研究課題/領域番号 |
22K00961
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研究種目 |
基盤研究(C)
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配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分03040:ヨーロッパ史およびアメリカ史関連
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研究機関 | 九州工業大学 |
研究代表者 |
水井 万里子 九州工業大学, 教養教育院, 教授 (90336090)
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研究分担者 |
辻本 諭 岐阜大学, 教育学部, 准教授 (50706934)
和田 郁子 岡山大学, 社会文化科学学域, 准教授 (80600717)
大澤 広晃 法政大学, 文学部, 准教授 (90598781)
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研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2025-03-31
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研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
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配分額 *注記 |
4,160千円 (直接経費: 3,200千円、間接経費: 960千円)
2024年度: 130千円 (直接経費: 100千円、間接経費: 30千円)
2023年度: 1,300千円 (直接経費: 1,000千円、間接経費: 300千円)
2022年度: 2,730千円 (直接経費: 2,100千円、間接経費: 630千円)
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キーワード | 接触領域 / コンタクトゾーン / 近世ヨーロッパ史料研究 / ケープタウン / 東インド会社 / イギリス軍事史料 / キリスト教宣教団 / 植民地司法制度 / コンタクト・ゾーン / 南部アフリカ / ケープ / 移動 / 史料 / 長距離航路 |
研究開始時の研究の概要 |
18世紀から19世紀前半に東インド航路を移動したヨーロッパ系社会集団が残した史料群を「移動史料」と定義し、その分析から、航路上の移動と接触によって現れる各地の「接触領域」における多文化の混淆のあり方を、南部アフリカのケープに中心を置きつつ人々の移動拠点まで視野を拡大して明らかにする。深い移動史料分析のために、グローバルな歴史背景、航路・植民都市・入植地の展開を検証し、実証的研究基盤を確立することが目的となる。史料群①英蘭東インド会社商館文書等の商業史料②南部アフリカのイギリス駐留軍人関連文書③南アフリカのキリスト教宣教団関連文書に描かれた接触領域における多様な人々の交流の諸相を詳細に抽出する。
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研究実績の概要 |
18世紀-19世紀前半に東インド航路を移動したヨーロッパ系の社会集団が残した史料群を「移動史料」と定義し、航路上の移動と接触によって現れる「接触領域」のケーススタディとして、史料の調査・収集・分析を南部アフリカのケープを対象に行う。グローバルな史的展開を背景に、航路・植民都市・入植地の形成過程の再構築を中心に実証的な基礎研究を実施する。 本研究課題が対象とする史料は①英蘭東インド会社商館文書等の商業文書②南部アフリカのイギリス駐留軍人関連文書③南アフリカのキリスト教宣教団関連文書で、それらに描かれた接触領域における多様な人々の交流の諸相を詳細に抽出する。前年度に引き続き、東インド航路を移動し入植地で奴隷として働く人々のあり方、南部アフリカに移動・駐留する兵士、現地エージェント、ローカルな人々と入植者たちの関係性に注目して史料を分析している。 今年度は11月に科研費の共同研究報告会を岡山大学で実施し、代表者、分担者による2本の報告とその他の分担者2名のコメント、全体の議論を行った。報告は①「ケープ植民地における軍隊:移動、統治者・植民者としての役割、諸集団との接触」辻本諭(研究分担者・岐阜大学)、②「18世紀後半から19世紀前半のケープ植民地における史料研究:司法史料とケープ社会」水井万里子(研究代表者・九州工業大学)である。 さらに、分担者が岡山大学にて本事業の予算の一部を使用して当該年度に購入したイギリス東インド会社のデジタル・データベースの共同調査を実施した。デジタル版のマニュスクリプトの検索語とフィルターのかけ方、パレオグラフィ用のソースとしての解像度など、意見を交換し、研究者が撮影し手元に所有している同東インド会社のデジタル映像史料と比較検討した。結果、今後の共同研究における活用が期待できるデータベースであることが明らかとなった
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
今年度は本研究課題で検討する移動史料である多様な同時代記述(メモワ―ル、日記、レポート、商業書簡等)について、それを作成した人物が所属する社会集団の調査を実施した。代表者は9月にイギリスで史料調査を行い、大英図書館の東インド会社関連、特にケープ商館文書、セント・ヘレナ商館文書の調査・史料、および英国公文書館の植民地省の司法関連文書の収集を実施した。 上記の史料調査を基礎として、11月に代表者が題目「18世紀後半から19世紀前半のケープ植民地における史料研究:司法史料とケープ社会」の研究報告を岡山大学で行った。ここでは18世紀を中心とするケープ公文書館(CA)のオランダ東インド会社(以下VOC)裁判関連史料を用いたN.ウォーデンの先行研究から、 ケープの奴隷制度、ローカルな人々(KhoeKhoeやSan)を含んだ社会史的研究、N.ペンのミクロストリア的な裁判史料の検討を通した刑事事件の再構築によって描かれるVOC統治下のケープ社会史を紹介した。この歴史的状況が19世紀初頭のVOCからイギリスへのケープ統治移行期以降もある程度まで継続していくことも実証的に確認されており、ケープ文書館蔵のオランダ語史料等を用いて実証されるケープ植民地の社会や統治のあり方を理解し、継続と変容の観点から検討することが、イギリス統治期以降のより深い理解につながることがわかった。今年度収集したTNA, CO48/27や48/28はイギリス統治下1814年の2つの刑事裁判の記録で、各事件に関する現地関係者のオランダ語の証言を英語に翻訳した文書が英国本国司法関係者に送られた史料である。VOC統治下以降のローマ・オランダ法と英コモン・ローの関係がイギリス本国の司法関係者に判断を委ねながら調整され司法判断がなされたと推察できる。分担者報告は英陸軍軍人の手紙等の入植地の記述分析が今年度着実に進捗したことを示した。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究推進方策として、最終年度は若干の修正を加え、特に海外調査については、海外渡航経費増から当初計画から今後の予定を変更し初年度の計画変更をもとに以下の様に計画する。 採択3年目であり本来ならまとめの段階に入るところであるが、初年度に海外調査が修正されこれから実施する研究分担者の史料調査計画(イギリス、または南アフリカ)を優先する予定である。他方、研究代表者が昨年度収集した史料の整理分析は予定より進み、研究分担者によるイギリス東インド会社のデータベースの購入から、今年度岡山大学での史料収集が可能となったため国内旅費を利用して研究を実施する計画である。 昨年度イギリスで収集したケープの一次史料分析から、研究代表者の研究範囲がケープとその周辺における刑事裁判の史料へと展開している状況である。19世紀初頭オランダ期からイギリス期にかけて、それまでオランダ東インド会社によって構築されてきたケープ植民地の司法の体系は、イギリスから移動してくるイギリスの植民地統治当局へ委ねられるようになった。18世紀末まではオランダ東インド会社が統括する入植者を取り込んだ司法制度とローマ・オランダ法の適用が、オランダ語を用いる法律家によってなされていたが、イギリス統治下ケープでは人の移動にともない司法の組織、法律家、法廷言語についても変化が顕著に現れた。最終年度の3年目には上記のテーマでの業績公刊を目標に、史料分析の基礎となる法制史に関する二次文献を体系的に入手し、議論を深める予定である。 今年度の課題は史料収集のための海外調査費を使用した計画の再構築と、既に収集した史料分析を進めた研究公刊準備となる。このため、旅費を使用せずに文献や海外文書館からの史料複写物の取り寄せも視野にいれつつ、代表者、分担者の移動史料分析の成果を研究会で共有しながら公刊に向けた議論を深めていく。
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