研究課題/領域番号 |
22K00939
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分03040:ヨーロッパ史およびアメリカ史関連
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
藤井 崇 京都大学, 文学研究科, 准教授 (50708683)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2026-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2025年度: 1,560千円 (直接経費: 1,200千円、間接経費: 360千円)
2024年度: 390千円 (直接経費: 300千円、間接経費: 90千円)
2023年度: 390千円 (直接経費: 300千円、間接経費: 90千円)
2022年度: 1,820千円 (直接経費: 1,400千円、間接経費: 420千円)
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キーワード | アプロディシアス / キリスト教 / 古代末期 / ローマ帝国 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究は、古代末期(おおよそ3世紀から7世紀まで)のローマ帝国における小アジアの都市アプロディシアスを対象に、この都市から大量に発見されている刻文と落書きの分析を通じて、ギリシア・ローマの伝統的な宗教(いわゆる異教)の信奉者、ユダヤ教徒、キリスト教徒の共存と対抗の実態を、彼らのアイデンティティ形成とその表現に注目して解明することを目的とする。
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研究実績の概要 |
当該年度は、予定通り夏にアプロディシアス遺跡の現地調査をおこなうことができた。8月14日から8月25日まで、ニューヨーク大学・オクスフォード大学が主導するアプロディシアス遺跡の発掘活動に参加し、刻文・落書きの調査を実施した。研究代表者が所属する刻文調査チーム(アンゲロス・ハニオティス、エズュゲ・アカル)とともに、遺跡全体を視野に収めた新発見の刻文の調査研究をおこなうと同時に、当該年度はとりわけアプロディシアスに残る主要なモニュメントであるテトラパイロン(都市内主要街路の交差点に位置)とセバステイオン(皇帝崇拝施設)のキリスト教関連の刻文・落書きを収集・分析した。テトラパイロンについては約15(周辺の路面も含む)、セバステイオンについては約20のキリスト教関連の刻文・落書きを発見し、サイズ、位置、形態についての情報を収集した。この大半は十字架あるいは十字架をもとにするシンボル・モノグラムである。数量的な分析は、調査地域を拡大する翌年以降に総合的におこなう必要があるが、内容的にはすでに非常に興味深い事例を見出すことができる。例えば、ユダヤ教のシンボルであるメノーラーを改変して十字架にした例や、教会(?)の建築物を模したシンボルのなかに刻まれた十字架の例(ともにセバステイオン)は、古代末期のキリスト教徒をめぐる状況を再構成するための材料となる。 刻文調査チームでの遺跡の全体調査では、いわゆる劇場浴場を中心に、石工のマークをはじめとするさまざまな刻文・落書きを収集した。無論そこには多数のキリスト教関連の刻文・落書きがあり、次年度以降の研究代表者による調査地域拡大の目安を得ることができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
2022年度は研究代表者の入院のため予定していた夏のアプロディシアス遺跡調査をおこなうことができなかったが、当該年度はテトラパイロンとセバステイオンというアプロディシアス遺跡のなかでも中心的な遺構で綿密な調査を実施することができた。これに加えて、刻文調査チームによる遺跡の全体調査にも参加し、研究代表者による今後の調査の目安も得ることができた。また、アプロディシアス遺跡の刻文調査チームを率いるアンゲロス・ハニオティス教授(プリンストン高等研究所)と相談し、2025年度に京都でアプロディシアスの落書き(Informal Writingと総称する)についての国際ワークショップを開催する準備を進めており、今後の研究の進展への見通しという点においても、当該年度は大きな成果を上げることができた。 また、夏季のアプロディシアス遺跡滞在中、発掘調査隊を率いるバート・スミス教授(オクスフォード大学)、イネ・ジェイコブ教授(オクスフォード大学)、ベン・ラッセル教授(エジンバラ大学)と意見交換を積極的におこない、研究代表者の研究成果を遺跡全体のトポグラフィーのなかにいかに落とし込むかについて、重要な示唆を得た。たとえば、いわゆるPlace of the Palmsと呼ばれるプールを持つ巨大な広場に通じる門の遺構に多数の十字架が刻まれているが、それを研究代表者の研究に取り込む際の注意点について、古代末期の都市の景観におけるキリスト教刻文・シンボルについての最近の研究動向についてなど、研究代表者の研究に直接通じる論点を議論することができた。 以上の点から、当該年度について、当初の計画以上に研究が進展していると判断することができる。
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今後の研究の推進方策 |
2024年度夏のアプロディシアス遺跡の現地調査では、劇場、Place of the Plams(門の遺構も含む)、North Avenue(北街路)のいずれかについて、調査の取り組みやすさを現地で確認しつつ、2023年度と同様にキリスト教刻文・落書きについて、綿密な調査をおこなう予定である。その際、本研究の最終的な成果をまとめることを意識して、上記のアプロディシアス遺跡のInformal Writingについての国際ワークショップの開催とその成果公表の方法、そして研究代表者の研究成果のデータベース化とその公表の方法について、アプロディシアス遺跡に関わる研究協力者と協議を進める予定である。 また同時に、これまでの発掘報告書と刻文調査報告書を再度調査し、本研究に関わる材料の効率的な収集を続けていく予定である。
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