研究課題/領域番号 |
22K00787
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分02100:外国語教育関連
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研究機関 | 東京学芸大学 |
研究代表者 |
高山 芳樹 東京学芸大学, 教育学部, 教授 (10328932)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
3,510千円 (直接経費: 2,700千円、間接経費: 810千円)
2024年度: 260千円 (直接経費: 200千円、間接経費: 60千円)
2023年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2022年度: 2,080千円 (直接経費: 1,600千円、間接経費: 480千円)
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キーワード | 音韻認識 / 音節認識 / 発音指導 / 明瞭性 / リスニング / プロソディ |
研究開始時の研究の概要 |
日本人英語学習者は英単語の音節を認識する能力が低いことが先行研究で明らかになっており、この「音節認識のつまずき」が、結果として彼らの発音の「通じやすさ」に悪影響を及ぼしている可能性がある。本研究では「音節認識のつまずき」の実態を探り、その実態と実際の「発音パフォーマンス」との間の関係を明らかにする。これにより、英語をより通じるものにするための指導への具体的な示唆が得られることが期待される。
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研究実績の概要 |
本年度は、令和4年度に作成した70語からなる音節数カウント実験マテリアルを使用し、新たに3つのグループからなる実験参加者を対象に音節数カウント実験を実施した。1つ目のグループは英語母語話者11名、2つ目は日本語を母語とする英語専攻の大学生25名、3つ目は日本語を母語とする英語非専攻の大学生44名である。 3つの異なるグループごとに音節数カウント・テストの正答率を、音節の数、リズムパターン(音節数と強弱アクセントの位置のパターン)、子音結合の有無などの観点から分析し、正答率の比較的高い・低い英単語の特徴をそれぞれ探った。さらにグループ間での相違も調査した結果、英語母語話者は英単語の音節数に関係なく、極めて正確に音節数を認識できるのに対し、日本語を母語とする英語学習者は音節数が増えるにつれて、音節を認識することがかなり難しくなること、また、同じ日本語を母語とする英語学習者でも英語運用能力の低い学習者は、高い学習者と異なり、2音節語よりも1音節語の音節数の認識に困難を抱えていることなどの興味深い発見があった。 また、日本語を母語とする大学生(英語専攻と英語非専攻)にカタカナ語の影響などを受けないように非現実単語(CNRepの40語)を用いた音節数カウント・テストも実施し、さまざまな分析を行った。英語として現実には存在しない単語であっても、英語運用能力の高い英語学習者のほうが、その音節数を正確に認識できることなどの結果を得た。 さらに日本語を母語とする英語学習者の実際の発音パフォーマンスの実態を探るための資料として、英語の文章の音読と与えられたテーマについての英語による自由発話の様子を録音し、その音声ファイルを収集した。 令和4年度に実施した日本語を母語とする英語非専攻の大学生77名の音節数カウント実験の結果を論文として執筆し、オンライン上でも公開した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
令和4年度にデータを収集した日本語を母語とする英語学習者77名は、英語を専攻していない大学生であったが、英語運用能力と音節認識能力の関係を再確認するために新たに英語を専攻する大学生をパイロットテストの参加者として追加した。 さらに、英語母語話者も実験参加者として募ったが、参加者の獲得に予想以上に時間がかかってしまい、このことが令和5年度の研究全体の遅れに大きな影響を与えた。国内在住の英語母語話者を通しての参加者獲得が思うように進まなかったため、最終的には海外在住の英語母語話者の協力を得て、実験参加者数を増やすことができた。しかし、依然として目標としていた人数までは届かず、日本語を母語とする英語専攻の実験参加者の人数に比べると、英語母語話者の実験参加者は半分以下となった。 研究計画当初にはなかったものの、令和4年度に専門家から得た助言に従い、音節数カウント実験で使用する刺激語には現実に存在する単語だけではなく、非現実単語も加えることを検討し、英国で幼児向けのワーキングメモリー測定用に開発されたGathercole & Baddeley(1996)のThe Children’s Test of Nonword Repetition (CNRep)で使用されている非現実単語を用いた実験も加えることとした。令和5年度には実際に、日本語を母語とし英語を専攻している学生と英語を専攻していない学生の2グループにCNRepの音声を聞かせて、音節数カウントをしてもらい、その結果を分析した。 このように、英語母語話者の実験参加者の獲得に時間を要したこと、非現実単語の音節数カウント・テストの実施とその結果分析作業を新たに加えたことで、当初の実験計画よりも若干の遅れが生じている。
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今後の研究の推進方策 |
研究最終年度となる令和6年度には、日本語を母語とする英語学習者(英語専攻と英語非専攻)や英語母語話者を対象にこれまでの2年間で実施してきた英単語や非現実単語の音節数カウント実験結果を詳細に分析・整理し、日本語を母語とする英語学習者が音節認識の際に困難を抱える英単語、すなわち「音節認識のつまずき」が起こる可能性の高い英単語の音韻的特徴を推定する。 その上でそのような音韻的特徴を持つ英単語を含むリストを作成し、日本語を母語とする実験参加者にその英単語の発音をしてもらい、英語母語話者や英語音声指導の専門家などにその発音パフォーマンスの評価を依頼する。発音パフォーマンスの評価の際には、必要に応じて前年度までに録音収集した日本語を母語とする英語学習者の英単語の読み上げや英語文章の音読、英語による自由発話の音声ファイルなども併せて活用する。上記のような実験を通して、音節認識の段階でつまずいている英語学習者は、英語発音パフォーマンスでも十分な力を発揮できないのか、など音節認識能力と発音スキルの関係について実証的に検証する。 また、音声指導の最新の動向を探ったり、本研究の取り組みの様子や令和5年度に行った実験結果などを口頭発表によって伝え、発表内容に対するフィードバックを得、令和6年度の実験を進めていく際の参考とするために、英語教育関連の学会にも参加する予定である。
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