研究課題/領域番号 |
22K00765
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分02100:外国語教育関連
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研究機関 | 宮崎大学 |
研究代表者 |
川崎 典子 宮崎大学, 工学部, 准教授 (00775801)
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研究分担者 |
小野 真嗣 室蘭工業大学, 大学院工学研究科, 准教授 (10369902)
久保 比呂美 北見工業大学, 工学部, 講師 (90891979)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
3,250千円 (直接経費: 2,500千円、間接経費: 750千円)
2024年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2023年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2022年度: 1,430千円 (直接経費: 1,100千円、間接経費: 330千円)
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キーワード | 自律英語学習 / 英語学習不安感 / 学習ビリーフ / 学習プラットホーム / 工学系大学 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究では、ロールモデル中心の自律的な英語学習者集団を育て、共同体の学生が刺激しあって自律学習に動く伝播径路を作り、自律学習に向かう工学系学生を共同体に集め、3大学の教員・学生で支援するオンライン上の学習プラットホームを構築する。自律学習支援機関を財政的に拡充できない地方の工学系3大学の協働事業によるアクションリサーチを通して、共同体での学習者の意識・態度の変容、工学系学生の学習ビリーフと将来構想、正課外活動に集う学生が抱く動機、ロールモデルの資質、学習プラットホームの機能性について検証する質的研究を行う。
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研究実績の概要 |
本研究の目的は、工学系大学3大学による3年間の協働事業で、自律的な英語学習者の工学系学生が集う正課外活動の中に学びの共同体を育て、共同体の活動空間を使って自律学習に向かう学生を3大学の学生 教員で支援するオンライン上の学習プラットホームを構築することにある。 前年度の調査結果では、工学部学生の「英語学習過程でのつまずき」「英語という科目に対する自信の低さ」「英語の社会的必要性の認識」を明らかにできたため、2年目の2023年度における正課外学修活動の設計に活かした。自律学習グループのコアメンバーとなる学生たちとの意見交換を頻繁に持ち、彼らに主体性を持って学修活動を実施してもらう方向に移行していった。学内での創意工夫を凝らした対面での英会話活動や国際交流活動に加え、国内外の大学の学生とのオンライン協働学習に新たに取り組むなど、学生の視点で改良された正課外学修活動が展開された。学びの共同体による学修活動の企画という第一段階から継続的な実施という第二段階には進んだ。学びの共同体に深く関わった学生たちの聞き取りと行動観察によれば、「英語という科目に対する自信の低さ」と「英語の社会的必要性の認識」との葛藤の中にあるけれども、「英語を使えるようになりたい気持ち」と「学び合える環境に身を置く態度」を持てれば、正課外学修活動の参加率が上がり、活気と共に満足感や継続性も高まることが分かった。また、活動の企画・運営を通してコアメンバーの学生たちの社会人基礎力が上昇したことも分かった。一方で、英語力の向上という活動目的については、学生たちの希望通りになっていないことが認識できたため、活動を改良していく必要がある。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
学びの共同体による学修活動には、毎週の英会話活動、VR機器を使った英会話活動、英会話活動を発展させたディベートやプレゼン発表、留学生との学内外での交流活動、TOEIC受験前のグループ学習会、国内外の大学とのオンライン協働学習、長期休業期間中のオンライングループ活動があり、コアメンバーの学生が中心となって実施してきた。活動の企画や運営には教員が深く関与したが、学生が主体的に取り組めるように、教員はコアメンバーの学生と活動時期や活動内容の検討を重ねながら学生の支援に回るようにした。その結果、学生が積極的にLINEグループでの意見交換を行い、自発的に随時ミーティングを開いて協議したり、役割分担した上で担当者間での打合せをしたりするようになり、学びの共同体を牽引した。一方、3大学の学生と教員で支援するオンライン上の学習プラットホームの構築においては、オンライン協働学習を軸に、工学系地方大学の学生同士の仲間意識を醸成することを意識して取り組んだが、大学間のカリキュラム設定や昼休み時間の差異が原因でオンライン協働学習の実施日時の設定に苦慮して回数を重ねられないなど、改善点が発見された。しかしながら、前年度計画から延期した、コアメンバーの学生のための集合研修と研究者の対面協議を持つことができ、コアメンバーの学生による正課外学修活動に関する実践報告を踏まえた意見交換をしたり、各大学の国際教育の取り組みに関する事例報告をしたりすることができた。報告の中では、学生自身の自主性・主体性に基づく活動であったか、参加者の目的や希望に見合う活動内容であったか、工学部学生の興味・関心を引く正課外の英語学習はどうあるべきか、といった研究目的の核心を突く質疑応答を行えた。また、3大学の研究者でのこれまでの活動に対する結果分析を進めながら、最終年度に学習プラットホームの構築に協力して取り組むことを確認した。
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今後の研究の推進方策 |
2年目に実施した正課外学修活動の検証を踏まえ、授業外で英語学習に取り組みたいと考える工学部の学生に適当な活動の精査をしていく。活動の精査後には、コアメンバーの学生を各大学で確保し、コアメンバーの学生が中心となる学びの共同体の継続・発展、3大学の連携による学習プラットホームの構築へとつながるように、3大学の教員によるコアメンバーの学生に対する支援体制を検討する。また、今後の活動には、豊富な海外経験を持つ工学部の学生や異文化を背景に持つ留学生の参加を促し、留学・海外赴任中の先輩学生とのオンライン交流など新しい活動も取り入れながら、学生が希望する英語が実践的に使える場づくりや、高度な英語力の獲得に向けた挑戦的な機会の提供を念頭に置いた正課外学修活動のデザイン設計を再考していく必要もある。その際、留学経験を持つ先輩学生の体験談や海外研修参加者の報告会を活用すれば、工学部の学生にとっての大きな動機づけになると考えられる。また、留学生を正課外学修活動に参加させることで、工学部の学生に実践的に英語を使う重要性を理解させていくことができるだろう。コアメンバーの学生だけでなく、学修活動に参加する学生にもアンケートやインタビューを実施するなど、学生の意見を集めながらデザイン設計に活かしていく。さらには、3大学の研究者で認識を同じくする工学系地方大学の強みと弱みをしっかりと考慮しながら、授業外における英語学習や留学等の海外渡航に学生を導く教員の役割を整理して提示することも考えたい。本研究では、萌芽的な結果を含めて、工学系学生を対象とした正課外の英語学習や国際教育に関する様々な課題が見えてきた。本研究で得られた知見の学内外における公表を急ぐ必要があると考えている。
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