研究課題/領域番号 |
22K00865
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分03020:日本史関連
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研究機関 | 神戸女子大学 |
研究代表者 |
山内 晋次 神戸女子大学, 文学部, 教授 (20403024)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
3,380千円 (直接経費: 2,600千円、間接経費: 780千円)
2024年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2023年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2022年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
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キーワード | 硫黄 / 火薬原料 / 火器 / 硫黄流通ネットワーク / アジア / 硫黄流通 |
研究開始時の研究の概要 |
本課題研究では、10~18世紀頃のアジアにおける、火薬原料としての硫黄の流通状況を通時的・総体的に解明する。 このような汎アジア的な硫黄流通史の解明を通じて、従来の日本史研究のなかで見落とされてきた、軍事史や貿易史などの個別的な分野史を超えた、アジア史と日本史とのつながりが見えてくることが期待される。 また、いまだ世界的に研究が不足している、火薬・火器の原料物質(硝石・硫黄・鉛など)の流通史についても、その欠落を埋めるような世界史的な広がりをもった研究が可能であると考える。
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研究実績の概要 |
2022年度については、火薬・火器技術が中国からアジア各地に拡散した13世紀~18世紀頃の時期に関して、東南アジア・南アジア・中央アジア・西アジア地域における硫黄の産出・交易・消費に関するデータを収集する、という基礎的な作業を進める予定であった。しかし、インターネット経由では若干のデータを収集できたものの、そのデータ収集の基盤とすべく海外発注していた複数の洋書の到着が、コロナ禍による流通停滞の影響を受けて大幅に遅れ、目的のデータの収集があまり進まなかった。 ただ、近年の発掘調査により、平安時代後期(11世紀後半~12世紀前半)の日宋貿易の港湾施設の主体部であったことが確定し、複数の薩摩硫黄島産硫黄塊のサンプルが発見された、福岡市博多区の港湾石積遺構に関して、それらの硫黄塊はあきらかに日宋貿易を通じて中国に輸出され、中国で火薬の原料とされた硫黄鉱石の残滓であり、この博多の港湾遺構がアジアにおける硫黄流通ネットワークの東端を構成するきわめて重要な遺跡であることを指摘した論文を、福岡市刊行の発掘報告書に掲載することができた。なお、この発掘報告書は、当該遺跡の国指定史跡登録を目指して福岡市により作成されたものであり、本課題研究の社会的貢献の一端を示すものとなる。 また、本課題研究の直接かつ重要な基盤データとなる、上記遺跡から発見された薩摩硫黄島産硫黄塊について、安定同位体比分析を通じてその産地を特定した共著論文が刊行された。この論文はもちろん、2022年度中の本研究課題の成果を直接反映したものではないが、これまで私が進めてきた硫黄流通史研究の成果のひとつとして、本課題研究の直接的な前提・基礎となるきわめて重要な論文であり、今後本課題研究を進めていくうえでも定点のひとつとなるものである。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
2022年度は、13世紀~18世紀頃のアジアにおける火薬・火器技術の拡散状況と密接に関わる、東南アジア・南アジア・中央アジア・西アジア地域での硫黄の産出・交易・消費の状況に関する文献データをできるかぎり多く収集する、という基礎的な作業を進める予定であった。しかし、そのデータを得るために海外発注していた複数の洋書の到着が、コロナ禍による流通停滞の影響を受けて大幅に遅れ、目的のデータの収集があまり進まなかった。
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今後の研究の推進方策 |
2023年度については、昨年度の轍を踏まないためにもまず、データ収集の基盤となる海外書籍の発注を迅速に行い、少しでも早くそれらを確保することを心がけたい。そして、それらの文献データに基づき、昨年度あまり進めることができなかった、アジア諸地域における火薬・火器の使用状況および火薬原料硫黄の産出・交易・消費状況について、汎アジア的な見取図の描出を進めていきたい。 また、従来より検討を続けてきた東アジア地域におけるそれらの歴史状況についても、さらに新たな史資料の発掘と整理を並行して進めていきたい。
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