研究課題/領域番号 |
22K00855
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分03020:日本史関連
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研究機関 | お茶の水女子大学 |
研究代表者 |
湯川 文彦 お茶の水女子大学, 基幹研究院, 准教授 (00770299)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
3,250千円 (直接経費: 2,500千円、間接経費: 750千円)
2025年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2024年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2023年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2022年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
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キーワード | 明治維新 / 地方統治 / 地方学事 / 教育普及 / 職業教育 / 帝国議会 / 地方議会 / 新聞 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究では、人民の明治維新経験を総合的に明らかにするために、以下三点の検討を行う。 第一に、各府県の地方行政文書の調査・分析により、地方官・地方学事担当者・地方議会議員・教育関係者たちの議論を明らかにする。第二に、新聞メディア史料の調査・分析により、人民の教育意見を具体的且つ総合的に検討する。第三に、政府関係者の史料や刊行物の調査・分析により、人民の議論を支えた制度・政策および教育情報を検討し、官民の相互関係のもとで展開された議論の特徴を明らかにする。 以上三点の検討結果をもとに、追加の史料調査・分析をもふまえて、教育普及事業をめぐる人民の明治維新経験を総合的に検討する。
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研究実績の概要 |
本年度は、人民の明治維新の特質を解明するために、メディア史料、政治史料、行政史料を横断的に検討し、明治10年代以降、教育普及事業をめぐる新たな論点として浮上した、普通教育と職業教育の関係について実証的に明らかにした。 検討にあたっては、昨年度の研究成果をふまえ、教育普及事業と旧慣・民意との関係、地方統治のなかでの位置づけなどを念頭に置いた。とくに明治20年代に帝国議会をつうじて提起された「地方」の論理――地方・人民の利益という観点で事業の正当性・妥当性を判定する論理――に注目した。また、従来の研究で主に検討されてきた文部省の政策方針を新史料を交えて再検討するとともに、農商務省・工部省など他省や内閣の方針についても併せて検討し、さらに民意を代表する政党の意見についても議会・政党関係史料をもちいて詳細に検討した。その結果、普通教育の普及・定着に関して、職業教育との関係をめぐる活発な議論と取り組みが政府内で生じていたこと、政党の提起する見解が教育普及事業を支えるとともに、それを制約し議論を生みだしていたことを明らかにした。 これらの研究成果は、以下の学会発表および論文により公表した。 ・湯川文彦「明治10~20年代における普通教育と職業教育」(教育史学会第67回大会研究発表、2023年9月23日、於北海道大学/オンライン実施) ・湯川文彦「明治10~20年代における普通教育と職業教育」(『人文科学研究』第20巻、2024年3月)
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
当初検討する予定だったメディア史料に加えて、政治史料(とくに議会・政党関係史料)および行政史料(各省・内閣の公文書など)をも検討した。その研究成果を明治前期の重要問題であった、普通教育と職業教育の関係をテーマにまとめ上げ、学会発表1件、学術論文1本を以て公表することができた。これらは、次年度に予定していた研究内容の一部を含みつつ、当初の予定よりも広範な問題を捉えている。そのため、次年度の研究活動を円滑にすすめることが可能となった。研究成果の意義については、以下の2点が上げられる。 第一に、普通教育・職業教育の普及という教育政策課題が相互に密接な影響関係を伴いながら取り組まれた経緯を明らかにしたこと。従来の研究では、両者の関係については不明瞭な点が多く残されていたが、新たな史料の検討をつうじて解明することができた。 第二に、政府・各省が地方・人民の動向や議会・政党の提起する主張に拘束されながら教育普及事業の方向性や方法を見直し続けていたことを明らかにしたこと。教育普及事業が単なる「上からの」事業にとどまらず、人民の実情・意思との関係を意識して再構築されていったことは、当該事業の性質を理解する上で重要である。 すなわち、教育普及事業は、(昨年度明らかにしたように)人民自身の考え、取り組みによって意味を与えられていく一方、政府によって(あるいは議会をつうじて)人民の実情・意思のフィードバックをうけ、再構築されるものでもあったのである。
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今後の研究の推進方策 |
2024年度は、人民の議論を支えていた官の教育情報(『教育雑誌』などの文部省刊行雑誌、『教育新誌』などの教育専門誌)、政治構想・政策動向――政府要路の個人史料(国立国会図書館憲政資料室所蔵「三条家文書」「大木喬任関係文書」など)、文部省政策担当者(田中不二麿、辻新次、九鬼隆一ほか)の個人史料および政府公文書(国立公文書館所蔵)――を分析し、官民のどのような関係のもとで議論が展開されていたのかを明らかにする。 2025年度は、2022~2024年度の研究成果をもとに、教育普及事業をめぐる人民の明治維新経験を総合的に検討する。必要に応じて追加の地方行政文書・新聞雑誌メディア史料・政治史料の調査・分析を行い、人民の明治維新経験の構造的な把握、考察を行う。
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