研究課題/領域番号 |
22K00847
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分03010:史学一般関連
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研究機関 | 東海大学 |
研究代表者 |
吉田 厚子 東海大学, 総合教育センター, 教授 (50408069)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
2,470千円 (直接経費: 1,900千円、間接経費: 570千円)
2024年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2023年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2022年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
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キーワード | 文化交流史 / 江戸時代 / 地図 / 地球儀 / 日蘭 / 日魯 / 洋学史 / 司馬江漢 / 地球分図 / 世界地理 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究では、これまで殆ど着目されていなかった司馬江漢の「地球分図」をはじめとした世界地理・天文関連図版に焦点を当て、それらの製作過程を分析することを通じて史料性や史料的価値を解明し、司馬江漢の海外情報受容過程を具体的に究明することを目的とする。 本研究は、研究代表者1人と研究協力者2人により、3年次計画で遂行されることになるが、司馬江漢と交流のあった大槻玄沢らの事例との比較研究により、江戸知識人の海外情報受容の実態も明らかとなり、延いては当時の日蘭・日魯文化交流史の新たな実態をも復元できる可能性がある。
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研究実績の概要 |
本研究の目的は、これまで埋もれていた司馬江漢の「地球分図」をはじめとした世界地理・天文関連図版に焦点を当て、その製作過程を分析することを通じて、それらの史料性や史料的価値を解明し、司馬江漢の海外情報受容過程を具体的に究明することにある。特に司馬江漢「地球分図」は、かなり保存状態が良いにもかかわらず、これまでに洋学史研究者ですら全く注目してこなかった。そこで本研究では、研究課題の核心をなす「問い」として、「①「地球分図」は、江漢によってどんな過程で製作され、如何なる史料的価値を有するのか(「地球分図」の史料性と史料的価値の解明)、②江漢は世界地理・天文関連図版の製作に当たって海外情報をいかにして受容したのか(司馬江漢の海外情報受容過程の解明)、③江戸知識人の海外情報受容の実態や当時の日蘭・日魯文化交流史の在り方は、現代を生きる我々に何を示唆するのか(史料研究の現代的意義探究)」の3つを設定した。令和5年度は、初年次に着手した上記の①~③に関する基礎的研究を継続した。 上記①に関して、司馬江漢は、何故、どのような経緯で「地球分図」を作成したのかを明らかにするために、収集済みの「地球分図」所収の29折の図版の分析を通じ、江漢が如何なる情報や書物・地図・器物を参照して製作したのかを、新規購入の北方関連史料等と照合しながら特定し、製作過程具現化のための作業を継続した。加えて、各図から読み取れる多様な情報を引き出し、史料的価値も明らかにしようとした。 上記②に関しては、司馬江漢が世界地理・天文関連図版を作製するに当たって参照した情報源・史料源の入手・閲覧ルートを、『司馬江漢全集』所収の諸史料にあたりつつ、人的ネットワークや生涯の行動などに鑑みて考察していった。 上記③に関して、研究代表者は成果公表に向けた執筆作業を継続し、研究協力者は日蘭・日魯文化交流史の実体解明に資する成果を公表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究では既に述べたように、これまで殆ど着目されていなかった司馬江漢の「地球分図」をはじめとした世界地理・天文関連図版に焦点を当て、それらの製作過程を分析することを通じて史料性や史料的価値を解明し、司馬江漢の海外情報受容過程を具体的に究明することを最大の目的としている。従って、江漢が作製した「地球分図」をはじめとした世界地理・天文関連図版の再調査や関連諸史料の調査・分析を、所蔵関連研究機関で実施することが不可欠である。 本研究では、それらの調査を、初年度である令和4年度から毎年度実施する予定としていたが、諸般の事情により、研究代表者は諸機関での調査が全くできない状況にあった。 ただし既に備えていた諸史料や新規購入の北方関連史料等により、研究をある程度進展させることはできた。 従って、当初の計画通りに順調に研究が進展したとは言い難かいものの、研究の進展は見えたので、現在までの研究の進捗状況については、「やや遅れている」と判断した。
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今後の研究の推進方策 |
ここまでの研究期間においては、令和4年度および令和5年度に計画していた研究機関での史料調査が全くできなかったので、令和6年度中にそれらの調査を実施することを何よりも優先したい。 具体的には、熊本大学文学部付属永青文庫研究センターでの「地球分図」再調査を行い、桐の箱蓋に張付けられた識語の分析などを実施する。また司馬江漢が「地球分図」作製過程で参照した史料の特定に関しては、各種史料との照合が必要なので、研究期間中に神戸市立博物館などでも調査を行うとともに、既に整備してある江漢の著作や伝記史料を主に分析する予定である。加えて、江漢の海外情報受容の在り方の特色を解明するためは、江漢以外の大槻玄沢や伊勢商人稲垣定穀など、当時の蘭学者との比較検討も必要となる。そこで特に稲垣定穀については、「稲垣家旧蔵地理学関連史料」の閲覧をするために、津市図書館での史料調査も実施したいと考えている。 現在研究代表者が成果公表に向けて執筆している論文等についても、多様な手段を模索して、できる限り本研究の期間中、乃至は研究期間終了後、速やかにに公開していく所存である。
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