詞atと前置詞onを並行して扱う。現在までの進捗状況で述べた通り、2022年度に前置詞inの研究で行ったもの(特に心理実験)を修正する必要が生じたため、2023年度には前置詞atに関する心理実験を実施できなかった。その為、2024年度においてはatとonの意味論研究を引き続き行うとともに、心理実験のデザインとその実施方法を修正したものを行い、前置詞at, onの心理実験を同時に行う予定である。ただし、必要に応じて倍の数の実験参加者をリクルートする必要が生じる可能性がある。この点に関しては、2022年度に行ったように研究代表者が所属する大学、及び、非常勤講師として勤務する大学に在籍する学生を中心として実験参加者を募集することに加え、リサーチ会社に一部募集を依頼する(2022年度に依頼した会社と同様の会社を想定)計画である。 また、データの統計処理における数学的正しさに関して、数学分野の研究者に協力を依頼し、共同で研究を進める予定である。具体的には2022年度に収集したデータ、及び、2024年度に行う予定の心理実験から得られるデータに関して、統計的・数学的により正しい方法で処理を行うための数理モデルの構築を目指している。なお、これに関してはすでに複数の学会において研究発表を計画中である。
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