研究課題/領域番号 |
22K00877
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分03020:日本史関連
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研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
島津 毅 大阪大学, 大学院人文学研究科(人文学専攻、芸術学専攻、日本学専攻), 招へい研究員 (90794024)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2025年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2024年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
2023年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
2022年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
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キーワード | 穢観念 / 禁忌 / 服忌令 / 神社服忌令 / 延喜式 |
研究開始時の研究の概要 |
人の死や出産などにどう対処するかは、その時代の社会を映し出す鏡でもある。中世では、10世紀前半に成立した『延喜式』と11世紀末以降に神社の規定した服忌令とが併存して、これら禁忌を管理していた。国家が一元的に禁忌を管理していた古代や近世とは異なった、中世社会特有の態様であった。 しかし、神社服忌令が『延喜式』とともに中世社会でどのように受容され、近世社会への橋渡しをしたのか、まだ充分に研究がなされていない。そこで本研究では、諸社が規定した神社服忌令の検討を通して、それを受容した中世社会の実態と、近世の『服忌令』に至る、その歴史的変化を解明していく。
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研究実績の概要 |
本研究は、神社服忌令を中心的な素材として、穢観念が肥大化していく中世社会の特質の解明を課題としている。初年度であった昨年度では、主に神社服忌令や穢れに関わる史料の収集を進めていたが、まだ充分ではなかった。そのため、本年度も補足的に収集に努めてきた。その結果、平安時代の中期から近世初期までの700年間に及ぶそれら膨大な史料を充分に収集することができた。 そこで、本年度は当初の予定どおり、これら史料を読み込んで、それをもとに神社服忌令に規定された諸禁忌の特徴と変遷を明らかにする作業に着手した。そのために、まず11~17世紀前半までに諸社で作定された禁忌や服忌令を①【死に拘わる忌・穢】服暇・死・五体不具、②【女性の穢】産・傷胎・妊者・月水、③【肉食の穢】鹿・猪・猿、④【五辛の穢】蒜・韮・葱、⑤【六畜の穢】死・産、⑥失火、⑦合火の7つに分類した。そして、これらを神社別・年代別に整理して、その特徴と変遷を考察してきた。 こうしたなかで、つぎのような中世穢観念の肥大化を示す重要な知見が得られた。(1)これら7つのなかで神社服忌令として特徴的なものが、②の産穢、③鹿食の穢、④五辛の穢であること、(2)神社服忌令としての形を得る前の個別的な禁忌が11世紀末頃から現出し、(3)平安時代中期から中世にかけて朝廷より特別の尊崇を受けた二十二社からそれらが現れていること、(4)こうした禁忌が12世紀を通じて各神社それぞれが一つの形ある服忌令を規定していったことなどである。 次に重要となるのが、こうした禁忌規定が作られていった背景の考察である。そのためには当時の社会動向との関係を明らかにする必要があり、それに関連する史料の収集も合わせて行い、その検討を進めてきた。ただし、これは当初の計画どおり、来年度における研究課題である神社服忌令が誕生した歴史過程を検討していくなかで明らかにしていく。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度は本研究における次年度に当たる。当初の研究計画は大きくは次の2点であった。①昨年度から収集してきた10~17世紀前半までの700年間に及ぶ諸社の禁忌や服忌令に関わる史料の分析を通して、諸社の服忌令における諸禁忌の特徴と変遷を明らかにすること。②また朝廷や神社の動向、人々の禁忌意識の深まりを示す諸史料をもとに、社会の動向との関連を検討することであった。 これらは研究実績の概要で述べたように、①については、中世全体における諸社の服忌令における諸禁忌の変遷を見通したうえで、中世前期におけるその諸特徴を明らかにすることができた。これは来年度の研究のために、必要かつ充分な成果であった。ただ、14世紀以降の中世後期における、諸禁忌の変遷や諸特徴については、今少し精査を必要とするかたちになっているが、概括的な方向性を得るに至っており、特に問題ではない。②の社会の動向との検討も、本年度は来年度の本格的な検討に向けて、(1)朝廷と神社のそれぞれの動向を示す事件、事例や、(2)人々の禁忌意識の深まり、穢れに関連する言説を網羅的に収集することが主眼であり、これも概ね順調に収集できている。 以上から、本年度は当初の研究計画のとおり、おおむね順調な進捗をみていると、自己評価することができる
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今後の研究の推進方策 |
研究の進展は順調であり、当初の計画通りに研究を進めてよい。当初の令和6年度研究計画によれば、(1)神社服忌令が誕生した歴史過程を検討し、院政期社会の特質を考察すること、(2)令和7年度の研究に向けて、中世社会における神社服忌令の受容状況を示す史料の収集であった。このうち(1)については、本年度において得られた知見と、収集してきた①朝廷と神社のそれぞれの動向を示す事件や事例、②人々の禁忌意識の深まり、穢れに関連する事例をもとに検討を進めていく。 そこで、重要となるのが本年度に得られた、個別的な禁忌が11世紀末頃から現出するという知見である。このころは、ちょうど院政の開始期であり、神祇制度の大きな転換期であったことも知られている。こうした転換期の前後に何があったのか。これらと禁忌意識の高まりとの相互関係、影響関係に注目しながら、諸史料や先行研究をもとに検討を進めていく。こうした作業をもとに、神社服忌令が誕生した歴史過程を明らかにするとともに、逆にそのことを加味したかたちで院政期社会の特質を考えていくこととする。 また、本年度の研究で、若干の精査を残した中世後期における諸特徴をも検討し、令和7年度の研究予定である中世社会全体における検討の準備としていく。そして、こうした検討作業と並行して計画(2)の史料収集に努めていくこととする。
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