研究課題/領域番号 |
22K00943
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分03040:ヨーロッパ史およびアメリカ史関連
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研究機関 | 京都府立大学 |
研究代表者 |
渡邊 伸 京都府立大学, 文学部, 教授 (70202413)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
2,210千円 (直接経費: 1,700千円、間接経費: 510千円)
2024年度: 390千円 (直接経費: 300千円、間接経費: 90千円)
2023年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2022年度: 650千円 (直接経費: 500千円、間接経費: 150千円)
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キーワード | 宗教改革 / 神聖ローマ帝国 / ドイツ史 / 宗教平和 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究は、初年度において帝国議会文書集やカトリック改革文書集など公刊史料集や先行研究を収集・検討するとともに、未公刊の書簡などの所在を確認する。 2年次において、現地公文書館にて未公刊史料の閲覧・調査を行い、引き続き史料・文献の検討を進める。 3年次は検討結果を整理して、本研究の目的である帝国諸侯とくにカトリックがアウクスブルク宗教平和を受容した経過と要因を解明する。
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研究実績の概要 |
本研究は、ドイツ宗教改革による信仰対立によっても平和が維持された要因を、アウクスブルク宗教平和の確立過程について帝国諸侯とくにカトリック諸侯の動向を検討することから解明するものである。具体的には1555年のアウクスブルク宗教平和は教皇により批判されたにも関わらず、カトリック諸侯により容認され、確立した過程の検討からその要因を考察する。 本年度は、昨年度の関連文献・資料の調査に基づいて、夏季に渡欧してウィーン国立公文書館に収蔵されているマインツ選定侯文書集、およびミュンヘン州立公文書館とミュンヘン大学図書館資料からカトリック世俗諸侯の代表格であるバイエルンを中心にカトリック聖界諸侯のおかれた状況と意思決定の過程の解明を試みた。 当該期の史料はやはり各領内における対抗宗教改革に関するものが多く、カトリック全体の対応は帝国議会・帝国代表者会議に関連するものが中心であった。これらを検討した結果、1550年代にはアウクスブルク宗教平和の条文に関する論議が多いが、60年代後半になると個別の違反や具体的な問題が議論されたという傾向を認めらる。これがプロテスタントとの論争によるものか、カトリック各領邦の対抗宗教改革の進展によるものか、そしてそれらの帝国国制への異議・影響を調査し確認することが今年度の課題である。 また、先の科研費18K01039「皇帝マクシミリアン 2世の宗教政策に関する研究」による研究成果について、公表先を変更・加筆して「マクシミリアン2世の信仰と宗教政策」と題して発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
16世紀後半の神聖ローマ帝国がフェルディナント1世およびマクシミリアン2世の統治のもとで宗教平和が維持された要因について、とくにこの平和規定がトレント公会議により否定されたにも関わらず、カトリック諸侯が60年代後半以降も平和を維持した要因を解明することが課題である。 現在までのところ、リーダー格であるマインツ、トリアー、ケルンの3選定侯がいずれもライン河交通により影響を受けやすいネーデルランドの改革派との関係などから、領域政策を中心として平和を維持する必要があったことを確認した。 またトレント公会議の終了前までと終了後とでカトリック全体の論議・主張内容に変化があったことを明らかにできた。これは教皇庁との関係を配慮したものというのが推測できるところであるが、はたしてそれに留まるものか、帝国議会での論議も影響しているのではないかと推測している。 以上の成果からは、所期の目的をおおむね達成できるものと考えており、順調に進展していると判断する。
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今後の研究の推進方策 |
今年度は最終年度となるため、これまでの成果を取りまとめ、公表に向けて準備をすすめる計画である。 とくにカトリック諸侯の要求がトレント公会議終了までの間を中心にアウクスブルク宗教平和の条項に関するものであったことについて、各要求がどのようにまとめられたかを改めて帝国議会文書に戻って再検討を行う。 また、トレント公会議後の変化についてマインツ大司教とバイエルン公の史料を手がかりに各司教や修道院長の動向から調査する。 従来の研究はプロテスタント諸侯と皇帝との交渉に焦点を当てることが多く、これにアウクスブルク宗教平和から除外されたカルヴァン派にファルツ選定侯が接近したことの宗教平和と帝国国制に与えた意義が検討されてきたが、カトリック側の姿勢を明らかにすることで、アウクスブルク宗教平和の定着過程の新たな評価を行うことができると考える。
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