研究課題/領域番号 |
22K00910
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分03030:アジア史およびアフリカ史関連
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研究機関 | 金沢大学 |
研究代表者 |
安部 聡一郎 金沢大学, 歴史言語文化学系, 教授 (10345647)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
2,080千円 (直接経費: 1,600千円、間接経費: 480千円)
2024年度: 520千円 (直接経費: 400千円、間接経費: 120千円)
2023年度: 520千円 (直接経費: 400千円、間接経費: 120千円)
2022年度: 1,040千円 (直接経費: 800千円、間接経費: 240千円)
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キーワード | 簡牘 / 三国時代 / 出土資料 / 走馬楼呉簡 |
研究開始時の研究の概要 |
中国・後漢末三国時代(A.D.3c)を代表する出土文字資料である走馬楼呉簡は、当該時代の地方行政・社会の実態を明らかにする史料として注目されているが、その知見を文献史料から明らかにされてきた当時の政治・社会的文脈の中に位置づけるところまで研究が進化していない。本研究は形態観察に基づく整理、および歴史的・地理的環境との考量から走馬楼呉簡を分析し、当時の臨湘県内外の地理とヒト・モノの移動の関係を把握する。そしてこれを前漢~南北朝時代(B.C.3c-A.D.6c)の湖南地域の社会・経済・軍事的構造のなかに位置づけ、文献に基づく従来の歴史理解、さらには東アジア書記文化に対する理解の深化に貢献する。
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研究実績の概要 |
本研究の目的は、中国・三国時代(3世紀)の出土文字史料である走馬楼呉簡について、形態観察に基づく整理と、歴史的・地理的環境との考量によって分析することで、後漢末・三国期の臨湘県地域の状況、これと臨湘県外との繋がり、さらにその背景となる前漢から南北朝時代(前3世紀~6世紀)湖南・湖北地域の状況を把握し、文献に基づく従来の歴史理解、さらに東アジア書記文化に対する理解の深化に資することにある。 以上の観点から、所定の計画に基づき、第1年度の本年は走馬楼呉簡中の賦税納入関係簡および戸籍簡に示される郷―丘統属関係の整理、出現する臨湘県内の地名の整理を引き続き行うとともに、臨湘県地域が湖南・湖北地域、さらにその外側に接続する嶺南・中原地域との関係でどのような位置を占めているかについて、地方志等の整理と検討を進めた。その成果の一端は、2022年12月18日に開催された学習院大学東洋文化研究所設立70周年記念シンポジウム「世界に展開する東洋学―海外と日本の中国史研究―」にて、黎明釗氏の講演「長沙五一廣場簡牘:東漢長沙郡臨湘縣的社會生活與地方社群的分析」に対するコメントの形で示した。 また前漢~南北朝期の臨湘県地域と湖南・湖北および嶺南・中原地域の繋がりについて検討するには、文献史料とあわせ近年出土の長沙五一広場東漢簡牘等の関連出土資料の検討が重要となる。これに関して本年は、五一広場簡牘等の講読会への参加を通して積極的に知見を得る環境作りを行ったほか、新型コロナの影響で停止していた長沙呉簡研究会の活動再開に参与し、オンラインでの月例会設定を担当するなど、次年度に向け研究ネットワークの構築を進めた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
走馬楼呉簡最終巻の刊行は年度内に行われず、また現地博物館での調査も新型コロナ流行に伴う海外渡航制限により実施できなかった。その分若干の遅れはあるが、しかし計画上このような状況は概ね織り込み済みであり、問題になるほどの遅延は引き起こされていない。
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今後の研究の推進方策 |
第2年度および第3年度も、所定の計画に基づき、引き続き走馬楼呉簡中の賦税納入関係簡および戸籍簡に示される郷―丘統属関係の整理、出現する臨湘県内の地名の整理、および臨湘県外の地名に関する整理を進めていく。先述の走馬楼呉簡報告書最終巻は、行政文書を中心とすることが既に報じられており、その内容から見て、臨湘県内だけでなく、湖北・湖南地域の各郡県との関係について新たな知見が得られることが期待される。この知見は五一広場東漢簡牘との対象を通して検討を深められる見込みがあるので、第1年度に広げた研究のネットワークを活かし、特にこの方面について研究を進めていく。また、新型コロナ流行の終息宣言に伴い海外渡航が自由化されることから、現地博物館での調査も時期を見て実施を検討する。
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