研究課題/領域番号 |
22K00964
|
研究種目 |
基盤研究(C)
|
配分区分 | 基金 |
応募区分 | 一般 |
審査区分 |
小区分03040:ヨーロッパ史およびアメリカ史関連
|
研究機関 | 東京理科大学 |
研究代表者 |
山中 聡 東京理科大学, 教養教育研究院神楽坂キャンパス教養部, 准教授 (80711762)
|
研究期間 (年度) |
2022-04-01 – 2026-03-31
|
研究課題ステータス |
交付 (2023年度)
|
配分額 *注記 |
2,080千円 (直接経費: 1,600千円、間接経費: 480千円)
2025年度: 520千円 (直接経費: 400千円、間接経費: 120千円)
2024年度: 520千円 (直接経費: 400千円、間接経費: 120千円)
2023年度: 520千円 (直接経費: 400千円、間接経費: 120千円)
2022年度: 520千円 (直接経費: 400千円、間接経費: 120千円)
|
キーワード | フランス革命 / 総裁政府 / 儀礼 / 総裁政府期 |
研究開始時の研究の概要 |
本研究では、フランス革命史研究において、研究蓄積が革命期前半(1789年-94年)に比べて劣位にある総裁政府期(革命期後半:1795年-99年)の再評価を進めるべく、それまで相互関係がほとんど解明されてこなかった同時期の文化史と政治史・外交史の接合を行う。これにより、近代民主主義を理解する上で示唆に富む項目を数多く含んだ、総裁政府期の知られざる側面を明らかにすることが目的である。
|
研究実績の概要 |
2023年度は、フランス革命期後半にあたる総裁政府期において、公職に就任する者が、憲法と国家への忠誠を誓った儀式である公民宣誓の特徴と、その史的展開について、検討を進めた。公民宣誓は、1790年7月に制定された聖職者市民化基本法において、カトリックの聖職者に課されたものが、たいへん有名であるが、周知のとおり、同宣誓の諾否を巡って、カトリック教会は分裂した。そして、以後の革命政治に、多大な影響が生じたことは、広く知られている。ゆえに、革命期前半に関しては、タケットやヴォヴェル、谷川稔に代表されるように、優れた研究が数多く現れた。一方で、革命期後半にあたる総裁政府期にも、公民宣誓は実施され、誓約の文言も、複数回にわたって、改定されたのだが、これまでのところ、研究者の注目は、あまり集まっていない。 ところが、報告者が、1799年7月に行われた公民宣誓の改定を巡る議論を検証したところ、それが「ブリュメール18日のクーデタ」勃発の背景の一つに位置づけられるものであることが分かった。このことを踏まえて、2023年度は、この公民宣誓と総裁政府期の政治状況との相関について、さらに広範囲にわたる検討を進めた。具体的には、当時の立法府(下院にあたる五百人会と、上院にあたる元老会)において、公民宣誓の持つ機能や、その文言の改定を巡る議論が、どのように行われたのかについて、議員演説を史料として検討した。また、公民宣誓に関して制定された法や政令の網羅的収集にも注力した。さらには、中世日本における起請文の展開に関する諸研究を参照したことで、「誓約」という行為が持つ宗教的側面について、いっそう理解を深めることができた。誓約儀礼に関する日本史の研究成果とフランス総裁政府期の公民宣誓の比較作業は、本研究の遂行にとって、非常に大きな収穫となった。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
今年度は、報告者が進めているフランス総裁政府期の公民宣誓に関する研究において、これまでは視野に入れてこなかった、日本史の研究成果(具体的には、中世日本における起請文の研究)を参照することで、「誓約」という行為が持つ宗教性に関して、従来は見出すことのできなかった視覚を、数多く得ることができた。この点は、非常に大きな収穫であった。ただ、日本史における誓約儀礼の研究には、海外のそれも含めて、一定の蓄積があるので、今年度は、その渉猟に時間を費やすことになり、例えば学術雑誌に論文を掲載するというような、目立った成果を上げることはできなかった。また、本務校において、様々な業務が重なったこともあり、時間的な問題から、フランスでの史料調査を行うことが出来なかった。それゆえ、本研究の進捗状況に関しては、「やや遅れている」との評価を下さなければならない。 しかしながら、本報告書を作成している現在も、日本史の研究成果との比較は、順調に進んでいるので、来年度において、進捗状況を改善することは、十分に可能であると考える。
|
今後の研究の推進方策 |
今年度は、日本史における宣誓儀礼(研究実績の概要で述べた起請文に関する分野)の研究成果を参照する機会を得たので、報告者の研究の幅は、着実に広がったといえる。ゆえに来年度も、こうした他分野での研究成果の摂取を積極的に継続し、フランス総裁政府期の公民宣誓との比較を行うことで、研究の伸展に努めたい。また来年度は、本研究の内容を洗練させると共に、学会発表を行える機会があれば、これを利用し、近代フランス史研究者からの意見・助言をうかがいたい。以上の点に加えて、宣誓儀礼に関する日本史の学会・研究会があれば、積極的に参加し、研究遂行の参考とさせていただきたい。 以上の取り組みを推進することで、来年度中には、学術雑誌に投稿する論文の骨格をまとめられるようにしたい。その骨格とは、本研究のタイトルである「フランス総裁政府期の文化・政治・外交に関する領域横断的研究」が示すように、公民宣誓という儀礼が持つ文化的な性格と、当時の政治状況の相関を明らかにすることである。また、これまでの考察で、公民宣誓の改定は、当時のフランス共和国の外交とも、密接な関わりを有していたことが分かっているので、この点の検討も進めていきたい。
|