研究課題/領域番号 |
22K00896
|
研究種目 |
基盤研究(C)
|
配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分03020:日本史関連
|
研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
高木 博志 京都大学, 人文科学研究所, 教授 (30202146)
|
研究分担者 |
谷川 穣 京都大学, 文学研究科, 教授 (10362401)
|
研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
|
研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
|
配分額 *注記 |
3,510千円 (直接経費: 2,700千円、間接経費: 810千円)
2024年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2023年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2022年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
|
キーワード | 黒住教 / 金光教 / 近代日本の宗教と文化 / 民衆宗教 / マキノ省三 / 映画 / 近代天皇制 |
研究開始時の研究の概要 |
戦後歴史学の中で、民衆宗教(教派神道)は、日本の近代化を考える、民衆史研究の主たる研究対象であった。金光教と黒住教を中心として、岡山県や京都市における新しい一次資料の発掘を通じて、教師たちの営みや民衆の心性に迫る方法を考えつつ、教派神道が近代宗教として成立してゆく過程を研究する。また本研究は、人文科学研究所の学際的な共同研究「近代日本の宗教と文化」の力を借りながら、日本近現代史における民衆宗教の意義を再考するものにしたい。
|
研究実績の概要 |
今年度は、金光教の遊廓布教について重点的に調査をしている。各地の教会資料を検討するとともに、戦前期の歌舞伎・映画関係者の信仰の実態についても調査をすすめている。さらに1920~30年代の「大衆買春社会」における信仰の実態に迫りつつある。谷川穣は、教育勅語普及団体・一徳会の基礎的研究を進めている。 また人文科学研究所の共同研究「近代日本の宗教と文化」班(高木班長)で、2023年度に11回の共同研究会を開催した。歴史学・映画史・宗教史・音楽史・美術工芸史などの学際的な研究を進めている。共同研究で特筆すべきは、2023年11月5日に、京都大学時計台記念館で「大正期の映画と民衆宗教」というテーマで、無声映画「性は善」(1924年)の上映、兒山陽子氏・冨田美香氏の関連講演を行い(250人の聴衆)、映画という新しいメディアでやさしく教義を布教する金光教のあり方を考察した。2024年3月16日には、金光教本部に出かけ、兒山真生氏による門前町と地域社会の研究報告とともにフィールドワークを行った。 天皇制と宗教の問題は、本研究の重要な柱であるが、5月7日には山本信彦氏の案内で「畝傍山・神武陵・洞部落跡・橿原神宮ー幕末から皇紀2600年事業までのフィールドワーク」を実施するとともに、『近現代天皇制の基礎的研究』の共同研究を進めている。2024年2月11日には、「近現代天皇制を考える学術集会」に協力し、研究者・市民、約100名の参加者を得た。 今年度の研究業績としては、共同研究報告書・高木博志編『近代京都と文化:「伝統」の再構築』(同年8月、思文閣出版、21本論文)として上梓した。また18年間の天皇制研究をまとめて高木博志『近代天皇制と伝統文化―その再構築と創造』(岩波書店、2024年3月)を刊行した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
「近代日本の宗教と文化」のプロジェクトに関わり、2023年8月には、高木博志編『近代京都と文化:「伝統」の再構築』(同年8月、思文閣出版、21本論文、688頁)を刊行した。 金光教については、金光教教学研究所、金光図書館において調査を行った。京都府の大衆社会状況下の遊廓布教について、新たに研究が進展する資料群にも出会えた。 人文科学研究所の「近代日本と宗教と文化」研究班も11回、毎回、15名前後の参加者と、共同研究を深めている。研究課題に関わる研究者も招へいした。「近代日本と宗教と文化」の共同研究報告書の刊行に向けて準備進めている。 高木は、『近代天皇制と伝統文化―その再構築と創造』(岩波書店、2024年3月)を上梓し、天皇制の「万世一系」の血統を権威づける「伝統文化」の再構築と創造について明治維新から現代まで、社会への浸透をも視野に置きながら論じた。
|
今後の研究の推進方策 |
本課題の最終年度であるため、人文科学研究所の「近代日本と宗教と文化」研究班のまとめに向けて、書籍(思文閣出版)と『人文学報』特集号で、2025年度に共同研究報告書を刊行するため、議論を重ねてゆく。信仰する民衆の肉声に迫るための史料のありようを追求するとともに、キリスト教・仏教・神道などの宗教と文化的実践の問題を視野に入れる。 高木は、『民衆宗教と花街・芸能―金光教の都市布教』(思文閣出版)という兒山陽子との共著の刊行を、年度内にめざす。ここでは京都・姫路・大阪などにおける1890年代から1940年代までの花街・遊廓布教や、芝居・歌舞伎・映画といった芸能と金光教との関係を、はじめての研究書として体系的に明らかにする。 そのほか国家神道に関わる共同研究書籍を駒込武と編集するとともに、大正期の茨木キリシタン遺物の発見の学問的背景についての論考を著す。
|