研究課題/領域番号 |
22K00950
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分03040:ヨーロッパ史およびアメリカ史関連
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研究機関 | 京都女子大学 |
研究代表者 |
桑山 由文 京都女子大学, 文学部, 教授 (60343266)
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研究分担者 |
小林 功 立命館大学, 文学部, 教授 (40313580)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
3,380千円 (直接経費: 2,600千円、間接経費: 780千円)
2024年度: 1,170千円 (直接経費: 900千円、間接経費: 270千円)
2023年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2022年度: 910千円 (直接経費: 700千円、間接経費: 210千円)
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キーワード | サルディニア / ローマ / ビザンツ / タロス / コルヌス / カリアリ / オリスターノ / 地中海 / ローマ帝国 / ビザンツ帝国 / サルドゥス / ユスティニアヌス / ペスト / イラン / コルシカ / バレアレス諸島 |
研究開始時の研究の概要 |
サルディニアやコルシカなど西地中海の島々は,共和政ローマのイタリア外への領土拡大のごく初期に属州となったが,周辺地域とは異なり,帝政期に入ってもローマ文化の浸透は限定的で,「周縁」的存在であり続けた。一方,ビザンツ帝国期にはこれらの島々は,変わらず「辺境」と位置付けられていたものの,住人は強い「ローマ人」意識を有すようになっていたのである。この「ねじれ」の背景にはいかなる事情があったのか。本研究はこの問題を,ローマ史・ビザンツ史研究者の共同研究により,西地中海におけるギリシア文化のあり方を手がかりとして考察する。その結果,古代・中世帝国による広域支配の特質の一端が浮かび上がることとなろう。
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研究実績の概要 |
本研究は,ローマ帝国の版図形成の過程で,早い時期に支配下に入ったサルディニアやコルシカといった西地中海島嶼部に注目し,これらの地域が古代のローマ帝国,中世のビザンツ(東ローマ)帝国の支配の下で有した「周縁性」と,その時代的質的差異に注目する。本年度は,ローマ帝国東部であり,ビザンツ帝国の中核となったギリシア語圏との文化的差異にも焦点をあて,検討を進めた。交付申請書に記した通り,2023年度は,コロナ禍がある程度収まったことから,予定通りサルディニア島実地調査を計画の中心に置き,1週間の現地調査を研究代表者・分担者共同で行った。一つの遺跡をローマ期・ビザンツ期それぞれの視点から検討し,所見を随時,統合的に理解するためである。航空運賃や宿泊費の高騰のため,今年度経費は全てこの海外調査にあてた。第一にローマ期に属州サルディニアの中心都市であったカラリス(現カリアリ)における,ポエニ期からローマ期にかけての墓地および古代末期のキリスト教会のあり方について分析し,ローマ期からビザンツ期にかけての文化変容について考察した。第二に,島北西沿岸部の都市遺跡,すなわち,ローマ期に海上交易で繁栄を見せた都市タロス,初期キリスト教の中心地であったコルヌスの遺跡調査を行い,島外との交流の実態を検討した。さらに,その近隣において,古代から中世にかけて,南北交通の要所が都市オトカから近郊のオリスターノへと移動したことにも注目し,住民の居住形態の変化について考察した。 代表者・分担者合同での研究会は5月,7月,11月に3回実施した。5月は前年度の総括と今年度の予定を検討した。7月は,8月の実地調査において対象とする地域について詳細を詰め,11月には調査結果についてのまとめを行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
2023年度は,前年度に得た知見に基づき,「研究実績の概要」で述べたようなサルディニア島での実地調査を行った。実地に各遺跡を見て,前年度の史料および二次文献読解から得られた考察結果と突き合わせることで,多大な成果を得ることができた。コルヌスおよびオリスターノでは,古代から中世にかけての人々の居住形態の変化,とりわけキリスト教徒の増加による,都市中心の移動や新たな共同体の成立の様子について認識を深めることができた。 加えて代表者は,「研究実績の概要」で述べた研究目的の核心である「周縁性」について検討を進めるべく,サルディニアが,島外の諸地域,とくに,ローマ帝政期に大きな影響力を持ったギリシア文化圏と何らかの交流を有していたのかの考察にも力点を置いた。ギリシア本土のアテネが,帝政期に入って,ローマ帝国中央とどのような関係を新たに構築していったのかを中心に,ローマ帝国におけるギリシア文化の影響力の拡大について論じ,そうした状況がサルディニアに影響を及ぼすことがあったのか検討した。その成果の一端が論文「ローマ期のアテネ―継承と変容―」(『古代文化』76-1,2024年,印刷中)である。 以上により,「西地中海島嶼モデル」の析出へ向けて認識を深めていくことができた。したがって,現在まで 研究課題はおおむね順調に進展しているといえる。
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今後の研究の推進方策 |
2024年度は,昨年度に引き続き,8月に西地中海島嶼部において研究代表者・分担者共同で,1週間程度の実地調査を実施する予定である。ただし,円安,およびパリでのオリンピック・パラリンピック開催などで航空運賃と滞在費の高騰が予想される。そこで,5月と7月には調査対象地についての事前報告会を行って調査地をどこにするか決定し,短期間で効率的に成果を挙げる体制を整える。調査終了後には報告会を実施し(11月を予定),調査結果をまとめた上で,今後の方針を決定する。関連史資料の収集も前年度に引き続き行うが,予算面での制約があるので,あくまでも副次的位置づけとする。 さらに年度後半には,これまでの研究成果を代表者・分担者各々でとりまとめていき,最終的に,2025年2月および3月に総括の研究会を実施する。その結果得られた研究成果の一部を,学術雑誌への投稿などにより広く発信する。
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