研究課題/領域番号 |
22K00846
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分03010:史学一般関連
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研究機関 | 専修大学 |
研究代表者 |
黒沢 眞里子 専修大学, 文学部, 教授 (40338588)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,030千円 (直接経費: 3,100千円、間接経費: 930千円)
2024年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2023年度: 1,820千円 (直接経費: 1,400千円、間接経費: 420千円)
2022年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
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キーワード | 黎明期のアメリカ葬儀産業 / ポジティブな死生観 / 計量テキスト分析 / MAXQDA / 黎明期のアメリカ葬儀業界 / フューネラルディレクター / エンバーミング / 米国葬儀業界の成立ち / 葬儀業界誌 Casket & Sunnyside / 葬儀のプロフェッショナル化 |
研究開始時の研究の概要 |
今日のアメリカの葬儀産業は海外にも進出する巨大市場となっている。なぜそのような巨大ビジネスに発展したのか。アメリカ人のポジティブな死生観が葬儀に「革新」をもたらし、それが現代の巨大葬儀市場につながったと考えた。葬儀雑誌の創刊当初から現代に至る約110年の歴史的展開を研究することによって、アメリカに特徴的な死に対するポジティブな態度がどのように形成され、強化されて葬儀のプロフェッショナル化が確立し、今日の巨大葬儀産業を生み出すに至ったのか、その一端を解明できると考えた。本研究は、葬儀「先進国」アメリカの研究であるが、葬儀の抜本的改革が喫緊の課題となっている日本においても重要な示唆を与えるだろう。
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研究実績の概要 |
2年目となる2023年度は、初年度から行なっている所蔵葬儀雑誌のデジタル化とデータベース構築および質的データ分析ソフトMAXQDAを使用したデータのテキスト解析の作業を継続して実施した。さらに、分析結果とトレンドから導き出された結論の精査のために、雑誌発刊地での現地調査(米国ニューヨーク州ロチェスター市とニューヨーク市)を行い、結論を裏付けるローカル資料収集と雑誌創刊に影響を与えたロチェスター市のマウント・ホープ霊園の調査を行った。霊園では、霊園の専門家に聞き取り調査も実施した。その結果、黎明期の葬儀業界誌がロチェスター市で創刊された理由の一つに、マウント・ホープ霊園が関わっていた事実を、霊園関係者や専門家でさえ突止めておらず、この事実の重要性が再確認された。葬儀ビジネスと霊園との関係は、葬儀雑誌の創刊号の画像分析から明らかになったもので論文で発表している。葬儀業界の誕生経緯を探る上で、文字資料だけでなく画像資料も含めてより広い社会的・文化的文脈から総合的に考察することの重要性を指摘してきたが、その重要性が証明された。 さらに、米国現地調査では研究の途中経過の検証を行う為に、米国葬儀の専門家ゲリー・ラダーマン教授をジョージア州アトランタのエモリー大学に訪ね、立命館大学のアメリカ研究者とともに会合をもった。この会合に合わせ、テキスト分析結果を英訳する作業も行った。 ラダーマン教授の助言をもとに、葬儀雑誌テキスト分析に関する英語論文を修正し、"A Study of The Casket, a Funeral Journal, Using Quantitative Text Analysis--Focusing on Advertisements from the 1870s to the 1890s"(『専修人文論集』第113号、2023年11月)として研究成果を出版した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
葬儀雑誌のデジタル化作業においては、当初はコロナの影響を考慮して計画に余裕をもたせたが、予想したほどコロナの影響を受けずに、学生アルバイトを雇用した雑誌のデジタル化作業を終了することができたことと、計量分析を委託した分析支援者が内容をよく理解し、分析の助言も適切で、分析自体も効率的に作業を進めてもらうことができたため当初の計画以上に進展した。 テキスト分析では、19世紀広告分析はスムーズに行えたが、20世紀のテキスト分析ではデータが膨大となり、年代も70年間と長期に亘るために、全体を俯瞰できる解析方法を再考する必要が生じた。目次分析やエディトリア分析など試行錯誤しながら進めているため、やや遅れをとっている。 しかし、110年に亘る当該雑誌の全データをMAXQDAに取り込む作業が終了し、全体的にはおおむね順調に進展していると言える。
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今後の研究の推進方策 |
これまでに葬儀雑誌の目次分析、エディトリアル分析が終了し、現在20世紀の広告分析が進行中である。すでに終了した19世紀の広告分析に加え、20世紀の広告分析が明らかになることによって、アメリカの葬儀業界の組織化・プロフェッショナル化が辿った110年の軌跡を浮彫すること、そのプロセスでアメリカのポジティブな死生観が具体的にどのような形をとって具現化されたのか明らかにすることを目指している。 最終年の2024年度は、20世紀の広告分析を終了し、その結果を論文にまとめる予定である。「現在までの進行状態」で述べたように、19世紀の広告分析に比べ、20世紀の広告分析ではデータ数が膨大で、年代も70年間と長期に亘るため、全体を俯瞰できる解析方法を再考している。目次分析やエディトリア分析が終了したので、今後はテキストを読み込み、キーとなる言葉を特定し、それらの経時的変化をみる作業を進めていく。必要に応じて、MAXQDAによるテキスト分析を追加で実施する。アメリカ葬儀産業の110年間のトレンドを解析する際には、社会的・文化的背景にも注意を払い、より広い文脈の中に位置付け考察を行う。 本研究は、葬儀「先進国」アメリカの近代的葬儀の成り立ちの研究であるが、葬儀や墓地の抜本的改革とライフエンディング・サービスを担う人材教育が喫緊の課題となっている日本においても革新的な示唆を与える、学術的・社会的意義のある研究である。研究結果を広く社会に知らしめるために、論文に加えて一般向け書籍の出版を考えている。 当初は、ホームページ上でも研究結果を公開する予定であったが、大学のサーバーが使えなくなり、民間のレンタルサーバーを利用すると長期的な料金・管理が必要となるので、今回はホームページは利用せず、より効率的・効果的な書籍出版に切り替えたい。
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