研究課題/領域番号 |
22K00956
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分03040:ヨーロッパ史およびアメリカ史関連
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研究機関 | 東京学芸大学 |
研究代表者 |
菅 美弥 東京学芸大学, 教育学部, 教授 (50376844)
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研究分担者 |
李 里花 中央大学, 総合政策学部, 教授 (50468956)
佐原 彩子 共立女子大学, 国際学部, 准教授 (70708528)
兼子 歩 明治大学, 政治経済学部, 専任准教授 (80464692)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
2,600千円 (直接経費: 2,000千円、間接経費: 600千円)
2024年度: 780千円 (直接経費: 600千円、間接経費: 180千円)
2023年度: 520千円 (直接経費: 400千円、間接経費: 120千円)
2022年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
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キーワード | 環太平洋世界 / 移動・移住 / マイノリティ化 / ジェンダー・セクシュアリティ / 帝国間移動 / インターセクショナリティ / ジェンダー史 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究は、移民・難民による環太平洋世界の多様な個人・集団の移動とトランスナショナルな運動や連帯の歴史を、単なるエピソードや傍流の歴史ではなく、アメリカ合衆国史をマイノリティ史とジェンダー史から再検討し、アメリカ史自体の枠組みを相対化するものである。アメリカ史の射程は、帝国としてのアメリカのかかわりそのものがもたらす環太平洋世界を対象とすることが必須となる。人種・エスニシティ・ジェンダー・セクシュアリティのインターセクショナルな接点から、環太平洋の移動と連帯が織りなす日常世界と歴史的構造を具体的かつ包括的に照射することで、環太平洋世界としてのアメリカ史叙述を提示し、新たなアメリカ史像を目指す。
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研究実績の概要 |
研究代表者である菅は、19世紀中葉の環太平洋世界における日本人の移動への包括的な検証を進め、データベースを駆使するための検討を重ねた。日本側の一次史料にも光を当て検証し、中間報告の形でアメリカ学会の年次大会において発表をした。また共著『南北戦争を戦った日本人 幕末の環太平洋移民史』(筑摩書房)および査読付き論文を発表しアウトリーチを行った。 研究分担者の佐原は、難民と環太平洋世界を考察するなかで、UCバークレー校教授Catherine Ceniza Choy氏によるAsian American Histories of the United Statesを共通のテキストとして本科研メンバーと研究合宿を行い、翻訳原稿を仕上げることができた。本科研のイベントとして、12月2日には共立女子大学にて映画"100 years from Mississippi"上映・講演会を実施したほか、2月28日には同志社大学東京キャンパスにて、Choy教授講演会を実施した。 研究分担者の李は、環太平洋地域におけるコリア系移民女性のイメージや連帯に関する研究を進め、日米韓におけるマイノリティ研究をトランスナショナリティやインターセクショナリティの視点から検討を進めた。米国のマイノリティである「アジア系アメリカ」をいかに日本で叙述できるのかを科研メンバーと意見交換を重ね、その成果を2024年9月に『アジア系アメリカを知るための53章』(明石書店)として刊行する予定である。 研究分担者の兼子は、人種とジェンダーがいかに交錯してきたのかを歴史的に検討する作業を進めた。セクシュアリティや男性性の歴史的構築性を論じた概説書および論文集の翻訳・監訳書を刊行し、また、アメリカの人種主義に関する研究書の合評会でコメンテーターを務めることで、人種とジェンダーの構築過程における相互関係に関する理解を深めることができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度はオンラインによる研究会を年に2回、対面による研究会・打ち合わせを年に3回、合計5回開催した。加えて研究合宿を1回行い、最新の研究の進捗情報や研究動向の共有を積極的に行った。 代表者の菅は国内学会での年次大会で「デジタル史料とグローバルマイグレーションヒストリー」と題して発表したほか、『南北戦争を戦った日本人 幕末の環太平洋移民史』(筑摩書房)の出版、さらには査読付き論文の発表の形で研究成果のアウトリーチを行った。佐原は広い読者層が見込まれる学術書において最新の論考を掲載したほか、本科研に関連する2つの公開セッション・講演会を行った。2024年2月2日には共立女子大学にて"100 years from Mississippi"映画上映会・講演会を実施し、移動とそれに伴うトラウマについて検討するセッションを企画・運営した。2024年2月28日には同志社大学東京キャンパスにて、Catherine Ceniza Choy教授講演会を実施した。佐原をはじめとして本科研メンバーがこれらのセッション・講演会の司会やコメンテーター等として登壇した。兼子は監訳書を2本刊行したほか、査読付き論文を1本発表した。李は編著者として『朝鮮籍とは何か:トランスナショナルの視点から』の韓国語訳書(金雄基訳)を2023年12月に刊行したほか、日米韓のマイノリティ研究をトランスナショナリティやインターセクショナリティの視点から2024年度の出版に向けて検討をした。 昨年度には今年度の研究の推進方策として、専門的知識がありコミュニケーションを円滑に取ることが可能な英語の校閲者による原稿のチェックの実施を通じて、英語による研究の展開とアウトリーチを挙げたが、この点も達成できた。以上がおおむね順調に進展していると自己評価できる理由である。
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今後の研究の推進方策 |
今年度から海外での調査が本格的に再開されたことから、今後は現地にしかないと思われる史資料の入手を、事前の入念な調査を基に効率的に行う。また日本史や帝国にかかわる研究分野の研究者の協力を仰いでいく。対象とする環太平洋世界に関連する専門家を招待した研究会を開催することで、より多様で包括的な視点から理解を深めることとする。昨年度には専門的知識がありコミュニケーションを円滑に取ることが校閲者による原稿のチェックの実施を通じて、英語による研究の展開とアウトリーチを一層推進することを研究の推進方策のひとつとしたが、今後も英語による著書や論文を刊行するべく、校閲者の知見や様々なツールを活用し、研究を推進する。加えて李は韓国語での編著の発行を果たしたので「環太平洋世界の中のアメリカ史:帝国間移動・マイノリティ化・ジェンダーの交錯」への理解が、韓国でも高まることが期待されるところである。よって英語のみならず、今後は多言語での発信を積極的に推進する。さらに史資料取集や分析において、OCRの技術やデジタルアーカイブズの使用・活用の新しいアプローチ方法も積極的に取り入れていく。昨今特に日進月歩であるテクノロジーを使用する利点がみとめられる場合には、それらの技術を活用し、研究を推進させる原動力としたい。以上のように、研究課題である帝国間移動・マイノリティ化・ジェンダーの交錯の検討に対して、今後は専門家の知見や様々な新しいテクノロジーを反映させながら、より重層的な探求の光を当てていく。
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