研究課題/領域番号 |
22K00923
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分03030:アジア史およびアフリカ史関連
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
原田 真見 北海道大学, メディア・コミュニケーション研究院, 准教授 (40348298)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2022年度)
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配分額 *注記 |
1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2024年度: 130千円 (直接経費: 100千円、間接経費: 30千円)
2023年度: 520千円 (直接経費: 400千円、間接経費: 120千円)
2022年度: 520千円 (直接経費: 400千円、間接経費: 120千円)
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キーワード | ニュージーランド / キーウィアナ / 国民性 / アイデンティティ / 白人性 / 他者性 |
研究開始時の研究の概要 |
ニュージーランドは模範的な「人種」関係を構築してきた国とさみなされることが多いが、本研究では、実際には複雑な人種・平等意識を抱えるその国民アイデンティティの分析を試みる。新聞・雑誌・博物館といった(広義の)メディアで展開される大衆文化的な言説と表象を具体的な調査対象とする。特にこの国で一般にPakehaと呼ばれる白人たちの作り出した文化「キーウィアナ」に着目し、そのニュージーランド“らしさ”の要素を検討し、それが国内外の非白人的なものにどう作用するのか、大衆の間にどのような他者像を提示するのかを明らかにする。より広範な文脈では、社会的分断という現代世界の問題を理解する一助となることを目指す。
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研究実績の概要 |
本研究は、ニュージーランドの大衆文化「キーウィアナ」を対象として、ニュージーランド“らしさ”の要素を検討し、当該社会に内在する白人性や「他者」の構築の理解につなげようとするものである。2022年度はキーウィアナ概念及びその歴史的推移の整理を主眼としたが、その中で特に「女性」というテーマがキーウィアナの変容とどう関わっているのかについて考察を進めた。 キーウィアナと称されるモチーフやアイコンには、特に白人男性の抱く「古き良き時代」のニュージーランドに対するノスタルジーと強い結びつきがあることは先行研究で指摘されているところである。新聞・雑誌記事等にみられる、趣味の追求として「内に向かう」関心としてのキーウィアナの扱いにおいては確かにそうした一面が裏付けられている。その一方でしばしばキーウィアナの表象からは排除されがちな女性性についても整理を行った。その一環として、ニュージーランドの女性参政権運動について振り返り、その現代的な意義について検討した。考察の一部については、日本ニュージーランド学会研究大会シンポジウム(22022年7月30日)において発表を行った。 9月の調査においては、観光資源のような「外に向けた」文脈において、女性参政権実現という「世界初の」「女性に関わる」歴史的偉業がキーウィアナのモチーフとして加えられている例など、新しい活用・表現が確認できた。文化的アイデンティティに内包される「我々」と「他者」の区別の揺れを考察する上で注視すべき知見である。また、現地調査期間がエリザベス女王逝去と重なったことで、キーウィアナのようなニュージーランドの独自性に求めるニュージーランド“らしさ”とは対照的な、イギリスとの絆に求めるニュージーランド“らしさ”の追及を目の当たりにすることができた。キーウィアナの社会的意味・意義についての考察を進める上での示唆となった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
前年度には予定されていなかった校務が2022年度に入ってから急遽追加されることとなり、本研究のエフォートに充てるために当初予定していた時間の確保が困難となった。 しかし、概要にも示したように、学会のシンポジウムの機会を利用して本研究に関わる考察をまとめるなど、研究時間の確保を工夫するようにした。現地での文献調査は、年度初めに時間を確保しておいたため予定通り実施し、過去の新聞や雑誌、映像資料等、幅広いメディアを渉猟し資料収集に努めることができたが、年度後半は特に校務が忙しく、その後の資料整理は遅れ気味である。
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今後の研究の推進方策 |
2022年度に収集した資料の分析を引き続き行い、キーウィアナに内包される白人性・男性性・女性性の要素を整理していく。さらに2023年度は(1)ニュージーランド社会の白人性を検討するために、最近の移民に関する調査を、官公庁のデータベース等を利用して進める。また、時間の調整ができれば、現地調査では(2)戦略的な町のPRとしてキーウィアナ・タウンを称しているOtorohangaに足を延ばし、観光資源としてのキーウィアナの活用実態を把握し、「表象されるもの」に投影される国民意識やその変容についても検討を進めたい。 当初、先行研究を参考に、「白人的」「男性的」なものとしてキーウィアナを捉えていたが、初年度の調査では「女性的」な要素を取り込む場合も認められた。キーウィアナを定義づけていく上で、モチーフの具体的な用途や使用の場によって変化する概念として捉えていく必要があると考えている。流動性・変容性を軸に整理していく予定である。
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