研究課題/領域番号 |
22K00892
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分03020:日本史関連
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
吉田 伸之 東京大学, 大学院人文社会系研究科(文学部), 名誉教授 (40092374)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2024年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2023年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2022年度: 1,820千円 (直接経費: 1,400千円、間接経費: 420千円)
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キーワード | 都市性 / 多摩川河口汽水域 / 江戸近郊 / 地帯構造 / 社会=空間構造 / 家格と由緒 / 現状記録調査 / 六郷用水 / 多摩川下流域 |
研究開始時の研究の概要 |
この研究は、日本近世の巨大都市江戸近郊、特に荏原郡(現在の東京都大田区に相当)を取り上げて、多摩川下流の左岸地帯にあるという特徴に注目しながら、そこでの地帯構造の歴史的特質を明らかにしようとするものである。ここでは六郷領という支配と自治の枠組が存在したが、それとは異なる位相で、地域の有力者(社会的権力)が中心となって生み出される独特な社会や空間の有り様を総合的に分析する。なかでも六郷領の中心にあった八幡塚村(現・東京都大田区仲六郷・東六郷)に焦点をあてて、江戸からの都市性がどのようにこれらの地帯へと浸潤したかという点にも注意して、その特質を考えようと試みる。
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研究実績の概要 |
本研究は、2019~2021年度基盤研究(C)「江戸南部近郊地帯の分節構造―荏原郡六郷領を事例に」(以下「前研究課題」)での成果を継承し、日本近世巨大都市江戸の南部近郊における地帯構造の全体史把握をめざす試みである。具体的な対象として、旧荏原郡域(現、東京都大田区南半部)、中でも多摩川下流域左岸沿いの村々を取り上げている。ここは、荏原郡内南部を構成する六郷領に相当し、主要な水路でもある多摩川をはじめ、領内臨海部を南北に縦断する東海道、また領域東端沿いに広がる江戸内湾など、その存立環境の面で、単に巨大都市近郊に留まらない、特異な条件をいくつも抱える地帯である点に特徴がある。本研究計画の第二年度にあたる2023年度は、主に、①旧鵜ノ木村の村役人文書である天明家文書の現状記録調査と史料群の性格をめぐる基礎研究、②下沼部村北川家文書の再調査の継続と史料のデジタル撮影の継続、及び論点把握、③多摩川河口汽水域から大森海岸にいたる海水面を基盤とする海苔生産と、江戸との関係で形成される流通構造の研究、などに取り組んだ。その中で③をめぐる研究成果については、大田区立郷土博物館における特別展での講座で市民向講演で公表した。また、これらとは別個に、④当該地帯の近世における文化基層に深く関わる、新田神社をめぐる由緒と言説の問題にも新たに注目した。これについては、武蔵国榛沢郡岡村田島家に伝来した「新田脉岩松分脈田嶋氏系図」などの関連史料の基礎研究に取り組んだ。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究の基礎的な作業課題は、大田区立郷土博物館所蔵・寄託文書の現状記録調査にあるが、その調査の進展状況が当初計画よりやや遅れ気味であり、またこれに伴い、個別研究課題への取り組みも渋滞している。これらは、①調査先である大田区立郷土博物館との日程調整上の困難、②調査協力者の予定との擦り合わせ上の問題、③史料の写真撮影を依頼している業者の作業予定との調整、などによるものである。
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今後の研究の推進方策 |
当初研究目的で述べたように、本研究は、多摩川下流域左岸の地帯構造分析を、六郷領の八幡塚村・下沼部村、および鵜ノ木村を素材とし、「前研究課題」において新たに見出した未整理文書である旧名主天明家文書の現状記録調査を、2024年度中に完了させ、その保存・活用に途を開くことをめざす。また、研究実績の概要で記した、新田神社の由緒に関わる基礎史料「新田脉岩松分脈田嶋氏系図」と関連する史料の翻刻、及びその基礎研究にも併せて取り組む。
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