研究課題/領域番号 |
22K00909
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分03030:アジア史およびアフリカ史関連
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
石井 弓 東京大学, 大学院総合文化研究科, 学術研究員 (50466819)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2024年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2023年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
2022年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
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キーワード | オーラルヒストリー / 中国村落コミュニティ / 東西交流史 / 中国近現代史 / 集合的記憶 / 戦争記憶 / 歴史心理学 / 集合的記憶論 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究は、山西省盂県における1980年代の雨乞い復活を、オーラルヒストリー調査で明らかにし、伝統的コミュニティの持続と変容を読み解くものである。 共産党の「破除迷信」(迷信排除)政策は、雨乞いをはじめとする迷信的活動を、30年以上にわたり厳しく禁止してきた。その間に社会は変化し農村の近代化が進んだ。それにも拘わらず、改革開放後の80年代に各地で雨乞いが復活する現象が見られている。本研究は、インタビューによって雨乞い復活の背景にある、農民たちの思考、伝統的コミュニティの持続、そして基層社会のネットワークについて読み取り、中国の村落コミュニティを再考する。
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研究実績の概要 |
本年度は、コロナの世界的流行及び政治的な状況によって中国への渡航がかなわず、現地調査を行うことができなかったため、国内での資料収集や、これまで蓄積してきた調査結果や収集した資料を用いた論文執筆が主な研究内容となった。具体的な内容は以下の通りである。 ■書籍執筆 岩波書店より刊行予定の「シリーズ戦争と社会」第5巻第7章に、「戦争記憶の世代間継承と社会―「選択されたトラウマ」と山西省盂県の記憶」を執筆した(2022年4月発刊)。これは前年度から継続的に執筆していたものであるが、最終的に中国での現地調査がかなわなかったことから、執筆内容を大きく変更し、これまで行った調査の蓄積を歴史心理学の「Chosen trauma」(選択されたトラウマ)概念を用いて再分析する内容とした。同概念は、1990年代の旧ソ連における地域紛争地の心理学的調査によって導きだされたものであることから、それを日中戦争の研究に用いることで、中国での調査による戦争記憶研究を事例研究から世界の多様な地域との比較研究へ拡げる方向性を示すことができた。また、これまでのインタビューの蓄積を、歴史心理学という新たな学問領域に利用していく可能性を見出した。 ■書評その他の執筆 芳井研一著『難民たちの日中戦争ー戦禍に奪われた日常』の書評に取り組んだ。雨乞い研究の中で、コミュニティを超えての移動はひとつのキーポイントであるが、書評執筆の過程で中国の人々が戦前・戦中より広い範囲で「難民」という形態ではあるが、移動を繰り返してきたことを理解することができ、本研究テーマの今後の展開にとっても参考になるものであった。書評は書き終えていないため、継続して執筆を行う。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
中国への入国がかなわず、現地でのオーラルヒストリー調査ができなかったため。
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今後の研究の推進方策 |
2023年度は中国への入国が可能となったことから、徐々に現地での調査を開始する。ただし、いまだに政府による管理が厳しいことから、調査地のインフォーマントに迷惑をかけないよう、渡航・調査の開始時期は慎重に見極めたい。 中国での調査に入れない期間には『趙氏孤児』のヨーロッパへの伝播について資料収集及び意見交換を行うため、イギリス及びフランスでの調査活動を行っていく。夏季休暇及びその前後の期間を利用してヨーロッパでの資料調査や現地調査を行い、その成果をもとに、学会発表を行う。 本研究の成果を歴史心理学の分野にも広げていくために、V・Volkanの著作及び関連する研究を読み込んで「Chosen trauma」概念についてより深く理解し、研究に利用していく。同概念は旧ソ連地域の紛争体験から導き出されたことから、近年のロシアによるウクライナ侵攻と戦争の現実を受け止めて、旧ソ連地域の戦争記憶の現実に学び、日中戦争やアジアの戦争記憶をそれらと同じ遡上で議論する方向性を創出する。
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