研究課題/領域番号 |
22K00918
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分03030:アジア史およびアフリカ史関連
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研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
飯山 知保 早稲田大学, 文学学術院, 教授 (20549513)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
1,820千円 (直接経費: 1,400千円、間接経費: 420千円)
2024年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
2023年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
2022年度: 520千円 (直接経費: 400千円、間接経費: 120千円)
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キーワード | 祖先伝承 / 大清一統志 / 碑刻慣習 / 宗族 / 民族 / 華北 / モンゴル支配 / 大清一統志編纂 / 民族識別工作 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究は前掲Anthony D. Smith, The Ethnic Origins of Nationsをはじめとした、主に西欧を対象としたnation, ethnicityの前近代からの生成についての研究を相対化し、前近代中華帝国の統治機構における人々の「識別」と「民族」概念の生成に、その中央集権的な国家体制がいかに関わったのかを検討する。
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研究実績の概要 |
現地調査ができない中、『王姓蒙古族族譜』などの20-21世紀にかけて編纂された族譜や、明清時代から民国時代にかけての地方志の分析を継続した。その成果は、Journal of Chinese Historyの華北史特集号に掲載予定の、"From Ancestry to Minzu Identity: State-Certified Resurgence of the Non-Han Yuan Ancestry in Mid-Late Qing North China and Its Legacy"として結実した。同論文は、2024年に出版予定である。また、同名の研究計画による申請で、2023年9月から2024年7月まで、Harvard-Yenching Instituteのvisiting fellowとして採用された。下記「今後の研究の推進方策」で述べるように、ハーバード大学での文献調査や共同研究により、本研究課題のための史料収集をさらに進めると同時に、前近代の自己認識のあり方とそれに対する国家の影響について、理論的な基盤を構築することを目指す。 また、本研究課題の前提条件となる、13-14世紀の碑刻慣習の変遷について、Tomoyasu Iiyama. Genealogy and Status: Hereditary Office-Holding and Kinship in North China under Mongol Rule. Cambridge (Massachusetts): Harvard University Asia Center, 2023.を2023年2月に出版した。この研究に対する様々な批評に基づき、本研究課題の成果となる書籍の第一章の執筆を開始した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
上記の「研究実績の概要」で記したように、現地調査が不可能な中、文献調査を推進してきたが、昨今のオンラインでの書籍購入の簡便化により、予想以上に多くの関連史料を収集・分析することができた。このため、もともと調査する予定であった河南省南部の事例については、とくに現地調査を行う緊急性が薄れつつある(もちろん、現地調査を行うことができれば、それが理想的である)。今後は、18-19世紀の一統志編纂ならびに地方志編纂全般と、それに対する政府の反応について、より詳細な文献調査を行う予定である。 また、Tomoyasu Iiyama. Genealogy and Status: Hereditary Office-Holding and Kinship in North China under Mongol Rule. Cambridge (Massachusetts): Harvard University Asia Center, 2023.の出版により、本研究課題に関連するフィードバックがすでに多く得られた。こうした、関連する研究者からの情報は、現地調査を行うにあたって、実際にどのような史料が現存しているのか、あるいはしていないのかについて、貴重な情報をもたらしている。 このように、現地調査が不可能である現状の中で、それを補うような情報収集や文献調査ができており、全体として研究の進捗状況はおおむね順調である。
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今後の研究の推進方策 |
2023年度春学期は、東京において文献調査を継続し、あわせて関連する研究者からの情報収集を行う。対象とする文献は、家譜・族譜、文集、地方志、拓本などである。2023年8月以降はHarvard-Yenching Instituteに拠点を移し、ハーバード大学での文献調査(対象となる文献の類型は前述と同じ)を行いつつ、とくに清代の裁判文書や中央・地方政府の一統志・地方志編纂に関する史料の収集・分析を行う。全体として、すでに行った現地調査で明らかとなった4つの宗族の事例を相対化し、より大きな文脈の中で分析すべく、そうした宗族が対応していた中央・地方政府の政策の実際を具体的に明らかにすることを目指す。 一方で、コロナ禍による中華人民共和国への渡航困難が解消されつつある中、機会があれば、北米から中国へと赴き、とくに甘粛省での現地調査を行うことを目指す。中国における研究協力者から、現地調査への協力の継続の確約を取り付けており、状況が好転し、調査に様々な障害あるいは予期し得ない問題が発生しないことがおおむね確認され次第、現地調査の計画を実行にうつす。
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